新ウルトラマンレオ

別世界のウルトラマンレオの物語

第32話 隊長の決意

静かな宇宙、ゆったりと時間が流れていた。それを切り裂くように隕石がうなりをあげて地球に向かって行った。地球の警戒衛星は警報を司令部に送った。インターセプトとして宇宙ステーションからステーションホークが発進された。奇妙なことにその隕石は接近すると光線を放った。ステーションホークはすぐに迎撃態勢をとったが間に合わずに撃墜された。隕石はそのまま地上に落ちていった。

 

司令室ではあわただしい状態になっていた。オペレーターのシラカワ隊員が隕石の位置を読み上げていった。

「地上に落下します。位置はモニターで示せます。この基地の近くです。」

モロボシ隊長は命令した。

MAC出動。」

「はいっ。」

隊員たちが司令室を飛び出していった。

 

マックホーク1号にモロボシ隊長とアオシマ隊員、カジタ隊員、ゲンが、マックホーク2号にクロダチーフとアカイシ隊員が乗り込んだ。1号機のカジタ隊員はモニターを見ながら隕石を探した。アオシマ隊員が言う。

「そろそろ、落下地点だ。異常はないか?」

「隕石のかけらが多数、転がっています。あっ、何か機械の動いている反応があります。」

「怪獣か?」

「ここからではよくわかりません。地面の下かもしれません。」

モロボシ隊長は、

「これより1号機は着陸してあたりを捜索する。2号機は上空で待機。」

1号機を着陸させると、4人とも外へ出た。それぞれ分析機器をもってあちこちに散らばった。

「全員、気をつけろ。何かつかめたらすぐ報告しろ。」モロボシ隊長が言った。

ふいに地上から光線が放たれた。3号機は間一髪避けた。クロダチーフが通信機で、

「隊長、攻撃を受けました。やはり地中に何かいます。危険ですのでマックホーク1号に戻ってください。」

モロボシ隊長は通信機で、

「よしわかった。全員、マックホーク1号に戻れ!」

あたりが震えて、地割れができた。その間から宇宙怪獣サタンビートルが現れた。地上の隊員たちは地震のため歩くこともままならない。2号機は旋回を続けていたが、その間も光線が襲う。

「攻撃したいのですが、安全な場所まで後退できましたか?」クロダチーフが無線でたずねた。

「私は大丈夫だ。カジタはマックホーク1号にたどり着いたようだ。アオシマとゲンはまだだ。」モロボシ隊長は通信した。

そのころ、アオシマ隊員とゲンは合流してマックホークの方向へ目指していた。しかしなかなか前へ進めない。急に前の岩盤が崩れてきた。アオシマ隊員に当たり気を失った。

アオシマさん!」と叫ぶが返事はない。抱きかかえて逃げようとした瞬間、怪獣が迫ってきた。ゲンはとっさに変身した。

光とともにレオが出現した。レオはアオシマ隊員を安全なところまで運んでそっと手でおいた。カジタ隊員が走ってきて、アオシマ隊員をかついで1号機に向かった。それをみてレオは怪獣の方に向き直った。

不気味にも怪獣はじっとこちらを見ていた。レオは構えながらじりじりと間合いを詰めていく。急に怪獣が角から光線を放った。それをさけるとレオは怪獣に突進した。パンチとキックで攻撃したが、皮が固いのかあまり効いていないようだった。そこでレオは怪獣の右腕をとると体を入れて投げ飛ばした。大きく転がる怪獣、ダメージはあるようだ。起き上がりかけたところに、空中からレオキックを放った。怪獣は後ろに倒れた。レオは後ろに下がると右手首のエネルギーブレスレッドを光らせた。エネルギー光球を放とうとした瞬間、後ろから光線がレオを直撃した。前に倒れこむレオ、ダメージのためエネルギーを消費して胸のカラータイマーが赤く点滅しはじめた。

後ろの地面からもう1頭、サタンビートルが現れた。前方の怪獣は起き上がりレオに向かってきた。まだダメージが効いているのか、レオはしっかり立つことができない。怪獣はレオにパンチで攻撃した。数発がレオに入り、後ろによろけた。すると後ろの怪獣がレオを攻撃した。

レオが倒れると2頭の怪獣は上から足蹴にした。

(このままでは危ない。)モロボシ隊長は思った。胸ポケットからカプセル怪獣の箱を取り出した。その時、ポケットからこぼれた物があった。ウルトラキングからもらったウルトラアイだった。これはウルトラセブンに変身できるが、1回しか使えないものだった。もしそれを使ってしまったなら、セブンは地球を去らなければならなかった。

モロボシ隊長はウルトラアイを拾って胸ポケットにしまうと、カプセル怪獣の箱を開けた。そこには一つだけ使用できるカプセルがあった。それを右手にとると投げ上げた。

「行け、ウインダム。」

ウインダムが現れた。2頭の怪獣はレオを攻撃していたので気づかなかった。ウインダムは額からレーザーショットを放った。不意を突かれた1頭の怪獣は倒れた。もう1頭はウインダムに襲い掛かってきた。レーザーショットを放つが、怪獣はそれに耐えてウインダムにつかみかかった。ウインダムは抵抗したが投げられてしまった。倒れたウインダムを怪獣が馬乗りになって殴っていた。ウインダムは深くダメージを受けていた。

「戻れ、ウインダム。」モロボシ隊長は動けなくなったウインダムを回収した。

レオはようやく起き上がった。エネルギーブレスレッドを光らせハンドビームを撃った。ウインダムを襲っていた怪獣の頭部に当たった。怪獣はひるんで地下に逃げていった。もう1頭もそれを見て逃げて行った。

レオは変身を解いた。エネルギー切れ寸前の状態で、怪獣からの攻撃のダメージは大きく頭から血を流してその場に倒れた。

 

医療センターの病室では、ゲンがケア装置の付いたベッドに寝かされていた。意識はなく、頭や体のあちこちに包帯がまかれている状態であった。ドクターアンヌは計器をチェックしてやや暗い顔で病室を出た。隣のモニタールームで窓越しにゲンを見ながら、自分に言い聞かせるようにつぶやいた。

「頑張ってね。私もできるだけのことをするから。」

 

医療センターの廊下にはモロボシ隊長が来ていた。ゲンの容態を確かめに来たのだ。壁にもたれかかり腕を組んだ。

(ウインダムも深く傷つき、使えるカプセル怪獣はなくなった。)すると胸ポケットのウルトラアイの感触が感じられた。ウルトラアイを取り出して眺めた。以前のものと寸分たがわぬ同じ形をしていた。モロボシ隊長は

(これを使う時が来るのか・・・)考え込んでいた。ふいにウルトラアイを持つ右手が誰かにつかまれた。ドクターアンヌだった。

「ダン、どうしたの。怖い顔をして。」

あわてて手を振りほどくと、ウルトラアイをポケットにしまった。

「いや、何でもない。それよりゲンは?」

「あまりよくないわ。まだ意識が戻らない。」

「そうか。治療を続けてやってくれ。」やや暗い顔をしてモロボシ隊長は歩き出した。後ろからドクターアンヌが言葉を投げかけた。

「ダン、今日は何か変よ。どうしたの!」

モロボシ隊長はそれに答えずに出ていった。その後ろ姿を見送りながら、

「まさか・・・まるであの時のようだわ。」ドクターアンヌがつぶやいた。

医療センターを出たところで、モロボシ隊長に通信が入った。

「隊長、怪獣が現れました。基地のすぐ前です。」オペレーターのシラカワ隊員からだった。

「わかった。基地に戻る。チーフたちに攻撃させていてくれ。」

 

基地からマックホーク1号と2号が発進していた。

「攻撃!」1号機と2号機がミサイル攻撃を始めた。怪獣はややひるんだものの、光線で反撃し始めた。旋回して避けると、何度も攻撃を繰り返した。皮膚が固いため攻撃はあまり効いていないようだった。怪獣は基地に近づいていった。

基地からはレーザー砲が発射されたが、それも怪獣には効果がなく、それどころか怪獣の放った光線でレーザー砲が破壊されていった。

「基地に近づけさせるな!」クロダチーフはそう言うと、1号機と2号機を怪獣の正面に回り込ませた。2機で同時にミサイルを放った。さすがに怪獣はややひるんだようだったが、今度は怪獣が光線を乱射した。急な激しい攻撃に2機とも避けることができず、次々に煙を吐いて不時着していった。

 

医療センターではゲンが目を覚ました。外での戦闘の音が並外れたゲンの耳に達していた。ベッドから立ち上がったがまだふらふらして壁にもたれかかった。それでも横に畳んであった戦闘服を着ると病室を出た。

ドクターアンヌが飛び出してきた。ゲンはよろよろ歩いて止まろうとしなかった。

「どこへ行くの?」

「基地が危ないんです。行かないと・・・」

「そんな体で何ができるというの。

「お願いです。行かせてください。」

「あなたたちはどうせ聞かないんでしょう。仕方がないわね。じゃあ、ダン、いや隊長のことを見ていて、何か変だったわ。」

ゲンはうなずくと少し急ぎながら出て行った。

 

モロボシ隊長は隊員たちと基地の近くの斜面で合流した。基地までさらに怪獣が迫っていた。

「みんな、大丈夫か?」

隊員たちはうなずくが、それぞれが負傷していた。戦意はまだ旺盛だが、まともに戦える状態ではないようだ。クロダチーフがマックガンを出して言った。

「隊長、基地に迫っています。基地のレーザー砲は破壊されてしまった様です。地上戦でここで食い止めましょう。」

モロボシ隊長は怪獣の方を見た。光線で基地を攻撃しながら怪獣は進んでいた。隊員たちに攻撃の命令を出そうとしたが、彼らは満足に戦える状態ではなかった。そのとき、モロボシ隊長には胸ポケットのウルトラアイの存在が急に感じられた。ポケットの上から押さえたとき、モロボシ隊長の決心は固まった。そして隊員の方に向き直って、真剣な顔をして話し始めた。

「みんな、聞いてくれ!地球はこれまで多くの凶悪な星人の攻撃を受けてきた。またこれからも多くの攻撃を受けるだろう。しかしそれをはね返せるのは地球人の心の強さだ。きみたちならどんな困難な事態であってもきっと乗り越えることができる。どんな強大な星人や怪獣であっても打ち破ることができる。わたしはそう信じている。」

モロボシ隊長のいきなりの話に、隊員たちは困惑していた。

「隊長、いったいどうしたのですか。」と口々に言った。モロボシ隊長はそれには答えず、一瞬迷ったように下を向いた。しかしすぐに顔を上げると隊員の方を見て、ついに真実を告白した。。

「私は・・・私はウルトラセブンだ!」

その瞬間、時間が止まったようだった。想像すらもできなかった真実に隊員たちは驚いて声すら出せなかった。モロボシ隊長はつづけた。

「今度セブンに変身すると、もうここには戻って来ることができない。しかし私はセブンになって戦う。そしてここを守り抜く。私がいなくなっても、あとは君たちが地球を守るのだ。君たちには地球の未来がかかっている。さらばだ!」隊員たち茫然としていた。しかし走り去ろうとするモロボシ隊長の後姿を見て、

「隊長!」隊員たちはやっと声を上げた。

モロボシ隊長は後ろをふりかえると

「あとは任せたぞ!」少し微笑みながら言った。そして怪獣の方に走り出した。

そして厳しい顔つきになり、胸ポケットからウルトラアイを取り出すと天に掲げた。それは太陽の光で輝いていた。モロボシ隊長は迷うことなく目に当てた。

「ジュワッ」

巨大なウルトラセブンが現れ、怪獣に向かって行った。

 

セブンは怪獣に立ち向かった。組み合ったが力は同じようで動かなかった。セブンは体を落とすと巴投げをうった。怪獣は勢いよく投げ飛ばされた。転がっていく怪獣に、セブンは1歩下がってアイスラッガーを投げた。しかしすぐに起き上がった怪獣に固い角で跳ね返された。今度は怪獣が向かってきた。セブンは組み合ってチョップを加えたが、固い皮のためダメージは少ないようだった。たがいに攻撃を繰り出したが決着はつかなかった。

すると後方からもう1頭の怪獣が地面から現れて向かってきた。怪獣は背後から勢いよくセブンをはね飛ばした。セブンは倒れたがすぐに起き上がった。前からも怪獣が迫っていた。セブンは挟み撃ちの状態になった。前、後ろと構えを向けていた。そして同時に2頭の怪獣が向かってきた。両方の攻撃を防ぎきれなかった。前からと後ろからと、セブンは打撃を受けた。額のカラータイマーが点滅し始めた。

セブンがピンチになったのを見て、隊員たちは我に返った。

「みんな、隊長を助けるんだ!」クロダチーフが叫んだ。

「おう!」隊員たちは傷ついた体で向かって行き、マックガンで怪獣に攻撃した。セブンの背後を襲おうとした怪獣は突然の攻撃にふいをつかれた。マックガンの攻撃で咆哮して苦しむ怪獣を背に、セブンは前にいた怪獣につかみかかっていった。後ろの怪獣は隊員の方を向くと、光線を発射した。

あちこちで爆発がおこり、隊員たちは吹っ飛ばされた。

そのときゲンがようやく到着した。近くで倒れているアカイシ隊員を見つけて近寄った。

「しっかりしてください。アカイシさん。」ゲンが抱き起すと、アカイシ隊員は半身を起こしてゲンに訴えかけた。

「ゲン!隊長はウルトラセブンだったんだ。もうセブンに変身したら地球にいられなくなるのに・・・俺たちのために戦っているんだ。」

ゲンはそれを聞いてすべてを理解した。

「ゲン、隊長を助けてくれ。」

ゲンはアカイシ隊員を座らせると怪獣の方に駆け出した。数発、マックガンを撃ったあと、右手をのばして変身した。

3者が戦っている後方にレオが現れた。レオはその戦いの輪に入っていく。レオとセブンの連携した戦いに2頭の怪獣は次第に押されていった。キックが同時に決まり怪獣がともに倒れた。レオとセブンはいったん後ろにステップした。セブンがワイドショット、レオがエネルギー光球を放った。轟音とともに2頭の怪獣は粉々になった。

あたりは夕刻近くなっており、レオの胸のカラータイマーも鳴っていた。別れの時が来た。セブンはレオの方を向いてうなずいた。レオもうなずいた。そしてセブンは隊員たちの方にも向き直った。

「隊長~。」下で隊員が泣きながら叫んでいた。セブンはうなずいた。そしてゆっくりと後ろを向くと飛び立った。セブンの姿がだんだん小さくなってやがて消えていった。

空には星が輝いていた。