新ウルトラマンレオ

別世界のウルトラマンレオの物語

第11話 帰ってきたウルトラマン

宇宙空間を光る物体が高速で飛んで行った。輝くその姿はウルトラマンジャックだった。彼はまっすぐ地球に向かっていた。しかしそれを阻む者がいた。

何者かがウルトラマンジャックに体当たりをした。バランスを崩した彼は月面にたたきつけられた。頭を振って意識がはっきりさせて起き上がった前には、シュラ星人が立っていた。

シュラ星人はウルトラマンジャックに向かってきた。ウルトラマンジャックはまだダメージから回復していなかった。シュラ星人のキックやパンチの攻撃をうけて、また倒れこんだ。その上をシュラ星人は足蹴にしていた。ウルトラマンジャックは右手を上げて苦しんでいたが、やがて転がってシュラ星人の足蹴りから逃れた。

起き上がったウルトラマンジャックは、素早く構えるとスペシウム光線を放った。シュラ星人に当たるが受けの態勢に入っていたので、その光線をはね飛ばした。そして両手を前にのばすと光線を発射し始めた。ウルトラマンジャックは横転してそれを避けた。周囲に爆発で土が舞った。月面の日の当たらない部分での戦いなので、ウルトラマンジャックのエネルギーは少なくなってカラータイマーが点滅し始めた。不利を悟ったウルトラマンジャックは八つ裂き光輪を放った。それをもシュラ星人は受け止めてはね返した。しかしその隙にウルトラマンジャックは地球に向かって飛んで行った。

シュラ星人もその後を追いかけた。ウルトラマンジャックが地球にたどり着こうとしたとき、シュラ星人は手を前に出して光線を放った。光線はウルトラマンジャックに当たり、彼はバランスを崩して墜落していった。

 

「星人をキャッチしました。月の方向から向かってきて、もうすぐ地上に着きます。」司令部でオペレーターのシラカワ隊員が振り返って言った。

「場所は?」モロボシ隊員が言った。

「都内です。場所をモニターに送ります。」

「よし、全員、出動!」モロボシ隊長が命令した。隊員たちが司令部を次々に出て行った。

 

マックホーク1号と2号が出撃した。すでに地上に到着したシュラ星人はすでに建物を破壊していた。

「ミサイル攻撃する。」モロボシ隊長が命令した。

(ついに凶暴なシュラ星人まで地球に来てしまったか。こいつはかなり強力で厄介だ。)モロボシ隊長は思っていた。

ミサイル攻撃をシュラ星人にあびせた。しかしシュラ星人にダメージは少なかった。爆発の中で手を振り回して威嚇していた。やがて両手を前に出して光線を発射し始めた。それをマックホークは旋回して避けた。

「気をつけろ。奴は光線を使うぞ。ミサイルは効果が少ないからレーザー攻撃に切り替える。」モロボシ隊長は通信した。1号機と2号機は態勢を整えてレーザーを発射した。シュラ星人に当たり、小さな爆発が起こるが平気なようだった。なおもシュラ星人は光線を発射し続けた。街はさらに破壊された。

「いかん。街の被害が大きくなる。奴をけん制して街から離す。2号機は大型レーザーを準備。」モロボシ隊長はそう言うと、1号機を星人の目の前を通り過ぎさせた。シュラ星人は怒ったように1号機を追い始めた。1号機の周りを光線が降り注いだ。その一部が1号機に当たり、煙を吐いて不時着していった。

クロダチーフとゲンの乗る2号機ではエネルギーを充填していた。

「もう少しです。」ゲンが言った。

「よし、では星人に近づくぞ。」クロダチーフが言った。しかし2号機の動きはシュラ星人に気づかれていた。シュラ星人は周囲を見渡せることができるので、後ろから近づく2号機に気づいた。そしていきなり急に振り返り、光線を発射した。2号機に光線が直撃して、

「うわー!」クロダチーフとゲンは叫んだ。火だるまになっている2号機から2人は辛くも脱出した。パラシュートを開いて地面に降り立つと、ゲンはレオに変身した。

シュラ星人はレオを見ていきなり向かってきた。レオは構えて迎え撃った。お互いにキックとパンチを放って攻撃したが、勢いと強さはシュラ星人が勝っていた。次第にレオは追い詰められていった。

 

被害を出した街には多くの人が逃げ惑っていた。また倒れている人もいた。救急隊員が助け起こして病院に運んだ。病院ではあわただしく医師や看護師が行き来していた。廊下などにも患者があふれ、混乱状態になっていた。

その隅のソファの上に一人の男が寝かされていた。顔や体に傷を負い、包帯を巻かれており、意識を失っているようだった。あわただしい病院内の騒音でその男は目を覚ました。彼はゴウヒデキだった。ウルトラマンジャックの人間体である彼は地球になんとかたどり着いて救助されたのだった。

悪夢から覚めたようにしばらくぼんやりとしていたが、自分がどうしてここにいるかがわかってきた様だった。多くの負傷者をかけ分けながら、彼は外に出た。遠くで戦っている2人の星人を見えた。ゴウは飛んでくるがれきにかまわず近くまで走って行った。自分の目でその星人を確かめるために。

 

レオはエネルギーブレスレッドを光らせた。エネルギー光球が大きくなってレオの右手にあった。目の前のシュラ星人は両手で構えていた。レオはエネルギー光球を放った。シュラ星人は慌てもせず、飛んできたエネルギー光球をしっかり受け止めた。それをレオの方に返した。レオはそれをぎりぎり避けたが、爆発で吹っ飛ばされた。ダメージでカラータイマーが点滅し始めた。シュラ星人はゆっくりレオの方に向かって行った。

「危ない。こうなったら・・・」地上で戦いを見ていたモロボシ隊長は両腕をクロスさせて、サイコキネシスを使ってシュラ星人を止めた。

(だめだ、もたない。)モロボシ隊長は思った。強力なシュラ星人はすぐにそのサイコキネシスをやぶった。かなりのエネルギーを使ってモロボシ隊長はかなり消耗していた。

シュラ星人はサイコキネシスを出していた方向を見た。そこには小さな人間が1人いただけだったが、シュラ星人の抜群の目には彼がウルトラセブンであることが分かった。また別の目は遠くで自分をするどく見つめる目に気づいていた。それはゴウヒデキ、ウルトラマンジャックの人間体だった。

レオはやっとダメージから回復して立ち上がって構えた。ウルトラマンセブンとウルトラマンジャックが変身して3人で攻撃してきたら、この強い自分でも敵わないとシュラ星人は思った。そこでシュラ星人は飛び上がり上空に消えていった。

 

ゴウはシュラ星人と戦っていたのはウルトラセブンではなく、見慣れない赤い巨人であることに衝撃を受けていた。

(やはり本当だったのか。セブンに変身できなくなったというのは。しかもこの地球はあの赤い巨人が守っているのか。本当に大丈夫なのか。)いろんな思いがゴウに浮かんでいた。彼はウルトラセブンの危機を知り、ある物を届けに来たのだった。もし地球が危ないのだったら、再び自分が地球の守りにつくことさえ考えていた。

シュラ星人は去り、再び街に静寂が訪れた。ゴウは何とかウルトラセブン、いやモロボシダンに接触しようと考えた。さっき一瞬、シュラ星人を拘束したテレキネシスウルトラセブンの力、つまりモロボシダンがこの近くにいることは確かだった。ゴウはあちこち探して回っていた。近くに来れば自分の優れた感覚でわかるはずだが、いまだにそれもつかめていなかった。

(はやくセブンに会わなければな・・・)ゴウは焦りを感じていた。

一方、モロボシ隊長は何かが自分を呼んでいるように感じていた。それはウルトラマンジャック、ゴウヒデキのものであると感じていた。ゲンをはじめ、他の隊員たちは基地に帰っていったが、モロボシ隊長だけはゴウを探すため、一人で街に残った。

破壊されて荒涼とした街には人影が少なかった。

「ゴウ、いるか?モロボシだ。いるなら声を出してくれ!」モロボシ隊長は大声を出して探していた。その声をずば抜けた聴覚をもつゴウはとらえた。彼は声のする方向に走って行った。

「ここです!」ゴウは大きく手を振った。モロボシ隊長はそれに気づいて走り寄った。2人は手を取って再会を喜んだ。

「よく来た。でもどうしたんだ?」傷だらけのゴウを見てモロボシ隊長が訊いた。

「ここへ来る途中、シュラ星人に襲われました。攻撃を受けてこの通りです。不覚でした。」ゴウは答えた。

「大丈夫か?苦労して来てくれたんだな。どうして地球に?」

「兄さんこそ、元気そうでよかった。あなたのピンチを聞いて来たのです。ある物を届けに。」

ゴウはポケットから小さなカプセルを取り出すと、モロボシ隊長に渡した。

「「ああ、これは!ありがたい。」モロボシ隊長はカプセルを受け取った。

その時だった。モロボシ隊長の通信機が鳴った。

「隊長、またあの星人が今度は別の街で暴れています。クロダチーフたちはマックロディーで現場に向かっています。場所の位置を送ります。隊長をオオトリ隊員がマックカーで迎えに行きます。」通信機からシラカワ隊員の声が聞こえた。

「わかった。チーフに攻撃を指揮させてくれ。私はゲンと向かう。」モロボシ隊長は返事をした。

 

上空からシュラ星人が現れて、再び街を破壊していた。マックロディーが現場に到着して隊員たちを降ろした。マックロディーはレーザーで、隊員たちはマックガンで攻撃した。シュラ星人にはその攻撃もやはり通じなかった。それでもあきらめずに隊員たちは攻撃を続けていた。

 

ゲンがマックカーでモロボシ隊長を迎えに行くと、そばに1人の見知らぬ男が立っていた。地球人だが何か違うものをゲンは感じていた。

「ゴウヒデキだ。ウルトラマンジャックでもある。」モロボシ隊長がゲンに言った。そしてゴウには、

「オオトリゲンだ。彼があの赤い巨人だ。L77星人のレオだ。」と言った。ゲンとゴウはお互いに握手した。

「シュラ星人の元に向かうぞ。急いで乗れ!」モロボシ隊長はそう言うと、マックカーを猛スピードで走らせた。

 

マックロディーが破壊されたところに、モロボシ隊長たちを乗せたマックカーが到着した。隊員たちはマックガンで攻撃しているが、あまりのシュラ星人強さに苦戦していた。

3人はマックカーを降りた。

「隊長、変身していきます。」ゲンはモロボシ隊長に言った。

「気をつけろ。もうわかっていると思うが、かなり強力な星人だ。注意してかかれ!」モロボシ隊長が言った。ゲンはうなずくと、右手を上げてレオに変身した。

 

「兄さん、レオはちゃんと戦えるのですか?」ゴウが訊いた。

「ああ。まだ未熟だが、彼なりにがんばって地球のために戦っている。」モロボシ隊長が答えた。レオはシュラ星人に向かって行った。しかしやはりシュラ星人は強く、パンチを受けてレオは倒れた。シュラ星人はレオを足蹴にしようとしていた。

「僕も行きます。」ゴウは言った。右手を上に伸ばすとウルトラの光が輝いた。そしてウルトラマンジャックが現れた。

ウルトラマンジャックはシュラ星人の背後から向かって行った。しかし周囲を見渡せるシュラ星人は、向き直るとウルトラマンジャックに光線を放った。いきなり光線を受けてウルトラマンジャックは倒れこんだ。シュラ星人は近づいて攻撃しようとしたが、レオが背後からキックを放った。しかしそれも見えていたシュラ星人は避けた。

ウルトラマンジャックとレオが前後から攻撃を仕掛けるがシュラ星人はかわしていった。そればかりか2人のダメージを与えていった。21とは思えないシュラ星人の戦いだった。

ウルトラマンジャックスペシウム光線を放ったが、これもシュラ星人に受け止められた。レオとウルトラマンジャックのカラータイマーが点滅し始めた。もう時間がなかった。

「だめだ。シュラ星人は四方を見渡せる目がある。レオとジャックが同時にかかってもだめだ。サイコキネシスも一瞬しか効果がない。どうしたらいいのか。」モロボシ隊長は考えた。

(待てよ。前の戦いでシュラ星人が急に引き上げたのは何だったのか?もしかしてレオとジャック、そしてこの私を見て3人が戦うとみたのではないのか。3人ならもしかすると・・・)そう考えたが、モロボシ隊長がウルトラセブンに変身できない以上、それは無理だった。しかしゴウから届けられたカプセルが手元にあった。胸ポケットからカプセルを取り出した。

「これだ!」モロボシ隊長は右手のカプセルを遠くに投げつけた。

「行け!ウインダム!」

爆発が起こり、煙の中からカプセル怪獣のウインダムが現れた。

「ウインダム、シュラ星人を攻撃するんだ!」モロボシ隊長が叫んだ。

ウインダムはうなずくとシュラ星人に向かって行った。シュラ星人はレオとウルトラマンジャックの戦いに気を取られてウインダムに気が付いていなかった。ウインダムはその背後からレーザーショットを放った。それはシュラ星人の背部に直撃した。なおもウインダムはシュラ星人の背後をパンチで攻撃した。ダメージを受けたシュラ星人がウインダムの方に顔を向けると、一瞬の隙を見てウルトラマンジャックはシュラ星人つかんで投げ飛ばした。シュラ星人が起き上がる間もなく、今度はレオが飛び上がってレオキックを放った。シュラ星人は跳ね飛ばされて倒れこんだ。ウルトラマンジャックはウルトラブレスレッドをシュラ星人に投げつけた。それは光の刃になってシュラ星人の胸を貫いた。そしてレオはエネルギーブレスレッドを輝かせて、エネルギー光球を放った。シュラ星人は粉々になった。

戦いが終わってゲンとゴウがモロボシ隊長の元に戻ってきた。

「よくやった。2人とも!」モロボシ隊長が声をかけた。

「いいえ、ジャックが戦ってくれたおかげです。」ゲンが言った。

「いや、レオ。君は強かった。君ならこの地球の守りを任せられる。セブンが変身できなくても。」ゴウは言った。

「僕はこれでウルトラの星に帰ります。ではあれを。」ゴウが言うとモロボシ隊長は壊れたウルトラアイを差し出した。

「直せるかどうか、星に帰ってなんとかやってみます。」ウルトラアイを受け取ってゴウは言った。

「頼むぞ。」モロボシ隊長は言った。3人の姿に夕日が当たり始めていた。