新ウルトラマンレオ

別世界のウルトラマンレオの物語

第5話 V2ステーション

MAC司令室に警報が鳴り響いた。

「宇宙ステーションV2が正体不明の宇宙船に攻撃されています。」シラカワ隊員が振り返って隊員たちに言った。

「なに!突然、どうしたんだ?」モロボシ隊長が驚いて訊いた。

「原因はわかりません。警戒衛星が反応しなかったようです。」

V2が危ない。マックホーク1号、2号で出撃!」モロボシ隊長が命令した。隊員たちはヘルメットを手に取って足早に司令室を出て行った。その後にはV2からの信号が不規則に点滅していた。

 

1号機と2号機が宇宙ステーションV2に向かっていた。

「一体、どういうことでしょうか?警戒衛星が何の警報も出さなかったとは。」ゲンが尋ねた。

「わからん。こんなことはないはずだが。」モロボシ隊長は考えていた。

「ここから信号を出して調べていますが、警戒衛星の反応がやはりおかしいようです。故障かもしれません。」カジタ隊員が言った。

「それはまずいな。地球に接近するすべての物体の動きをいち早く探知できる衛星だ。あれがないとこちらの対応が遅れてしまう。」アオシマ隊員が言った。

「とにかくV2を救援してからだ。急いでくれ。」モロボシ隊長が言った。

 

1号機が到着すると宇宙船はもうおらず、V2の一部が壊されていたものの被害は少ないようだった。ただし周囲にはステーションホークの残骸が散らばっていた。

V2、応答せよ。こちらマックホーク1号。被害状況はどうか?」モロボシ隊長が通信した。すると不明瞭な声だったが、なんとか応答があった。

「こちらV2。ウチダです。こちらのステーションホークはすべて撃墜されました。ここに残っているのは私一人です。こちらの損傷は軽微です。」

「わかった。1号機がドッキングしてそちらに行く。ゲートを開けてくれ。」モロボシ隊長が言った。

V2に行って記録を調べる。準備してくれ。」モロボシ隊長はそう言うと、後からきている2号機に通信した。

1号機、モロボシだ。隊員はやられたが、V2自体の損害は重くないようだ。こちらはドッキングして記録を調べる。2号機はV2の周囲を警戒してくれ。」

2号機にはクロダチーフとアカイシ隊員が乗っていた。アカイシ隊員はそれを聞いてすぐに通信機を手に取ると、

「隊長。誰がやられたのですか?」といきなり訊いてきた。

「生存者は1名、ウチダ隊員だけだ。他の隊員はステーションホークで出撃して撃墜されたらしい。」モロボシ隊長は答えた。それを聞いてアカイシ隊員は、少しほっとしたようだった。それを見ていた横のクロダチーフが訊いた。

「どうしたんだ?アカイシ。」

「すいません。多くの隊員が殉職したのに・・・。実は生き残ったウチダは親友なのです。任務でここ1年は連絡できませんでしたが、地球に戻ってきたら会おうと言っていたのです。」アカイシ隊員が言った。

「そうか。思いがけない再会になってしまうな。」クロダチーフが言った。

 

1号機がV2にドッキングして、モロボシ隊長たちがV2に乗り込んでいった。管制室に入ると、

V2の通信担当。ウチダです。」ウチダ隊員が立ち上がって敬礼をして彼らを迎えた。

MAC隊長のモロボシだ。ここの記録をカジタ隊員たちに調べさせてもらう。まあ、座りたまえ。最初から説明してくれ。」モロボシ隊長はウチダ隊員を座らせると、自らも椅子に座って攻撃された状況を訊いた。

「いきなり宇宙船が目の前に現れました。あわててV2のレーザーを撃とうとしましたが、なぜか動かず、あわてて私以外の全員でステーションホークを発進させました。しかし誰一人帰ってくることもなく、私一人だけがここに取り残されました。通信装置も安定せず、交信できないところに助けに来ていただいたわけです。」ウチダ隊員が話した。

「なるほど、ここも故障していたところがあったのだな。」モロボシ隊長が言った。

「ここも、というのは他にも故障したところがあったのですか?」ウチダ隊員が訊いた。

「ああ、警戒衛星が故障しているようだ。そのため宇宙船が来ていてもわからなかった。」

「警戒衛星?そこは今月、V2の担当していました。先日も私が点検に行きました。そこならよくわかっています。」

「そうか。それならすぐ2号機で修理に行ってくれないか。一刻も早く正常に戻さないと、いつ宇宙船が現れるかわからないからな。」

「わかりました。用意します。」ウチダ隊員は椅子から立ち上がって、管制室から出て行った。

 

アオシマ隊員が乗る1号機が、周囲の警戒のためV2から離れていった。代わりに2号機がV2とドッキングした。アカイシ隊員はすぐにV2に乗り移ってきた。そこにウチダ隊員がいるのに気付いて、

「無事でよかった。」と声をかけた。

「いや、他の隊員はみんな撃墜されてしまった。俺一人生き残ってしまった。なんだか申し訳ない。」ウチダ隊員が言った。

「何を言う!心配したんだぜ。もう会えないかと。」

「ああ、すまない。」

「とにかく警戒衛星に修理をしないとな。今から2号機で出発だ。道すがら話を聞かせてくれ。」アカイシ隊員はそう言うとウチダ隊員の肩を叩いた。ウチダ隊員は微笑みながらうなずくと、2号機に乗り込んでいった。

(ウチダの奴、宇宙にいて毒気が抜けたな。それとも一人だけ生き残ったからショックでしょげているのかな。)いつもは遠慮なくズケズケ言うウチダ隊員がおとなしいのに、アカイシ隊員は拍子抜けして少し違和感を覚えた。

 

2号機が警戒衛星に向かったあと、V2ではカジタ隊員を中心に記録を調べていた。

「一応、ウチダ隊員の言ったことと一致していますが・・・」カジタ隊員は奥歯に物がはさまった言い方をした。

「どうした?気になることがあるのか?」モロボシ隊長が訊いた。

「ええ、自衛用のレーザーを撃とうとした形跡がありません。ステーションホークが緊急発進したわりには格納庫はきれいすぎで、まるで自動的に排出されたようです。宇宙船と交戦したエネルギー反応が少なすぎるなど気になる点があります。」

「それはおかしいですね。」ゲンが言った。

「記録はきちんとあるのですが、現在の状態があいません。もしかして記録が改ざんされているのかも・・・」カジタ隊員が言った。

「まさか・・・何のために?」ゲンが言った。

「いや、何かおかしい。もしかすると何かあるのかもしれない。V2の中を徹底的に調べてくれ。」モロボシ隊長が言った。

 

警戒衛星に2号機がドッキングして、アカイシ隊員とウチダ隊員が中に入った。ウチダ隊員は手早く警戒衛星内の機器をチェックしていった。

「おい、ウチダ、いつからそんなに仕事熱心になった?いつもなら手を抜くお前がよ。」アカイシ隊員が声をかけた。

「いや、警戒衛星を直さないと地球が危ないからな。一つ一つしっかりチェックしていく。」ウチダ隊員が言った。

(こいつは怠け者だが、天才的なところがある。いつもなら一つ二つ調べるだけで故障の箇所がわかる奴だ。なんだか妙だ。)アカイシ隊員の中に疑惑が広がっていった。

「お前、覚えているか。スズキ教官のこと。俺たちよくいじめられたよな。」アカイシ隊員は話しかけた。

「そうだっけ。忘れてしまったなあ。」ウチダ隊員が言った。

「あんなこと忘れるのか!あれが元で俺たち、まじめに訓練を受けるようになったのに。スズキ教官だよ、あの鬼スズキだ。そう呼んでいたじゃないか。忘れるわけないよな。」アカイシ隊員がさらに続けた。

「ああ、そうそう、思い出した。そんなことがあったな。」ウチダ隊員は思い出したように言った。

「思い出したか。でも卒業の時は喜んでくれたよな。食事会も開いてくれたじゃないか。」

「そうそう、あの食事会は楽しかったな。」ウチダ隊員はうれしそうに言った。彼はアカイシ隊員と話しながらも機器の点検を進めていた。

アカイシ隊員は気づかれないようにこっそりとその背後に立って、

「お前は誰だ?」と言ってマックガンを抜いた。その表情は厳しく暗かった。

「何言っている。ウチダだよ。」アカイシ隊員の顔をじっと見て言った。

「いや、違う。スズキ教官の話は嘘だ。おまえはどんな扱いを受けてもマイペースを貫いた。だから教官もあきらめたんだ。お前の天才的な能力に免じてな。」アカイシ隊員は言った。沈黙の時間がしばらく続いた後、やっとウチダ隊員が口を開いた。

「はっはっは。地球人は賢いな。そうだ。私はウチダ隊員ではない。マーク星人だ。」そう言うとマーク星人の姿になった。

「もう遅い。我々の宇宙船の船団が宇宙ステーションにもうすぐ攻撃をかける。そうなればMAC地球防衛軍は壊滅だ。」

「何を!ウチダや他の隊員はどうした?」

「先月、隕石に紛れてこっそり近くまで来た。その時、この警戒衛星に点検に来た奴を殺して入れ替わった。そしてV2に入り込み、この警戒衛星と同様、システムを壊してやった。宇宙船が急に現れた時のV2の奴らはおかしかったぜ。ものすごく慌てふためいていたな。もっとも手動でレーザーを撃とうとしたから、後ろからみんな撃ち殺した。それからステーションホークは自動排出して、宇宙船に破壊させたのさ。」星人はそう言うと、急に身をひるがえして机の裏に隠れて銃を撃ってきた。アカイシ隊員は間一髪避けて身を伏せた。

 

ゲンが格納庫の奥を捜索していると、血の跡があった。

「血だ!」驚いたゲンは辺りを見渡すと、その血は収納庫に続いていた。ゲンが慎重にその扉を開くと、中には殺されたV2の隊員たちの死体があった。その時、背後で何か動く音がした。ゲンが振り向くと、星人が銃を構えて撃ってきた。

ゲンは横に飛んで弾を避けると、マックガンを引き抜いて星人を射殺した。

「隊長、V2の隊員は殺されてこの収納庫に入れられていました。星人もいましたので射殺しました。」ゲンはモロボシ隊長に通信した。

「そうか。するとウチダ隊員が怪しい。2号機に連絡する。」モロボシ隊長が応答した。

すると隠れていた宇宙船が急に現れて、V2を攻撃しようとしていた。マックホーク1号がレーザーを発射してそれを妨害した。宇宙船は1号機にも光線で攻撃をかけたが、アオシマ隊員の操る1号機の動きにはついてこられず、レーザーを受けて爆発した。

「やった!」アオシマ隊員は叫んだが、破壊された宇宙船から怪獣が現れた。怪獣は宇宙空間を軽快に泳ぎながら、光線で1号機に攻撃をかけていった。1号機はそれを避けるのが精一杯だった。怪獣は逃げる1号機を放っておいて、今度はV2に向かってきた。V2の窓からそれを見ていたゲンはハッチから外に出ると、レオに変身した。

レオは怪獣にハンドビームを撃った。何かバリアを張り巡らしているようで、それははね返された。怪獣を捕まえようとしたが、そのバリアに阻まれてうまくいかなかった。怪獣はいったん距離をとると、向き直ってV2に光線を放った。レオはエネルギーブレスレッドを光らせてバリアを張った。なんとかV2に当たるのを防いだが、怪獣は動いて場所を変えるといろんな方向から光線を撃った。レオは懸命に防いでいたが、数発の光線を食らった。ダメージのためにカラータイマーが点滅し始めた。

((レオ。エネルギーを集中して剣にするんだ。接近して斬れ。これしかない。))モロボシ隊長がテレパシーで伝えた。レオはうなずくとエネルギーブレスレッドからのエネルギーを右手の先に集めた。それはエネルギーソードという剣になった。

怪獣がV2に接近するところをすれ違い様、レオはエネルギーソードで斬った。怪獣のバリアもろとも切り裂いて、体から血を噴き出した。レオは振り返ると、そのエネルギーソードを投げつけた。それも怪獣のバリアを貫いて体に突き刺さった。怪獣は動かなくなってそのまま宇宙空間を漂っていった。

 

「バン。」アカイシ隊員が星人を撃ち殺した。倒れた星人には目もくれず、機器に飛びつくと修理を始めた。モロボシ隊長から通信を受けたクロダチーフも2号機から駆け付けて手伝った。

「よし、治った!」アカイシ隊員が叫んだ。警戒衛星の機能は正常化し、接近してくる多数の宇宙船をとらえた。

「隊長、警戒衛星の修理が終わりました。宇宙船が多数接近しています。」アカイシ隊員が通信した。

「よしわかった。1号機と各宇宙ステーションからステーションホークを発進させる。」モロボシ隊長は通信を返した。

多数の宇宙船が現れたが、警戒衛星からの情報で先回りした1号機とステーションホークが先制攻撃した。奇襲を受けた宇宙船の船団は、次々に撃墜されて壊滅した。

戦いが終わって基地に帰還する2号機の窓からは、無限に続く宇宙空間が広がっていた。アカイシ隊員は親友のことを思い出しながら、じっと外を見ていた。そこには流れ星が見えた。