新ウルトラマンレオ

別世界のウルトラマンレオの物語

第25話 対決!セブン対レオ

ある地域でUFOの目撃者が多くなっていた。地球のレーダーにはかかっていなかったが、星人が密かにもぐりこんでいることが予想された。地球防衛軍の機密施設の近くのため、事態を重く見た地球防衛軍MACに調査を命じた。そこでアカイシ隊員とゲンが現地に向かった。

海岸近くの道をマックカーが軽快に走っていた。

「変わったことはないなあ。」マックカーを運転するアカイシ隊員が言った。

「ええ、そうですね。」ゲンがうなずいた。

「何の収穫もなかった。帰って報告するか。」アカイシ隊員がハンドルを切ろうとした。

ゲンが辺りを見渡した時、ある白い建物が目についた。その建物の屋上には1人の女性が立っていた。その女性はマックカーを双眼鏡でじっと見ていた。普通の人間には変わったように見えなかったが、ゲンの目にはそれは地球人ではなく星人だと思った。

「ちょっと待ってください。あの白い建物を見てください。」ゲンが指さして言った。

「何だ?あの白い建物がどうしたんだ。何も変わったとこともないが・・・。」マックカーを停めたアカイシ隊員が言った。

「いや、何か怪しい。屋上の女はこちらを見張っているようです。」ゲンはマックカーを急いで降りるとその建物の方に走って行った。

「おい、ゲン!待て!・・・仕方がないなあ。」アカイシ隊員もマックカーを降りるとゲンのあとを追っていった。

その建物には外側に階段があり、屋上に通じているようだった。ゲンは手すりをつかむと勢いよく階段を駆け上り始めた。その時だった。ゲンの体を光線が包んだ。ゲンはばったりと倒れた。

「ゲン!」倒れているゲンを見て、アカイシ隊員はあわてて駆け寄っていった。ゲンを助け起こそうとして階段まで来たとき、アカイシ隊員も光線にやられて倒れてしまった。

屋上からサングラスをした女性がゆっくり階段を降りてきて、倒れた2人の近くまで近づいた。サングラスをしたその下の口は不気味に微笑んでいた。

 

「アカイシ隊員とオオトリ隊員から連絡が取れません。」司令室でシラカワ隊員が報告した。

「なに!地球防衛軍から調査を命じられた場所か?」モロボシ隊長が言った。

「はい。呼びかけに応答しません。」

他の隊員はモニターのそばに寄って行った。

R地点です。地球防衛軍の機密施設のある場所の近くです。」クロダチーフが言った。

「星人の仕業かもしれない。調べに行く。カジタはいっしょに来てくれ。チーフとアオシマは基地で待機。マックホークでいつでも出撃できるようにしていてくれ。」モロボシ隊長が言った。

 

マックロディーでモロボシ隊長とカジタ隊員が現地に向かっていた。

(ゲンまでいながら行方不明になってしまうとは。何か星人が罠を仕掛けているのかもしれない。)モロボシ隊長は思っていた。

「隊長、あれを。」運転するカジタ隊員が叫んだ。道の横にマックカーが乗り捨ててあった。2人はマックロディーを降りるとマックカーに近づいた。

「中は変わった様子はありません。」調査装置を持ったカジタ隊員が言った。モロボシ隊長は辺りを見渡して言った。

「ここに止めたとなると、あの白い建物に向かったのだろう。」モロボシ隊長が指さした。

「行ってみましょう。」カジタ隊員が言うとモロボシ隊長はうなずいた。

辺りを調べたが、入り口はなく屋外の階段だけだった。

「上ってみます。」カジタ隊員が階段の手すりに手をのばした時、モロボシ隊長が止めた。

「待て!なにかおかしい。」モロボシ隊長には何か見えているようだった。足元から大きな石を拾って投げると光線が発射された。

「やはりな。」モロボシ隊長は光線の発射装置をマックガンで破壊した。

「気をつけろ!この建物には罠が張り巡らされている。多分、星人がいる。」モロボシ隊長が言った。カジタ隊員はうなずくとマックガンを抜いて階段を上っていった。

(階段に仕掛けられたのはショック光線。サロメ星人がいるのか。)モロボシ隊長は昔、捕まえられたことのある星人のことを思い出していた。

(何か策略を巡らせているのに違いない。注意しなければ・・・。)

 

モロボシ隊長とカジタ隊員の様子は、薄暗い部屋のモニターに映し出されていた。

「ふふ、また2人来たか。」モニターを見て年輩の男が言った。近くにはあのサングラスの女がいた。

「捕えてきましょうか?」若い男の一人が言った。

「いや、こちらから行かなくても奴らはここに来る。それからでよい。」年輩の男が言った。

その部屋の奥には2台の作業台があり、拘束されたゲンとアカイシ隊員がそれぞれ寝かされていた。ゲンがようやく目を覚ました。辺りの状況を見て自分とアカイシ隊員が拉致されたことを知った。そして近くにあのサングラスの女が立っているのに気付いた。

「おい!お前たちは星人だな。僕たちを放せ!」ゲンが叫んだ。

「あら、目を覚ましたようね。」サングラスの女が言った。

「お前たちの目的はなんだ!どうして地球に来た!」なおもゲンが叫んだ。

「そう騒ぐな。オオトリ ゲン隊員、いや、レオ。」年輩の男が言った。ゲンは目を見開いて何も言えなくなった。自分の正体がすでにばれているのに驚いていた。

「ああ、これは秘密だったねえ。まあ、アカイシ隊員はまだ気を失っていて聞こえていないから安心したまえ。」年輩の男が言った。

「どうしてそんなことまで知っているんだ!」ゲンが言った。

「我々は征服する星のことをよく調べるのだ。君がレオであることはとうに知っている。君さえ拘束すれば邪魔するものはないこともな。」

「何を!」

ゲンは叫んでレオに変身しようとしたが、何の変化も起きなかった。

「おっとここで変身は駄目だぞ。もっともその台の上では変身できないようにしておいた。」年輩の男が言った。

「僕がいなくても、MACが必ずお前たちの野望を必ずくじく。」ゲンは手足を激しく動かしながら言った。大きく暴れてみたが、拘束具は外れないようにしっかり固定されていた。

MACだと。そんなものは一捻りだ。そういえばお前の仲間が助けに来ているぞ。ほら。」年輩の男はモニターを指さした。そこには屋上の建物の入り口から入ろうとするモロボシ隊長とカジタ隊員の姿が映し出されていた。

(隊長!)ゲンは心の中で叫んだが、声には出さなかった。

「はっは。彼らももうすぐここに来る。みんなここで死んでもらう。」年輩の男は言った。

そしてモロボシ隊長を指した。

「特に彼には恨みがある。ウルトラセブンには。」

(隊長が危ない。何とか伝えないと・・・)ゲンは思ったがどうにもならなかった。

 

モロボシ隊長とカジタ隊員は建物の中を慎重に探索していた。一室一室調べていたが、ある部屋にモロボシ隊長が入ったとき、急にロックがかかり閉じ込められてしまった。外からカジタ隊員が開けようとしたがびくともせず、マックガンもはね返してしまった。

「カジタ。ここから脱出しろ。チーフに連絡するんだ。私のことはいいから早く行け!」モロボシ隊長は叫んだ。カジタ隊員は気になりながらも、建物から出て行った。

 

「よく来た。セブン。」透明バリアの向こうに年輩の男とサングラスの女が立っていた。

サロメ星人だな!」モロボシ隊長が叫んだ。

「そうだ。昔、君に仲間を殺されたサロメ星人だ。ウルトラセブン。」年輩に男が言った。

「また何の目的で来た?」

「決まっているじゃないか。地球の征服と君への復讐だ。」年輩の男が言った。「それでここへおびき出したんだな。捕まえた隊員を返せ!」

「お二人なら、こちらの部屋の奥に拘束している。」

「アカイシ、ゲン。大丈夫か!助けに来たぞ!」モロボシ隊長は大きな声で叫んだ。

「隊長。ゲンです。アカイシ隊員もいます。ただ拘束されていて動けません。」遠くからゲンの声が聞こえてきた。

「すぐ助けに行くぞ!」モロボシ隊長が叫んだ。

「ふっふ。それは無理だな。君たちはもうすぐ死ぬ。」年輩の男が言った。

「なに!」モロボシ隊長が言った。

「ああ、そうだ。この建物は爆発する。君たちも一緒にな。だがすぐに殺したら面白くない。君に我々の作戦を見てもらおう。前のモニターで見物したまえ。」年輩の男は少し横を向いて指さした。

「お前たちの隙にはさせないぞ。」モロボシ隊長はマックガンを撃ったが、弾ははね返ってきた。

「はっは。無駄だ。我々はここを抜け出して宇宙船に移る。我々のしもべが地球を破壊する。紹介しよう。」年輩の男が言った。モニターに近くの建物が映し出された。そして崩れるように破壊されて、中から現れた。

「我々のウルトラセブンだ。まず、地球防衛軍の秘密施設を破壊する。」

モニターには暴れているウルトラセブンが映っていた。しかしそれはサロメ星人が作ったロボットのニセウルトラセブンだった。過去に製造したことのあるロボットでもう一度、地球に攻撃を仕掛けてきていたのだった。

「では、セブン。さようなら。」

「待て!」モロボシ隊長は叫んだが、2人のサロメ星人は部屋の別のドアから出て行った。

モロボシ隊長は奥にいるゲンに話しかけた。

「ゲン、そっちの状況は?私はこの部屋に閉じ込められた。」

「隊長、アカイシ隊員はまだ気を失っています。僕たち2人とも台の上に拘束されています。星人は僕の正体を知っています。それでこの台に載せて変身できないようにしています。しかし何とか抜け出せないかやってみます。」ゲンの声が聞こえた。

「よし。こちらもなんとか脱出する方法を探ってみる。」

モロボシ隊長は部屋のあちこちを調べたが、脱出できるところはなかった。透明バリアの向こうには時限爆弾が仕掛けられているようで、そのタイマーは残り時間を示していた。

(あと、30分か・・・)モロボシ隊長は焦りを感じていた。

 

司令室ではカジタ隊員から通信が入った。

「隊長が白い建物に閉じ込められました。」

クロダチーフが驚いて返事をしようとすると、

R地点で街が破壊されています。星人の仕業かもしれません。」シラカワ隊員は地球防衛軍から通信を読み上げた。

「隊長たちも救出したいが、その近くの街が破壊されている。こちらは1号機で出撃する。カジタはマックロディーでその建物を見張ってくれ」クロダチーフが通信した。

地球防衛軍の機密施設の近くだ。アオシマ、出撃するぞ。」、クロダチーフが言った。

マックホーク1号でクロダチーフとアオシマ隊員がR地点に向かった。1号機が現場に到着すると、目の前の光景に驚いてアオシマ隊員が叫んだ。

「ウ、ウルトラセブン!」

「確かにそうだ。」クロダチーフも驚いていた。1号機は周りを旋回した。その下でニセウルトラセブンは建物を次々に破壊していた。

「どうしてウルトラセブンが暴れているんだ。味方じゃなかったのか。」アオシマ隊員が言った。

「何か訳があるのかもしれない。」クロダチーフは街の周囲を見渡していた。

「しかし放っておいたらすべてが破壊されます。攻撃しましょう。」アオシマ隊員が言った。

「ううむ。仕方がない。このままでは街も破壊されるし、地球防衛軍の機密施設も危ない。攻撃するぞ。」クロダチーフが言った。

1号機がミサイルでニセウルトラセブンを攻撃し始めた。

 

ゲンは作業台の上でもがいていた。拘束具はしっかりはまっていて外れそうになかった。

「ゲン。どうだ。抜け出せそうか?」モロボシ隊長の声が聞こえた。

「駄目です。動かせません。」

モニターには暴れているニセウルトラセブンの映像が流れていた。ミサイル攻撃を受けているのでマックホークが来ているようだった。ニセウルトラセブンエメリウム光線で反撃していた。1号機は何とか避けてミサイル攻撃をしていたが、ついに光線が命中してしまい、煙を引いて不時着していった。そのモニターの下に点滅を繰り返す機器があり、ゲンは星人のコントロール装置と思った。

「ゲン、こちらもこの部屋から脱出できない。」モロボシ隊長の声が聞こえた。

「隊長、あのモニターの下にコントロール装置があるようです。もし破壊できたらバリアが消えるかもしれません。」ゲンが言った。

時限爆弾の残された時間はあまりなかった。モロボシ隊長は両腕をクロスさせた。サイコキネシスを使って装置を破壊しようとした。

透明な壁のバリアに阻まれていたが、モロボシ隊長は念を強くすることで少しずつ装置にダメージを与えていた。少しずつ煙を出して、やがて小さな爆発音とともに装置の点滅する光が消えた。

すると透明のバリアは消えて、ゲンとアカイシ隊員の拘束具は外れた。

「「しめた!」ゲンは台の上から飛び起きた。モロボシ隊長が近寄った。

「まだ時限爆弾は動いている。ゲン。変身して脱出するんだ。もう時間はない。」

 

時限爆弾がさく裂して、白い建物が崩れていった。

「あ、建物が破壊された!隊長!」見張っていたカジタ隊員が叫んだ。しかし崩れている建物から赤い巨人が飛び出してきた。彼は両手にモロボシ隊長たちを乗せているのが見えた。カジタ隊員の顔に安堵の色が浮かんだ。

爆発から脱出したレオはゆっくり両手を下ろして、モロボシ隊長たちを地面に下ろした。アカイシ隊員はまだ気を失っていた。モロボシ隊長はレオに向かって言った。

「レオ。暴れているのはロボットだが、ウルトラセブンとほぼ同じ能力を持っている。油断するな。」

レオはうなずくとニセウルトラセブンの方に走って行った。

ニセウルトラセブンはファイティングポーズをとってレオを待ち構えた。レオがパンチとキックを放ったがすべてをかわして、逆にレオの腕をとって組み合った。力勝負では五分五分だったが、ニセウルトラセブンは体をひねるとレオの後ろに回り、右腕でレオの首を絞め始めた。レオは苦しそうに両手をニセウルトラセブンの右腕を外そうとするが、首絞めは次第に強くなっていった。ダメージのためカレオのラータイマーが赤く点滅し始めた。

「レオ、抜け出せ!体を前に倒すんだ!」モロボシ隊長が叫んだ。

レオは体を前に倒して、ニセウルトラセブンを前に放り投げた。レオは首をさすって構えた。投げられたニセウルトラセブンはすぐに立ち上がり、エメリウム光線を放った。レオは横っ飛びでそれを避けた。それを見てニセウルトラセブンは両手を頭の後ろに回した。レオが起き上がったときにアイスラッガーが飛んできた。レオはそれもなんとか避けた。アイスラッガーがニセウルトラセブンに戻ると、今度はワイドショットで攻撃を加えた。レオはエネルギーブレスレッドを光らせてバリアを張った。レオの周囲に爆発と激しい土煙が巻き起こったが。何とか激しい攻撃に耐えることができた。攻撃がやむとレオは土煙の中からハンドビームを数発放った。しかしニセウルトラセブンはいとも簡単に手を払ってはね返した。ロボットとはいえニセウルトラセブンはかなり強力だった。

「レオ、パンチやキックならお前の方が上だ。」戦いを見ていたモロボシ隊長が叫んだ。

レオはうなずくとニセウルトラセブンに向かって行った。お互いにキックとパンチを打ち合った。ニセウルトラセブンはパンチを多く繰り出したが、パンチやキックの威力はレオがやや勝っていたようで次第にレオが押していった。レオのミドルキックが決まったとき、ニセウルトラセブンは後ろによろけて片膝をついた。

「今だ!レオキックだ!」モロボシ隊長が叫んだ。

レオは飛び上がると回転してレオキックを放った。ニセウルトラセブンはまともに食らって倒れた。ダメージを受けて内部で大きな音がして、やがて爆発した。内部の機械を露出してバラバラになっていた。

少し離れたところから宇宙船が飛び上がった。逃げようとして上空に飛んで行った。レオはエネルギーブレスレッドを光らせた。そしてエネルギー光球を上空に投げ上げた。それは上空で光って宇宙船を破壊した。

地上ではクロダチーフとアオシマ隊員とカジタ隊員もモロボシ隊長の元に集まった。アカイシ隊員が目を覚ましたようだった。

「ご無事でしたか。」クロダチーフが言った。

「チーフたちも無事でよかった。あのウルトラセブンと戦ったのだから。偽物のロボットとはいえ。」

「偽物とは思いませんでした。本物と同じでしたから。赤い巨人が倒したので助かりました。でも本当のウルトラセブンはどうしたのでしょう。ここのところずっと姿を見ていませんが・・・。」クロダチーフが言った。

「そうだな・・・。」モロボシ隊長が歯切れ悪そうに言った。遠くでゲンの声が聞こえた。

「おーい。」手を振りながら走ってきていた。

「とにかくみんな無事でよかった。」モロボシ隊長が言った。