新ウルトラマンレオ

別世界のウルトラマンレオの物語

第31話 衝突!ウルトラの星

ババルウ星人の策略にはまり、ウルトラ兄弟とレオ兄弟は戦うことになり、レオは深刻なダメージを受けた。その危機に伝説のウルトラキングが現れ、アストラに寄生していたババルウ星人を追い出した、しかしウルトラキーのエネルギーは地球上空に弁産してしまった。ウルトラ兄弟はウルトラの星を元にもどすために帰っていった。まだウルトラの星は刻々と地球に迫ってきている。いまだにウルトラ兄弟からウルトラの星の制御に成功したというウルトラサインは送られてきていない。この危機を乗り越えられるのだろうか?

 

医療センターの病室では、ゲンとアストラがケア装置の付いたベッドに寝かされていた。意識はなく、2人とも昏睡状態だった。モニターの音のみが病室に響き渡っていた。

 

司令部に戻ったモロボシ隊長は長官室に呼び出されていた。タカクラ長官は、

「報告は聞いた。何か意見があるかね。」

「対応策については参謀本部からいくつか意見が出ているかと思いますが。」

タカクラ長官は静かに言った。

「惑星間ミサイルUN-105X爆弾の使用も入っている。

モロボシ隊長はうなずいた。タカクラ長官はさらに続ける。

「君は以前から惑星間ミサイルには反対だったな。もしそれが地球を救う唯一の方法でも反対するかね。」モロボシ隊長はすぐには答えられない。

「その星はM78星雲からきているそうじゃないか。もしかすると我々を幾度となく救ってくれたウルトラセブンの星かもしれない。もとろん確かめようもないが、もしそうであっても、いやそうでなかったとしてもその星に住む生物を抹殺することになる。」タカクラ長官は一つ息をついた。そしてしみじみと言った。

「われわれは罪深い。過去にも地球を救うため、人類を救うため苦渋の決断をしてきた。果たしてそれが正しかったか、間違いだったかは今でもわからない。しかしいつかは決断しなければならない。人類の生存のために。」

「モロボシ君。いざというときは決断してくれるかね。」

モロボシ隊長は背筋を伸ばして姿勢を正して言った。

「私はMACの隊長です。地球を救うためであればその任務を完遂します。」

「よし、わかった。これから防衛会議だが、UN-105X爆弾が使用できるように準備してくれ。

敬礼をするとモロボシ隊長は部屋を重い足取りで出ていった。

 

 

ババルウ星人が宇宙船にもどると、ブルーメ星人が音声通信してきた。

「どうだ、首尾は?」

「あと一歩のところで邪魔が入りました。しかしレオはウルトラ兄弟に倒されましたし、ウルトラ兄弟はウルトラの星に帰りました。」

「まあよい。まだウルトラの星は地球と衝突するコースをとっているからな。地球人はウルトラの星を破壊するかな。フッフッフ。」ブルーメ星人は愉快そうだった。

 

MACの格納庫ではUN-105X爆弾の準備が進められていた。ウルトラの星は少しずつ地球に迫り、残された時間は多くなかった。

司令室にタカクラ長官が現れた。隊長と隊員は敬礼をして出迎えた。デスクに両手をついておもむろに言った。

「諸君、会議で決定した。UN-105X爆弾を使う。」

あたりは静まり返った。モロボシ隊長は一文字に口を結んでいた。

「しかしながら、今回の星の動きは急なことであり、今までの天文の常識に反する。しかし衝突が避けられる可能性があるので、ギリギリまで発射を待つ。タイムリミットは明日の15時までだ。」

 

モロボシ隊長は医療室に来ていた、ドクターアンヌからゲンが目を覚ましたと聞かされたからだ。病室に入るとゲンが半身をおこしてモロボシ隊長に聞いた。

「僕が倒れている間に何があったのですか?」

モロボシ隊長は誰にも聞かれていないのを確認して、いままでのいきさつを話した。ウルトラキングが現れたこと、アストラはババルウ星人に乗り移られていたこと、ウルトラキーのエネルギーは地球上に分散してしまったこと、ウルトラ兄弟たちはウルトラの星に帰りウルトラの星の制御に努めていることなど。そして言った。

「まだウルトラの星の制御はできておらず、地球に向かっている。MACUN-105X爆弾を使うことを決定した。

ゲンは大きな声で言った。

「星を破壊してどうなるのですか。もっとほかのやり方があるはずです。」

モロボシ隊長は、

「いや、地球人にとってはこれより他の方法はないだろう。」と冷たく言った。

「星の軌道をずらす方法はほかにもある。しかし確実ではない。時間もない。そのような状況では結論は決まっている。」

レオはやや怒りながら言った。

「だからといってそれでいいのですか。僕には納得できません。」

「納得しようが、できまいが、このままでは衝突する。私はMACの一員だ。地球の一員だ。地球を守るためならウルトラの星であろうと破壊するつもりだ。」

ゲンはモロボシ隊長の胸ぐらをつかんで激しく詰め寄った。

「あなたは自分の故郷を破壊するのですか。あなたの星なんですよ!」

「私にとってはこの地球も大切だ。」モロボシ隊長はゲンの目を見ながら静かに言った。その目には強い決心が感じられた。そしてゲンの手をふりほどいた。ゲンははっと我に返った。

「すいません、隊長。」そのときゲンの右手首のエネルギーブレスレッドが目に入った。

「もしかすると何とかなるかもしれない。力を貸してくれ!」

 

ウルトラの星では、ゾフィーウルトラマン、ジャック、エースが装置にはめ込まれたウルトラキーにエネルギーを注いでいた。しかしうまくいかなかった。

「まだ、だめだ。」

「やはり、ウルトラキーを満たすエネルギーをためるのにはまだまだ足りないのか。」

「これではまだ多くの時間が必要だ。」

「散らばってしまった地球上にあるエネルギーを集められれば、何とかなるのだが。」

「しかし衝突まで時間はない。」

 

モロボシ隊長に抱えられながら、ゲンは外に出た。

「大丈夫か?」

ゲンはモロボシ隊長から離れて一人で立った。

「ええ、もう大丈夫です。」

レオは変身して地球上空へ飛び出して行った。

「頼むぞ!」

地上でモロボシ隊長が祈るような気持ちで見ていた。モロボシ隊長は、もしかするとエネルギーブレスレッドなら、散らばったウルトラキーのエネルギーを回収できるかもしれないと思っていた。これが最後の希望だった。

上空で止まるとレオは右手を上に突き出した。エネルギーブレスレッドが輝きだした。周囲のエネルギーを集め始めた。

それをババルウ星人は見ていた。レオのしている意味が分かったようだった。

「これはいかん。妨害してやる。」

ババルウ星人は暗闇から急にレオの前に現れた。レオは驚いたが、この状況では戦うことができない。いまやレオにとびかかろうとする瞬間、ババルウ星人は背後から蹴られて遠くへ飛ばされた。アストラだった。目覚めたアストラもレオに協力するため変身して出てきたのだった。アストラはババルウ星人を捕まえると地上に引きずり落した。

ババルウ星人はアストラを攻撃し始めた。前には倒されて乗り移られたことがあったため、アストラは懸命に戦った。そしてパンチとキックでババルウ星人を圧倒した。後ろによろめいたところを、アストラは飛び上がり強烈な飛び蹴りを食らわせた。ババルウ星人は倒れて動かなくなった。

 

司令室では重苦しい空気が流れていた。UN-105X爆弾の発射のカウントダウンはもう始まっていた。モロボシ隊長はデスクの前に座り、肘をついて指を組んでいた。じっと組んだ指の先を見ていた。そこには無情にもUN-105X爆弾の発射ボタンが置かれていた。

この恐ろしい爆弾の発射をモロボシ隊長は自ら志願した。それはモロボシ隊長(=ウルトラセブン)としての責任だと思っていた。ウルトラの星の住人、地球の人々からの非難は一身で引き受けるつもりだった。

オペレーターのシラカワ隊員はずっとウルトラの星の軌道をみていた。他の隊員もモニターを凝視していた。発射の時間が刻々と近づいてきた。

 

上空でエネルギーを集めているレオにアストラが近づいた。

「手伝います。」

アストラは手をつなぎ、2人でさらにエネルギーを集めた。かなり集まったところで、ウルトラの星でテレパシーを送った。

「ウルトラキーのエネルギーを集めました。受け取ってください。」

「ありがとう。こちらの方向に向けてエネルギーを放出してくれ。これでウルトラの星は救われる。」

エネルギーブレスレッドから一筋のまばゆい光線が宇宙に向けて放たれた。

 

額に脂汗をにじませたモロボシ隊長が発射ボタンをじっと見つめていた。カウントダウンがもうすぐ終わる。モロボシ隊長は右手を発射ボタンにのばした。そのとき、

「軌道が変わりました。星が離れていきます。」シラカワ隊員が叫んだ。モロボシ隊長は立ち上がり、モニターをのぞき込んだ。後ろの4人の隊員も立ち上がり、「よかった、よかった。」と喜んでいた。モロボシ隊長は何か言おうとしたが声にはならなかった。ただ右手で額の汗をぬぐった。

 

ゲンとアストラが戻ってきた。モロボシ隊長は出迎えて、

「よくやった。」と肩を叩いてほめた。アストラが言った。

「ウルトラの星との衝突はなくなりましたが、元に戻すのにはかなり大変だと思います。僕はこれからウルトラの星に行って、お手伝いをしてきたいと思っています。」

「そうか、では頼むぞ。」

その時、ウルトラサインがモロボシ隊長に送られてきていた。

アストラは右手を挙げて変身すると、上空に飛び立った。あたりに砂ぼこりが立ち、風が鳴った。モロボシ隊長は言いたいことがあるらしく、その中で大声をあげてレオに伝えた。それを聞き取ったレオは飛んで行くアストラに大声で叫んだ。

「おーい、今度の活躍で俺たちはウルトラ兄弟に入れてもらえたんだ!ウルトラ兄弟だぞ!アストラ!」

アストラが見えなくなるまで2人は見送った。