新ウルトラマンレオ

別世界のウルトラマンレオの物語

第10話 マグマ星人の逆襲

10話 マグマ星人の逆襲

 

東京湾が嵐で荒れていた。航行する船を、突如現れた竜巻が襲って粉砕した。少しずつ陸に近づいてきていた。その姿は倒したはずの怪獣ギラスだった。しかし前のギラスとは違って体の3分の1ほどが金属の機械に置き換えられていた。マグマ星人によってサイボーグ怪獣として改造され、蘇ったのだった。咆哮しながら海岸に近づいていた。空には雲が広がり、風がうなっていた。

 

「マックホーク出動。」モロボシ隊長の命令で隊員たちが出撃した。その激しい竜巻は、以前戦った怪獣ギラスのものそのもの、いやそれ以上だった。ゲンは再び現れた強敵に緊張していた。

(どうしてまた現れたんだ。倒したはずなのに。マグマ星人もまた出てくるのか。)

ゲンは不安でいっぱいだった。

マックホーク1号と2号と3号が現場に到着した。怪獣はすでに海岸まで来ており、激しい衝撃波であたりを破壊していた。

「攻撃。」モロボシ隊長の命令とともに、1号機と2号機がミサイル攻撃を始めた。しかし竜巻バリアを身にまとったため、ミサイル攻撃の効果がなかった。怪獣は咆哮した。また角が光って衝撃波をマックホークに放った。3機のマックホークは急旋回でそれを避けた。

「上空から攻撃をかける。2号機も続け。3号機を援護する。」クロダチーフが通信した。

1号機と2号機は一旦、上昇して急降下で攻撃した。ミサイルが叩き込まれたが、怪獣はやはりびくともしなかった。

その間に、3号機のモロボシ隊長は真上からの角を狙ってのレーザー攻撃を行った。しかしレーザーはなぜか角まで到達しなかった。

「隊長、1号機で角を攻撃します。」続いてアオシマ隊員の1号機がレーザー攻撃を行ったが、効果がなかった。モロボシ隊長は思った。

(おかしい。確かに角へ攻撃しているがうまくいかない。なぜだ?)

ゲンは怪獣を見ながら感じていた。

(前に戦った時より竜巻の様子が変わっている。強化されているのか?)

「前の時と竜巻バリアが変わっていると思います。上空も守られているのかもしれません。」2号機のゲンが通信した。

「そのようです。真上もガードされているようです。」1号機で計器を見ているカジタ隊員が言った。あの竜巻バリアを打ち破らない限り、怪獣への攻撃は効果がないことは確かだった。

「隊長、2号機には大型レーザーが積まれています。これなら強化された竜巻バリアを上空から撃ち破れるかもしれません。」2号機のアカイシ隊員がモロボシ隊長に通信した。

「いや、危険だ。大型レーザーを出しての竜巻の真上からでは飛行は安定しない。」モロボシ隊長が返した。

「いえ、ぜひやらせてください。これしか方法はないと思います。」アカイシ隊員は通信すると

そのまま大型レーザーを出してエネルギーを注入しながら、上昇していった。

「仕方がない。1号機、2号機を援護しろ。」モロボシ隊長は通信した。

「アカイシ、大丈夫なのか。1号機でも安定しなかったんだ。まして2号機では・・・」アオシマ隊員はそう言いながら、怪獣にミサイル攻撃をしていった。

「げん、行くぞ!」アカイシ隊員は竜巻の真上から2号機を飛び込みさせた。そして

「大型レーザー発射!」アカイシ隊員はそう言って発射ボタンを押したが、発射前に周囲の渦巻く風に2号機はバランスを崩していた。大型レーザーは狙いを大きく外した。2号機は竜巻に巻き込まれた。強くかかる重力にアカイシ隊員は気を失った。ゲンは強い重力がかかる中をレオに変身すると、アカイシ隊員とともに2号機を脱出した。

 

レオは地上に下りると、アカイシ隊員をゆっくり地面に下ろした。そして怪獣の方に向かっていくと、その前で慎重に構えた。隙をうかがって、まだ突進して行かなかった。サイボーグとなった怪獣の金属の体が不気味に光っていた。レオは隙を見て上空から怪獣の角を破壊しようと考えた。

1号機が怪獣にミサイル攻撃をかけた。怪獣は衝撃波で1号機を攻撃した。目を離した隙に、レオは上空に飛び上がった。そして角にめがけて上空からキックを放った。決まったと思った瞬間、新たな真上の竜巻バリアに阻まれた。レオははね飛ばされていた。

(だめだ!前と違う。)レオは思った。しかしもう一度飛び上がってキックを放った。今度もはね飛ばされた。

倒れたレオを怪獣が衝撃波で攻撃した。レオは立ち上がることができず、ダメージのためカラータイマーが点滅し始めた。

(今のレオでは無理だ。どうにかして早く怪獣を追い払わないと。またマグマ星人が出てきたら厄介だ。)モロボシ隊長は思った。他の隊員に気づかれないように3号機を自動操縦にすると、両腕をクロスさせてサイコキネシスを使った。

怪獣は竜巻バリアをまとっていたが、そのままサイコキネシスの力で動きを封じられていった。怪獣はその力に驚いたようで、すぐに海に戻っていった。3号機で衰弱したモロボシ隊長はほっと息をついていた。

 

ゲンはモロボシ隊長に訓練室に連れていかれた。天井に吊り輪のついた回転台がつってあった。何かの特訓をするつもりのようだった。

「今のキックでは竜巻バリアにはね返される。もっと巨力なスピンをかけなければ効果がない。」モロボシ隊長が言った。

「飛び上がってその吊り輪をつかめ。回転するからその感覚を身につけるんだ。そしてそのスピンしたまま下のクッションにキックしろ。」

「わかりました。」

回転台の回転は激しくて体がついていかなかった。何度も振り落とされた。次第にゲンは傷ついていくが、上達していく様子はなかった。モロボシ隊長は腕組みをしてじっと見ていた。

(やはり無理か。今のキックでも十分に並外れた力があるのに。これ以上のパワーアップは無理か。)と思った。

「ゲン、やめよう。別の方法を考える。」モロボシ隊長はふらふらになったゲンを助け起こした。

「いいえ。やらせてください。なんとかこれをものにして、キックを完成させます。」ゲンはあきらめなかった。以前の対ツルク星人の特訓で十分に力が付いたと思っていたが、今回の戦いでまだ自分に足りないものがあることを大いに感じていたからだった。ゲンはまた何度も挑戦した。しかしやはり振り落とされていた。

モロボシ隊長はゲンを助け起こした。そして自ら吊り輪に飛びついた。そして強力に自ら回転してスピンをかけると、手を放してそのままクッションにキックした。厚いクッションははじけて飛んで行った。ゲンはそれを見て驚いた。

モロボシ隊長は、

「ゲン、今のおまえにはまだ無理だ。このキックは簡単にできるものではない。別の方法を考えるからおまえは体を休ませろ。」

と言って訓練室を出て行った。

ゲンはどうしてもあきらめきれなった。モロボシ隊長にはやめるように言われたが、ひそかに徹夜で特訓を続けることにした。モロボシ隊長の回転キックをイメージして特訓を重ねた。

 

翌日、怪獣が海岸に現れた。今回は1号機と3号機が発進した。ゲンはモロボシ隊長とともにマックロディーで現場に向かった。

「チーフ。1号機と3号機の指揮を執ってくれ。ミサイル攻撃でなんとか上陸を阻止するのだ。こちらは上陸に備える。」と指示を与えていた。

「怪獣が見えました。攻撃します。」クロダチーフから通信が入った。

1号機と3号機は怪獣の周りを飛び回って、ミサイル攻撃を続けた。怪獣は衝撃波で反撃していた。

マックロディーを降りたモロボシ隊長は海岸まで行って怪獣に接近した。ゲンも後ろからついてきていた。

「ゲン、サイコキネシスを使う。しかし私の全力を使ってもあの竜巻を止められるかどうか・・・。もし駄目でも変身するな。今のおまえでは勝てない。今は駄目でも、必ずMACが対抗策を生み出すはずだ。いいな!」モロボシ隊長はそう言うとさらに前に出て、両腕をクロスさせた。念を込めると怪獣の動きが鈍くなった。竜巻バリアを封じようとモロボシ隊長は全力を込めた。

怪獣の竜巻バリアは少しずつ薄くなっていくようだった。上空から1号機がミサイル攻撃を盛んにかけた。竜巻バリアはもう少しで破られるようにも見えた。

しかしそこが限界だった。消耗したモロボシ隊長のサイコキネシスの力は弱くなっていった。そのため竜巻バリアは元通り勢いを増していた。怪獣は咆哮すると、その力の方向に向かって衝撃波を何発も放った。

モロボシ隊長に周りで衝撃波がさく裂した。

「危ない。」ゲンはモロボシ隊長の前に出た。

(このままでは2人とも吹っ飛ばされる。)ゲンはモロボシ隊長にあれほど言われていたのにもかかわらず、レオに変身した。衝撃波はレオに当たったが、何とかこらえた。

「レオ、無理だ。やめるんだ!」消耗したモロボシ隊長は叫んだ。しかしそれでもレオは怪獣に向かって行った。

竜巻をまとったまま怪獣がさらに衝撃波をレオにあびせてきた。レオは体を回転させてそれを避けた。そしてエネルギーブレスレッドを光らせてハンドビームを何発も撃った。しかし竜巻にはね返されて効果はなかった。

その時、マグマ星人が雲の間から降りてきた。前からは怪獣、後ろからはマグマ星人がサーベルを振り回しながら迫ってきていた。レオはエネルギーソードを出した。マグマ星人に向かって行こうとしたところを後ろから怪獣の衝撃波を食らった。レオは前に崩れ落ちた。そこをマグマ星人がサーベルで斬りつけた。

レオは後ろに倒れた。あまりの強いダメージでカラータイマーが点滅し始めた。

「レオ、しっかりするんだ。」モロボシ隊長が叫んだ。

マグマ星人はレオを上から串刺しにしようとしてサーベルを引いた。そしてレオに向かって突いた。レオは間一髪それを避けた。マグマ星人はサーベルを引き抜くと再び突いた。これもレオは避けた。そしてマグマ星人の腕をつかむと投げ飛ばした。そこに怪獣が向かってきた。

「レオ、こうなったら決めるんだ。お前のキックを。レオキックを!」モロボシ隊長が叫んだ。

怪獣が衝撃波を発射した瞬間、レオは上空に飛び上がった。そして体をひねると急激にスピンをかけた。その早い回転の摩擦で、レオの全身は火に包まれたように真っ赤になった。そしてそれがそのまま怪獣に向かっていった。妨害する真上の竜巻バリアをも貫いて、怪獣の頭を角とともに粉砕した。

怪獣は頭がなくなったがサイボーグであるため、まだ動いていた。そしてなおもレオに向かってきた。レオはエネルギーブレスレッドを光らせてエネルギー光球を放った。怪獣は粉砕された。

それを見て、マグマ星人はサーベルを振り上げて、レオに向かってきた。今回は怒りに任せて本気でレオを倒しに来たようだった。サーベルを振り回してレオを打ちつけた。レオはエネルギーソードで防いでいたが、強烈なマグマ星人の攻撃にレオは押されていた。

しかしレオとは逃げなかった。マグマ星人がサーベルを振り下ろした時、レオはそれを避けて上空に飛び上がった。そしてまたスピンの効いたキックをマグマ星人に放った。真っ赤になったレオのキックをマグマ星人はサーベルで受け止めようとしたが、それに耐えきれずサーベルは真二つに折れた。

マグマ星人は折れたサーベルを見ると戦意を失って、上空に逃げた。レオ追おうと思ったが、エネルギーが残り少ないのでただ見ているしかなかった。それを見てモロボシ隊長はテレパシーでレオに伝えた。

((よくやった。このキックはおまえの努力が生み出した最高の技だ。これほどの威力のキックはおまえにしかできないだろう。名付けてレオキックだ。これはおまえの大切な武器になる。))

レオはうなずいていた。