新ウルトラマンレオ

別世界のウルトラマンレオの物語

第2話 レオの勇気

マグマ星人と宇宙怪獣ギラスに攻撃されてセブンは危機一髪だった。そこに1人の青年、ゲンが赤い巨人に変身して現れた。飛び蹴りで海中に倒れたマグマ星人に、構えをとりながら間合いを詰めていた。

 

やがてゆっくりとマグマ星人は身を起こした。そして悠然と赤い巨人をにらみつけると、かかってこいというように手招きをした。目の前の相手が弱いL77星人であることがわかって、侮っているようだった。赤い巨人はマグマ星人に向かっていくと、続けざまにキックやパンチで激しく攻撃した。以前より強くなっていた赤い巨人に驚いたマグマ星人は、その攻撃をなんとかかわした。そして一歩下がると態勢を整えた。一呼吸おいて、今度はマグマ星人がレオに激しく攻撃してきた。サーベルで突いて、キックやパンチを放つが、レオはすべてを受け止めると回し蹴りで反撃した。マグマ星人は横腹にそれを受けて後ろによろめいた。ついに怒ったマグマ星人はサーベルを大きく振り上げた。

その時、赤い巨人の脳裏に恐怖が浮かんだ。前に戦ってみじめに敗れた記憶がよみがえった。サーベルで何度も何度も打ちすえられた情景が見えてきた。赤い巨人はおもわず顔を手で覆った。その隙を逃すまいとマグマ星人は右手のサーベルでレオを打ち続けた。やがて赤い巨人はうつぶせに倒され、その上を何回もサーベルで打たれた。

セブンはやっとのことで怪獣の羽交い絞めを振りほどき、両腕をつかんで投げ飛ばした。そしてすぐにマグマ星人に近づくと、右腕をサーベルごとつかんで投げ飛ばした。マグマ星人はすぐに起き上がってサーベルを振り上げたが、セブンのパンチをうけ、後ろによろめいて右膝をついた。後ろから怪獣が近づいてきたが、セブンはすぐに向き直って額からエメリウム光線を放った。それは角に当たって爆発が起きた。怪獣は叫び声をあげると水の中に逃げて行った。次はマグマ星人を攻撃しようとセブンは振り返った。ちょうどその瞬間、マグマ星人はサーベルから光線を放った。かわす暇もなく、セブンの顔の目の部分に命中した。それは目のあたりにエネルギーの塊として巻き付いた。セブンは思わず顔をおさえてそれをむしり取ろうとした。その隙にマグマ星人は上空に消えていった。

 

セブンは海岸で変身を解いた。大きな光の環が消えると、モロボシ隊長が立っていた。目に当てていたウルトラアイが右手で握られていたが、黒く変色して煙が出ていた。それを見て、思わず

「しまった!」と口から言葉が出た。ウルトラアイは壊されてしまい、モロボシ隊長にはもはやどうにもできなかった。

やがてモロボシ隊長はあたりを見渡した。すでに赤い巨人の姿はなかった。やや離れたところに1人の青年が倒れているのが見えた。

痛めた右足をひきずりながら彼に近づいていった。そして倒れている青年を抱き起した。

「しっかりしろ。」

青年は目を覚まして起き上がった。モロボシ隊長は青年に尋ねた。

「君はあの赤い巨人か?」

青年はうなずくとモロボシ隊長をじっと見つめた。そして言った。

「あなたはセブン?」

「そうだ。私はウルトラセブンだ。地球ではMAC隊長のモロボシ・ダンだ。」

「僕はレオ。L77星人です。ここではオオトリ・ゲンと呼ばれています。

モロボシ隊長はゲンの目を見ながら言った。

マグマ星人を知っているな。いくつかの星を破壊してきた凶悪な星人だ。奴は地球に狙いを定めてきた。」

「知っています。僕の星はマグマ星人とあの怪獣によって破壊されました。」

「このままでは地球も破壊される。」モロボシ隊長は語気を強めて言った。

「地球のために戦ってくれるな。このままでは地球は破壊されてしまう。」

ゲンはいきなりのモロボシ隊長の言葉に驚いた。そして立ち上がって言った。

「地球にはあなたがいるじゃありませんか。僕なんか到底かなう相手じゃない。やっとここまで逃げてきたのに。」

「よく見るんだ。」モロボシ隊長は黒く変色したウルトラアイを右手に持って目に当てた。セブンに変身しようとしたが、何の変化も起こらなかった。

「もうセブンに変身できない!」モロボシ隊長がはっきりと言った。

ゲンには絶望的な言葉だった。さらにモロボシ隊長は強い口調でつづけた。

「奴らと戦えるのは君だけだ。もう君しかいない。やってくれるな!」茫然としているゲンの肩をつかんで揺さぶった。

ゲンはモロボシ隊長の手を振り払って、後ずさりをしながら叫んだ。

「いやだ、僕には無理だ!」

「待て!」

ゲンは後ろを向くと走って行ってしまった。右足を痛めたモロボシ隊長は追いかけることができず、ただそれを見ていることしかできなかった。

 

避難警報は解除され、ゲンは道場に帰ってきた。師匠は玄関で迎えたが、憔悴したゲンの顔を見ると声をかけることはできなかった。ゲンは一礼すると部屋に入っていった。後ろにいたモモコは心配して追いかけようとしたが、師匠はその腕をつかんで止めると、首をゆっくり横に振った。

「今日はゲンにとって大変なことがあった。この苦しみはゲン本人にしか乗り越えられない。そっとしてやりなさい。」

ゲンは部屋に入ると倒れこんだ。過去と今日の出来事が悪夢のように脳裏を駆け巡って、ゲンを大いに苦しめた。

 

MAC司令室では、あわただしく人が動いていた。自動ドアが開き、右足を引きずりながらモロボシ隊長が入ってきた。

「隊長!」振り向いた隊員たちが声をあげた。クロダチーフが歩み寄った。

「ご無事でしたか。」

「大丈夫だ。それより現在の状況は?」

「星人の方は上空をレーダーと偵察機で捜索していますが、いまだに見つかりません。」

「怪獣の方も空から捜索していますが、いまだに発見できません。」

「そうか。」とモロボシ隊長は答えた。心の中では

(レーダーや偵察機では探知できないが、確かに海底に怪獣はいるはずだ。だが、傷ついた角が治るまで3日ほどかかる。それまでは出て来れまい。その間に対策を立てねば・・・)と思っていた。

 

夜になってゲンは窓の外を見た。地上の明かりが輝いて海に反射し、空には多数の星が輝いていた。ゲンはL77星の方角に目をやった。破壊される前の懐かしい星の記憶が思い出された。そこは地球に似た自然豊かな土地だった。夜になると空にきれいな星々がきらめいていた。ゲンが懐かしい気持ちに浸っているとき、また急に怪獣に破壊された星の記憶がよみがえった。その地獄のような情景が、目の前の地上の光景と重なった。ゲンは恐怖にじっと目を閉じた。

(この地球はどうなってしまうのか?)

やがて目を開けると空の星と地上の光は相変わらず輝いていた。

 

司令室の警報が鳴り響いた。オペレーターのシラカワ隊員が振り向いて報告した。

東京湾に怪獣出現。」モニターの一点が光っていた。

MAC出動!3号機と4号機で出撃する!」モロボシ隊長が隊員たちに命令した。

 

マックホーク3号と4号が発進した。3号機にはモロボシ隊長、4号時にはアオシマ隊員とカジタ隊員が乗っていた。怪獣が見えてくると、モロボシ隊長は通信した。

「これより攻撃にうつる。4号機は攻撃を行って怪獣の目を引き付けてくれ。私は真上から怪獣を狙いに行く。」さらに続ける。

「クロダチーフとアカイシはマックロディーで地上から攻撃、上陸を阻止してくれ。」

4号機のミサイル攻撃が始まる。怪獣はすぐに竜巻バリアを身にまとい、角を光らせて衝撃波を発射した。それを旋回して避けながら攻撃を重ねた。怪獣が4号機に気を取られているうちに、3号機は上空に達すると錐もみ状態で怪獣に突っ込んでいった。

前回の攻撃で思った通り真上には竜巻バリアのガードはなかったが、周囲の渦巻く風のため機が安定しなかった。モロボシ隊長は顔をこわばらせながら、必死でレーザーを撃った。

ビーン!」怪獣の角に当たり、鈍い音がした。怪獣は角を押さえた。角がダメージを受けたが傷は浅かったため、竜巻バリアが消失しなかった。

4号機は旋回するとミサイル攻撃をさらに続けた。しかしその4号機に向かって怪獣から衝撃波が発射された。動きの鈍い4号機は衝撃波を避け切れず、煙を吐いて不時着していった。3号機は再び上昇したが、怪獣はその動きを見逃さなかった。3号機はすぐに狙われて衝撃波の集中攻撃を受けた。3号機は損傷して飛行不能になり、モロボシ隊長はパラシュートで脱出した。

怪獣が陸に近づいたので地上のマックロディーがビームで攻撃をはじめた。しかし怪獣は竜巻バリアでガードしながら衝撃波で地上を攻撃した。マックロディーは地面ごと吹っ飛ばされて横転した。クロダチーフとアカイシ隊員があわてて脱出した。

地上に降りたモロボシ隊長は岩陰に身を隠しながら怪獣を見ていた。怪獣は海岸に上陸しようとしていた。海岸の町が危険な状態にさらされていた。

モロボシ隊長は胸のポケットから小さな箱を取り出した。箱をあけてカプセルの1つを右手にとると怪獣の方に投げた。

「行け!ミクラス。」

煙とともにずんぐりした怪獣ミクラスが現れた。そのミクラスは身を低くして、怪獣に突っ込んだ。竜巻バリアにはね飛ばされそうになりながらも、ミクラスは必死に食らいついて怪獣と押し合いになった。パワーを発揮させたミクラスは怪獣を少しずつ押していった。しかし急に怪獣から衝撃波が発射された。至近距離から頭部に直撃して強いダメージを受けると、ミクラスはけいれんして倒れた。

「戻れ、ミクラス」モロボシ隊長は右手を頭上にあげると、カプセルになって戻ってきた。

地上に降りた隊員たちがマックガンで攻撃をはじめた。竜巻バリアをまとう怪獣にはダメージはなかった。怒った怪獣から放たれた衝撃波で、隊員たちは吹っ飛ばされて傷ついていった。

 

その光景を岩陰から見ていた青年がいた。それはゲンだった。見慣れた海岸は破壊されて、曇天の下で地獄のように変わっていた。MACの攻撃は歯が立たず、戦闘機も戦闘車もやられてしまった。それでも隊員たちは懸命に戦っているのがゲンには見えていた。ゲンは拳を強くにぎり震えていた。そして顔を上げて怪獣をにらむと、その方向に走り出した。

 

モロボシ隊長もマックガンで攻撃していた。怪獣はあちこちに衝撃波を発射した。その一発がモロボシ隊長の近くに落ちてはね飛ばされた。地上に激突するかと思われたが、その体が誰かに受け止められた。モロボシ隊長がその顔を見ると、それは何とゲンだった。ゲンはモロボシ隊長をおろすと、まっすぐに怪獣に向いて力強く言った。

「僕は決めました。地球のために、いえ、僕自身のために戦います。」

そして右手を挙げて変身しようとした。

「待て。」モロボシ隊長は制止した。ポケットから銀色のブレスレッドを取り出した。そしてゲンの右手首をつかむとそれをはめた。怪訝な顔をするゲンに言った。

「エネルギーブレスレッドだ。これがおまえに力を与えてくれるはずだ。」

ゲンはうなずくと、右手をあげて発光させた。その光から赤い巨人が出現した。

「おまえは必ず来ると信じていたぞ。レオ!」モロボシ隊長は叫んだ。

 

レオが現れると、怪獣は竜巻バリアの中から衝撃波を放った。レオはダメージを受けてやや後ろに下がった。

その時だった。いきなり後方の上空からマグマ星人が現れて、レオにキックを見舞った。レオは倒れたもののすぐ起き上がって構えた。今度はその背後を衝撃波が襲った。レオは前に倒れこんだ。ダメージを受けたレオはエネルギーを急激に消費し、胸のカラータイマーが赤く点滅し始めた。

「これはまずい!」モロボシ隊長は叫んだ。そして息を整えると拳を握り、胸の前で両腕をクロスに組んで念を入れた。ウルトラ超能力のサイコキネシスだった。これは敵の動きを封じることができるが、エネルギーを大量に使うためセブンであってもなかなか使うことが難しい技であった。

マグマ星人の動きが止まり、その場から動くことができなくなった。何かにとらわれているようにもがいていた。モロボシ隊長はテレパシーでレオに話しかけた。

((レオ、マグマ星人は私が押さえておく。しかし長くはもたない。真上から攻撃して角を折るのだ。そうすれば竜巻バリアや衝撃波は止まる。))

レオは飛び上がると上空からまっすぐにキックを角に放った。角は折れて飛んで行った。怪獣は角があった場所をおさえて咆哮した。レオにまたモロボシ隊長の声が届いた。

((もう時間がない。一気に決めろ。エネルギー光球だ。そのエネルギーブレスレッドにエネルギーをためて怪獣にぶつけろ。))

レオは右手に力を込めて突き上げた。エネルギーブレスレッドが光り、その周りに稲妻が走ってみるみるエネルギーの球が大きくなった。いったん右手を後方にひくと思い切って怪獣に向かって突き出した。エネルギー光球は飛んで行って怪獣に直撃した。怪獣は爆発とともに倒れて、海の中に沈んでいった。

ようやくマグマ星人サイコキネシスの網を逃れた。いったんレオに対してサーベルを構えたものの、不利を悟ったのか、悔しそうに上空の雲の間に消えていった。あたりは何もなかったように静まっていた。やがて雲が晴れて夕日が差してきた。

消耗したモロボシ隊長は片膝をついていた。目の前にレオが立っていた。夕日に照らされたレオは輝いていた。

(あの沈んでいく夕日が私なら、おまえはまさに昇ろうとする朝日だ。レオ。地球の未来がおまえの肩にかかっている。おまえならできる。必ずできる。)

モロボシ隊長はレオを見て思った。