第12話 ミラクルマン!再び
正体不明の宇宙船が宇宙から飛来した。地球の警戒網を破り地上近くまで降りてきていた。マックホーク1号が追っていた。
「なかなか追いつけんな。」アカイシ隊員が言った。
「ついていくのがやっとです。あっ、危ない。」ゲンはそう言うと操縦桿を操作した。
宇宙船から光線が発射された。それを1号機は間一髪避けた。
「撃ってきやがったな。応戦するぞ。」アカイシ隊員はビームを撃った。
追いつ追われつの空中戦で、何とか宇宙船を撃破した。宇宙船は山に落ちていって地上で爆発したが、煙が晴れると怪獣ギランが現れた。
「怪獣だ。ミサイル準備!」アカイシ隊員が言った。
「ちょっと待ってください。どうも鉱山のようです。人がいるかもしれません。」ゲンが地上を見て言った。
「そうか。基地に連絡して判断を仰ごう。」そう言うとアカイシ隊員は基地に連絡した。
その間に怪獣は穴を掘って地下に逃げて行った。
地下の坑道内は地震に見舞われていた。作業員が地面が震える中でパニックになっていた。
「地震だ。崩れるぞ。」
「どうしよう。逃げないと。」作業員は口々に叫び、あたふたしていた。
その時、大きなしっかりした声が坑道内に響いた
「みんな、落ち着け。地震が収まるまで重機の下で頭を伏せるんだ。」それは現場監督の男だった。非常灯に照らされたその顔はモロボシ隊長にそっくりだった。
1号機は上空で旋回していた。
「基地から通信です。マックホーク4号にマックモールを積んでくるようです。それまで鉱山の情報を集めましょう。近くに着陸します。」ゲンが言った。
「わかった。マックモールで地下を捜索するんだな。」アカイシ隊員が言った。
坑道内の地震はしばらくしておさまった。作業員たちがゆっくり頭を上げた。ふと出口の方を見て1人の作業員が叫んだ。
「出口がふさがれた。閉じこまれてしまった。」
「どうしよう。もうだめだ。」作業員の間に絶望的な空気が流れていた。しかしそれを打ち消すように励ます声が響いた。またあのモロボシ隊長に似た現場監督の男だった。
「みんな元気をだせ。大丈夫だ。きっと助けが来る。それよりみんなケガはないか。倒れている者はいないか。周りを見てくれ。」
その声に答えるように、
「俺は大丈夫だ。」「足をやられて歩けない。」いろんな方向から声が聞こえた。
「じゃあ、あかりのところに集まってくれ。歩ける者は動けない者を手伝ってやってくれ。」
6人の男が明かりに集まった。
「これだけか。」
「あとのものはわからない。それより監督、どうするのですか。」
「とりあえず、動ける者だけでいいから、他に出口がないか調べるんだ。」
マックホーク4号が到着した。ゲンとアカイシ隊員が鉱山の事務所でクロダチーフたちを出迎えた。
「状況はどうなっている?」クロダチーフが聞いた。
「怪獣は地下に潜りました。そのため坑道があちこちつぶれてしまったようです。中の作業員は行方不明です。連絡が取れません。」
「とりあえず、鉱山の内部の詳しい情報を集めよう。」クロダチーフはアオシマ隊員とカジタ隊員を連れて事務所に入った。
「連絡はいまだにとれません。もしかしたら・・・」鉱山の職員は悲観的だった。
「中には何人いますか。」クロダチーフが言った。
「6人と思います。他の者は何とか自力で脱出しました。6人だけ帰ってきていないのです。」
「彼らがいる可能性があるのはどの辺ですか。」
「深い場所での作業員ばかりでしたので、たぶんこの辺だと思います。」職員は坑道の一部を指さした。
「作業をよく知っている現場監督は?」
「それが帰ってきていない一人なのです。彼は何事も先頭に立つ男だったので。」そう言ったとき、突然、その職員は昔のことを思い出したようだった。
「ミラクルマン?」クロダチーフが聞き返した。
「はい。若いころに山から落ちたはずなのに、けろりとして帰ってきて、みんなからそう呼ばれていました。一度落盤事故に巻き込まれたのですが、もう駄目だと思ったところを救出されたこともあるのです。強い運の彼がいたら、何とかなるかも。」職員は言った。
「そうですね。」そう答えたものの楽観的に考えることはできなかった。
「鉱山の地下には怪獣はいるし、中の作業員の生死も不明。どうしたものか。」クロダチーフがつぶやいた。
「とりあえず、探知器で調べてみます。」カジタ隊員が言った。
「それでは、俺とゲンとでマックモールを準備します。いざというときはすぐ発進できるように。」アカイシ隊員が言った。
「では頼む。」クロダチーフが言った。
坑道内では作業員が座り込んでいた。出口は見つからないし、外と連絡する手段もなかった。なんだか空気まで薄くなった気がしていて息苦しかった。
「そうか。だめか。でもまだ希望があるかもしれない。」監督は言った。
「監督、どうするのですか。」
「たぶん、このパイプは地上まで続いている。叩いていれば気づいてくれるかもしれない。」
「本当に、気づいてくれるのでしょうか。」
「大丈夫だ。俺はミラクルマンだぞ。」監督は言った。そのとき作業員の顔に希望の灯が見えた。
「そうだ。ここにミラクルマンがいるんだ。俺たちも助かるはずだ。」
「よし、じゃあ。叩くからな。みんなで変わりながら叩くんだ。リズムはこうだ。」
監督は以前の経験からモールス信号を覚えていた。鉄のパイプを叩いていった。
外にいるゲンに繰り返しているリズム的な金属音が聞こえた。超人的な聴力を持つゲンはその音が発する場所に近づいた。
「ここだ。」地上から突き出た鉄のパイプから音がしていた。
「カジタさん、ちょっと。ここから音がします。」カジタ隊員を呼んだ。
「何も聞こえないが。」
「機器で測ってください。」
カジタ隊員は半信半疑で機器のマイクを近づけた。
「驚いたな。よくわかったな。SOSだ。中の作業員のものか。」
「なんとかこのパイプから、通信しましょう。」
坑道内では作業員がぐったりしていた。監督が、
「がんばれ、みんながんばれ。もうすぐ助けが来てくれる。」と励ましていた。
ゆっくりだが、鉄パイプを何とか叩き続けていた。そのとき鉄パイプから音がした。叩くのをやめると、鉄パイプに穴が開きファイバースコープの先が見えた。
「みんな、見てみろ。」監督がさけんだ。
作業員が集まってきた。
「これで助かるぞ。」
「作業員が見つかりました。場所も特定。」カジタ隊員が言った。
「私も行く。マックモール出動!カジタはここに残って引き続き怪獣の捜索をしてくれ。」クロダチーフが言った。
マックモールは大きなドリルを回しながら穴を掘り始めた。土砂がはげしく吹き飛ばしながら地中に潜っていった。
「作業員がいる地点までは500メートル。」アカイシ隊員が言った。
「坑道があるので回り道して、少し離れた場所に着ける。」クロダチーフが言った。
やや広い空間に出た。アカイシ隊員が機器をみながら先頭に立って歩いていた。岩の壁を指さして、
「チーフ、ここです。」
「よし、アカイシ、ゲン。やってくれ。」クロダチーフが指示した。
アカイシ隊員とゲンが掘削機で掘っていった。やがて岩が崩れた。
中をのぞくと、6人の男が隊員を見て叫んだ。
「助かったぞ。やったー。」
「これから、皆さんを誘導します。責任者の方はいらっしゃいますか。」クロダチーフが言った。現場監督が近づいてきた。クロダチーフに顔を見せて行った。
「私です。」
その顔を見てクロダチーフは驚いて思わず言った。
「隊長!」
「いや、現場監督の薩摩次郎です。」監督は言った。
「そ、そうでしたね。ちょっと離れていますが、歩いて移動します。歩けない方は隊員がサポートします。」クロダチーフはまだ動揺しながら言った。
作業員が抱えられて移動していった。監督は後ろの方から作業員を励ましながら歩いて行った。
「もう少しだ。しっかりしろ。」
その様子をみて、アオシマ隊員がアカイシ隊員に言った。
「顔を見て驚いたが、隊長にそっくりだな。」
「ああ、あのリーダーシップといい、部下を思いやる態度といい、すべて同じだな。」アカイシ隊員も同意した。
そのとき急に地面が震えて、横の岩が崩れてぽっかりと穴が開いた。そこに怪獣が顔を出した。隊員や作業員たちの姿を見てこちらに向かってきた。
「怪獣だ!」作業員は大声を上げた。
「みんな、マックモールに急ぐぞ。あと少しだ。」クロダチーフが言った。
しかしけがをしている作業員を連れているので、あまり早く進めなかった。怪獣が間近まで迫ってきていた。先頭を歩いているクロダチーフがマックガンを抜いた。その時、
「俺が怪獣をひきつける。早くみんなを連れて行ってくれ。」監督はそう言うと怪獣の方に走って行った。そして持っていた発煙筒を点火させた。それを振り回しながら来た方向とは逆の方向に走り始めた。
「おーい。こっちだ。こっち。ここもできてみろ。」大声で叫んでいた。
怪獣は向きを変えて監督の方へ進んで行った。
「あっ。危ない!」ゲンが叫んだ。
「私は監督を助けに行く。みんなはこのまま真っ直ぐマックモールへ向かってくれ。すぐ発進するんだ。私は彼とともに坑道を抜けて地上に出る。」クロダチーフが言った。
「待ってください。僕が行きます。チーフはこのまま行ってください。」最後尾にいたゲンはそう言うと走って行った。
「あ、ゲン、待て!」クロダチーフは止めたがゲンは行ってしまった。
「仕方がない。みんな行くぞ。」
隊員と作業員はマックモールに向かっていった。
監督は怪獣から逃げて行ったが、行き止まりになって追い詰められていた。怪獣が前足を上げて踏みつぶそうとした。監督はかろうじて逃れたが、落ちてきた岩が当たって失神した。そこへゲンが後ろからマックガンを打ちながら走ってきた。しかし怪獣の外皮が固いのか、効果がなかった。今度こそ監督を踏みつぶそうとしてまた前足を上げた。
(危ない!このままでは踏みつぶされる。)ゲンはレオに変身した。
レオは怪獣に体当たりして跳ね飛ばした。そして監督を手に持つと、地上めがけて地下を進んで行った。
地上でレオは監督を降ろした。しかし安心する暇はなかった。後ろから怪獣が追ってきていた。レオに体当たりを食らわせた。レオは倒れてしまった。なおも怪獣が突進してきた。それを転がって避けると、エネルギーブレスレッドを光らせてハンドビームを撃った。怪獣に当たるが外皮が固いので効果がない。怪獣は角を光らせて電撃をレオに食らわせた。レオはしびれて動けなくなった。そこを怪獣が突進してきてレオを跳ね飛ばした。ダメージのためカラータイマーが点滅し始めた。もう1回、怪獣が突進しようとしたところに上からレーザー攻撃を角に受けた。不意を突かれた怪獣は咆哮して角をおさえた。
マックホーク3号が上空に来て攻撃したのだ。宇宙ステーションの査察のため、留守にしていたモロボシ隊長が駆けつけたのだった。
(レオ、今だ。怪獣を倒すんだ。)モロボシ隊長はテレパシーでレオに伝えた。
怪獣はレオから目をそらせていた。レオは飛び上がり渾身のレオキックを放った。怪獣はドーンと倒れてしまった。そこをレオは少し距離をとるとエネルギー光球を撃って怪獣を粉砕した。
意識を取り戻して帰ってきた監督を作業員が取り囲んでいた。監督はうれしそうに作業員たちと抱き合って喜んでいた。それを遠くで見ていたモロボシ隊長は思った。
(また1つ、あなたに教えられた。地球人の強さと勇気を。)
そばに来たゲンがモロボシ隊長に言った。
「あの薩摩次郎という現場監督、隊長にそっくりでしたよ。」
「いいや、私では到底かなわない。本当に強い人だ。」
モロボシ隊長はそう言った。