新ウルトラマンレオ

別世界のウルトラマンレオの物語

第13話 兄弟の絆

赤い怪獣が街に急に現れた。次々にビルを破壊していった。人々は悲鳴を上げて逃げ回っていた。そこへマックホーク1号と2号が到着した。

「攻撃!」モロボシ隊長の命令とともにミサイルで攻撃を始めた。怪獣は咆哮して火炎を吐いた。それをかわしてなお、2機のマックホークが攻撃を続けた。街は火に包まれていた。その中を逃げ惑う人々の中に、がれきに立つ一人の少年の姿があった。遠くの方を見ているようだった。

(おや?あの少年は何を見ているんだ?)

モロボシ隊長には一瞬、その光景に違和感を覚えた。しかしすぐに怪獣への攻撃に集中した。さらに怪獣にミサイルが降り続いた。

少年は相変わらず、じっと遠くの方向を見ていた。しかし目は動いていた。何かを探している様だった。爆発の破片が飛んできているというのに身動きをしなかった。

「ドーン、」急に大きな音がして、建物が崩れた。その中からもう1頭、青い怪獣が現れた。

 

赤い怪獣と青い怪獣はそれぞれが暴れて建物を破壊していたが、急に何かに操られているように2機のマックホークに急に顔を向けると、正確に次々に火炎を吐き始めた。2号機はその攻撃を避けきれず、火炎を気に受けると煙を吐きながら降下していった。乗っていたクロダチーフとカジタ隊員がパラシュートで脱出した。

1号機のアオシマ隊員は何とかその攻撃を避けるのが精一杯で、ミサイル攻撃はできなかった。アオシマ隊員の額には汗が浮かび、必死の形相だった。横のモロボシ隊長が通信した。

「アカイシ、ゲン。地上から攻撃!」

地上にはマックロディーが到着していた。

「了解。」アカイシ隊員が通信を返して、ゲンに言った。

「行くぞ、ゲン。マックロディーで攻撃だ!」

ゲンはマックロディーのレーザーの照準を赤い怪獣に合わせた。

「発射!」レーザーが赤い怪獣に命中した。しかし2頭の怪獣は相変わらず、1号機を追い回していた。

「あいつ、俺たちを無視しているのか。かまわないからどんどん撃て!」アカイシ隊員がゲンに言った。マックロディーの攻撃は続くが、赤い怪獣のダメージは大きくなかった。

攻撃を集中されている1号機は地上すれすれを飛んで怪獣の火炎攻撃から逃れた。モロボシ隊長は再び、あの少年の姿を見た。今度は走っており、やがて建物の陰に消えていった。

1号機が再び上昇すると、2頭の怪獣の姿は消えていた。

「アカイシ、怪獣はどうした?」モロボシ隊長が通信した。

「消えました。急に2頭ともです。なぜか、わかりません。」アカイシ隊員は通信を返した。横のゲンも不思議そうに辺りを見渡していた。

 

隊員たちは街へ降りて状況を調査した。しかし怪獣について何一つ手掛かりを得られなかった。調査データを持ち帰って分析することにした。モロボシ隊長は1号機から見えた不思議な少年を探してみたが、どうしても発見できなかった。

ゲンも調査を手伝っていたが、ゲンの優れた視覚や聴力でも何もつかめなかった。ふと遠くに目をやると、兄弟と思われる2人の幼い男の子が見えた。やや年長の子が小さい子の手を引いて歩いていた。親と離れてしまったのかもしれない。

「お父さんやお母さんとはぐれてしまったのかい。」近寄ってゲンが聞いた。

「うん。でもあっちにいるようだから行ってみるんだ。」

2人で大丈夫かい。」

「兄ちゃんと一緒だから平気だい。」

小さな2人は手をつないで歩いていった。

(弟はどうしているかなあ。L77星から脱出したと思うけど。)

それを見てゲンはL77星にいた弟のことを思い出していた。

「おい、ゲン。引き上げるぞ。」遠くでアカイシ隊員が言った。

はっとしたゲンは返事をして走っていった。

 

隊長室でモロボシ隊長がゲンを待っていた。部屋に入るとゲンが聞いた。

「隊長、どうしたんですか。」

「怪獣のことを思い出した。リットとガロだ。兄弟怪獣ともいう。」モロボシ隊長が言った。

「どんな力をもっているのですか。」

2頭そろうとかなり強い。しかもカンマ星人がいれば、とんでもないことになる。」

「どういうことですか。」

「怪獣リットとガロの2頭はかなり強力だ。しかもこの2頭をカンマ星人がコントロールして同時に操ると、隙のない連携攻撃を次々と繰り出してくる。非常に危険な奴らだ。ウルトラ兄弟でもかなわない。」

「カンマ星人もいるってことですか。」

「恐らくそうだ。。」

「どうやって戦えばいいんですか。」

「それはわからん。しかしカンマ星人をまず抑えなければならない。それで怪獣のいる現場で、ちょっと気になる少年を2回見た。」

「少年?」

「そうだ。身動きもせず、じっと怪獣の方を見ていた。2回目は走って建物の陰に消えた。すると怪獣が消えた。もしかすると奴が星人かもしれない。」

「そいつを捕まえましょう。」

「そこでだ。次回は私とおまえで、地上で星人を捕まえる。いいな。」

「はい。」

 

青い怪獣リットがまた街に現れた。マックホーク1号と2号が出撃したが、モロボシ隊長とゲンはそれには乗っていなかった。マックロディーで街に直接来ていた。

「隊長はどういうつもりなんですかね。」アオシマ隊員が言った。

「怪獣がいるときに直接地上から見てみるそうだ。」クロダチーフが言った。

「それならデータ収集の得意なカジタを連れて行けばいいのに。なぜゲンなのかな。」

「何か考えがあるんだろう。それよりそろそろ怪獣が見えるぞ。」

真下の街で、1頭だけ青い怪獣が暴れていた。

「全機、攻撃!」クロダチーフの号令の下、マックホークからの攻撃が始まった。

 

地上では避難する人々をかき分けて、モロボシ隊長とゲンが星人を探していた。

2人で手分けするぞ。おまえは右手を頼む。怪獣をじっと見つめている少年がいたら調べるんだ。」モロボシ隊長が言った。

ゲンはうなずいて探しに行った。

しばらくするとモロボシ隊長は遠くにあの少年を見つけた。少し距離があったため、はっきりとはわからなかったが、師尾氏隊長には異星人であるように感じた。急いで追いかけようとしたが、逃げる人の波でなかなか近づけなかった。

ゲンは周囲を見渡しながら探していた。すると急に近くのビルが光って崩れてきた。あわてて避けて上を見ると赤い怪獣ガロが出現していた。

「もう1頭でてきたか。」

ガロはいきなり飛んでいる2機のマックホークに向けて火炎を吐いた。

「あ、危ない。」ゲンが叫んだ。

リットへの攻撃に気を取られていたため、ガロの出現に気づくのが遅れたようだった。2機とも火炎をあびて不時着していった。ガロはそれを見てさらに暴れて周りの建物を破壊し始めた。

まだ避難を終えておらず、多くの人たちに危険が迫っていた。

(隊長、ガロが出現しました。まだ避難していない人が大勢います。変身して食い止めます。)テレパシーでモロボシ隊長に伝えた。

(十分、注意しろ。こちらはあの少年を見つけて追跡している。できるだけ2頭に連携されないようにするんだ。)ゲンにモロボシ隊長の声が聞こえた。

ゲンはレオに変身した。ガロと組み合うと人々のいるビルから離すように押していった。ガロは咆哮しながらレオを押し戻そうとした。そこをレオはガロを人がいない方向に投げ飛ばした。さらに攻撃しようとしたところに、後ろからリットが近づいてきた。今度はリットに向かって行った。キックやパンチで押していく。また背後からはガロが組み付いてきた。自由が利かなくなったところをリットがパンチを繰り出した。はやくもレオはピンチになっていた。

やっと抜け出して少し距離をとった。リットに向けてレオキックを放ってみたが、ガロが横から体当たりをしてきて不発に終わった。すぐに起き上がりエネルギーブレスレッドを光らせてハンドビームを撃った。しかし2頭でバリアを張っているようで効果がなかった。今度はエネルギー光球を放ったがはね返された。2頭が火炎放射で次々に攻撃してきた。連携した攻撃で避けるのがやっとだった。

モロボシ隊長は建物の屋根にいた少年をみつけて、やっと近くまで来ることができた。やはり異星人のようだった。相変わらず少年は怪獣を見ていた。

「星人だな。カンマ星人だな!」モロボシ隊長は叫んでマックガンを抜いて構えた。

「いいえ、僕はカンマ星人ではありません。」

「なにっ!でも異星人だろう。嘘を言うな。」少しずつ近づいていった。

「嘘ではありません。カンマ星人はあそこにいます。」その少年は建物の下を指さした。その方向には黒い服を着た人物がいた。

「カンマ星人を見つけたところです。前回は逃げられましたから。」そう言うと少年は屋根から飛び降りた。黒い服の人物は逃げようとしたが、少年の攻撃で倒された。しかし懐から銃を抜くと少年に向けて撃ってきた。少年は身を隠して逃れた。モロボシ隊長も降りてきて、マックガンでその人物を撃った。ばったりと倒れると動かなくなった。

モロボシ隊長がその黒い服の人物を確認するとカンマ星人だった。

「君は一体何者なんだ?」モロボシ隊長は聞いた。

「あなたはウルトラセブンですね。僕はアストラです。獅子座L77星人です。」

「じゃあ、レオの仲間なのか?」

「僕はレオの弟です。マグマ星人から逃げてきて兄に会うためにここに来ました。」

「そうだったのか。」

「兄がピンチです。助けに行きます。」

そう言うとアストラは赤い巨人に変身した。

 

カンマ星人がいなくなったとはいえ、2頭の怪獣は強力だった。ダメージのためカラータイマーが点滅し始めた。前から後ろからとレオを攻め立てていた。そこにアストラが助けに入った。リットとガロからレオを引き離した。レオは一瞬驚いたが、アストラと息を合わせて構えた。そして2頭の怪獣に向かって行った。

22の戦いであったが、レオとアストラが圧倒していった。

(二人のエネルギーを合わせて、エネルギーブレスレッドからの合体光線で倒せ。ウルトラクラッシャーという技だ。)モロボシ隊長がテレパシーで伝えた。

レオの右手とアストラの左手を結んだ。みるみるエネルギーブレスレッドにエネルギーがたまっていった。それを2頭の怪獣に向けて撃った。強力な光線となって怪獣のバリアをも突き通した。光線が2頭の怪獣を直撃して爆発した。2頭ともゆっくり倒れて動かなくなった。

 

変身を解くと、2人の兄弟は抱き合った。

「よく無事だったなあ。」

「兄さんこそ。」

「ここにずっといるんだよな。」

「いや。兄さんにも会えてうれしいけど、他のL77星人のことも気にかかっているんだ。まだ他の星に仲間がいるかもしれない。探しに行ってみようと思う。」

「じゃあ、またお別れか。」

「いや、また来るよ。」

その様子をモロボシ隊長は笑顔で見ていた。