新ウルトラマンレオ

別世界のウルトラマンレオの物語

第9話 誘拐された参謀

マックカーが闇夜の中、郊外の道を走っていた。あたりに明かりは見えなかった。

「すっかり遅くなってしまったな。すまんな。こんな時間に。」

「いいえ、かまいません。」運転席のゲンが後ろの人物に答えた。

「もう、慣れたかね。確か君は入隊して半年ぐらいだったね。」

「はい。まだ毎日鍛えられています。」

「隊長は厳しいからな。ハッハッハ。」

その時、ゲンは上空の飛行物体の音を耳にした。まだゲンだけに聞こえる程度だった。

「ちょっと、飛ばします。」ゲンはアクセルを強く踏んだ。

「一体、どうした。」

「何か上から追ってきているようです。」

飛行物体の音は大きくなってきた。接近してきているようだった。

「本部に連絡します。」通信機をとったがすでに妨害電波が張られていて、連絡できなかった。飛行物体はマックカーの真上に来ると光をあびせた。ショック光線で次第に意識が薄れてきた。ゲンはかろうじてマックカーを停めた。ドアを開けて飛び出そうとするがもう体は動かなかった。後ろの人物はぐったりして意識を失っていた。

「キリヤマ参謀・・・」そう言うとゲンも意識を失った。

 

司令部では大騒ぎになっていた。いつまでたってもキリヤマ参謀の乗ったマックカーが行方不明になったからだった。何度も呼び出したが応答はなかった。

「一体、どうしたのだろう。」モニターの前のカジタ隊員がつぶやいた。そこへモロボシ隊長が司令室に慌てて入ってきた。

「キリヤマ参謀が行方不明と聞いたが。」

「はい、そうです。今、クロダチーフとアオシマ隊員がマックカーで捜索しています。」

「運転手は誰だったんだ?」

「ゲンです。通信機で呼びかけても連絡がつきません。」

そこへクロダチーフから連絡が入った。

「マックカーを発見しました。中には誰も載っていません。車にも損傷なく事故ではないようです。」

「引き続きその付近を捜索してくれ。」通信を終わるとモロボシ隊長はカジタ隊員に言った。

「レーダーや他に異常は見られなかったか?もう一度記録を見直してくれ。私はアカイシとマックホークで空から捜索に行く。」

 

ゲンが目を覚ました。何もない狭い部屋に閉じ込められていた。近くにはキリヤマ参謀が横になっていた。抱き起こして肩を揺さぶった。

「参謀、しっかりしてください。」

「ううん。」

キリヤマ参謀は意識を取り戻した。周りの状況に戸惑っているようだった。

「一体、どうなった?」

「どうも、星人に拉致されたようです。」

ゲンは通信を試みたがやはり通じなかった。その部屋には出入口がなく、脱出は難しそうだった。キリヤマ参謀もいろいろと試みていたが同じようだった。

(だめだ。出口が見つからない。誘拐した目的は何だ。このままではらちがあかない。)

ゲンはマックガンで壁を撃ったが、弾ははね返された。

その時、天井で何かが動いた。監視カメラかもしれなかった。キリヤマ参謀は大きな声で言った。

「お前たちは何者だ!一体、何が目的だ。言いたいことがあるなら早く言え。私を誘拐しても何にもならないぞ。」

すると不気味な声があたりに響いた。

「我々はべベロ星人だ。キリヤマ参謀だな。地球防衛軍MACの機密をすべて教えてもらうぞ。地球の侵略のために。」

「無駄だ!私は何も言わんぞ!」

キリヤマ参謀は叫んだ。

 

キリヤマ参謀の捜索は大掛かりで行われたが、行方はようとして知れなかった。モロボシ隊長は両手を組んでじっと考え込んでいた。

(星人に誘拐されたのに違いない。早く救出しなければ。手がかりでもあればいいのだが。頼みはゲンが一緒にいるということだ。)と思った。キリヤマ参謀はモロボシ隊長にとって特別な存在であった。

 

以前、モロボシ隊長は、MACの前身部隊であるウルトラ警備隊の、当時のキリヤマ隊長の下で任務に就いていた。しかしどうしてもM78星雲に戻らなければならず、地球を離れたのだった。それから約10年して地球の守りのために戻ってきたのだった。

その頃は凶悪な星人との戦いにMACは疲弊していた。防衛組織は出来上がってきていたが、その運用に問題が山積していた。何より優秀な人材が足りていなかった。MAC担当のキリヤマ参謀は、

(優秀な隊員はもちろんだが、優秀な指揮官も必要だ。このままの戦いを続けていけば、やがてMACは壊滅して地球は防衛できなくなる。)と考えていた。

あるとき、突然、本部の近くに怪獣が出現してマックホークが出撃することがあった。その現場の近くにキリヤマ参謀は居合わせることができた。車で乗りつけて、久しぶりの現場に緊張しながら戦いを見ていた。

3機のマックホークは激しいミサイル攻撃を行うが、怪獣はびくともしない。1機、また1機と順々に攻撃を行うが効果が少なかった。怪獣は光線を放って反撃した。すると次々にマックホークに命中して墜落していった。最後に1号機に命中した、乗っていたのはアマギ隊長だったが、脱出せずそのまま怪獣に突っ込んでいった。

「よせ、ソガ、脱出しろ!」キリヤマ参謀は思わず叫んだ。しかし1号機は怪獣に衝突して粉々になった。

「ああっ。」キリヤマ参謀は思わず声が出た。怪獣は咆哮して暴れまわっているのを見て、絶望感が広がっていった。

(何てことだ。これでMACは終わりなのか。)

そう思った時、突然、怪獣の前に巨人が現れた。その見覚えがある姿は、まさしくウルトラセブンだった。

「セブン・・・」懐かしいその姿に目を見開いた。

セブンは怪獣と組み合って投げ飛ばした。そして馬なりになってパンチを打ち込んだ。怪獣は光線で防戦するがすべて避けられ、最後はウルトラアイスラッガー3つに分断されて倒された。

キリヤマ参謀は急いで近くに行った。セブンはゆっくりと変身を解いてモロボシダンの姿になった。最初に見た風来坊の姿だった。それを遠くからキリヤマ参謀は見つけた。

「ダーン!」キリヤマ参謀が手を振って叫んだ。ダンは人に見つかったと思って急いで逃げようとした。

「ダン、私だ。キリヤマだ。逃げないでくれ。」

ダンはキリヤマ参謀を認めると、立ち止まった。キリヤマ参謀は駆けていき、やっと追いついた。

「ダン、地球に戻っていたのか。」

「キリヤマさん。お久しぶりです。」

「また会えてうれしいぞ。まだずっと地球にいるんだな。」

「はい、私が戻ってきたのは、凶悪な星人に襲われている地球を陰ながら守るためです。」

ダンの目の輝きは変わっていなかった。キリヤマ参謀は直感した。彼ほどMACの隊長にふさわしい人物は他にいないと。

「今、地球は危機に見舞われている。この地球を守るにはMACにすぐれた指揮官が必要だ。」

キリヤマ参謀はダンを見ていた。ダンにはキリヤマ参謀の言っている意味がよくわからなかった。

「ダン。我々といっしょに戦ってくれ!MACの隊長として戦ってくれ!」

ダンは思いがけない話に戸惑っていた。

「それはできません。」

「どうしてだ!地球の平和のために力を貸してくれ。」

「私は異星人ですよ。地球人じゃないんです。私の正体を知れば反対されます。」ダンは振り絞るように言った。しかしキリヤマ参謀にとっては、目の前にいるダンは以前のダンと何ら変わらなかった。

「それは秘密にする。私にとっては、ダンはダンだ。君が異星人だろうと関係ない。ウルトラセブンだからでもない。ダンだからだ。私が知っているダンだから頼んでいるんだ。」キリヤマ参謀は必死だった。

「頼む、ダン。我々には、いや地球にはモロボシダンが必要なんだ。」

「キリヤマさん・・・」ダンはそれ以上言えなかった。

 

司令部にマックホーク2号から連絡が入った。

「司令部、こちら2号機。参謀たちが閉じ込められていると思われる建物を発見しました。位置を送ります。」アオシマ隊員からだった。モロボシ隊長はすぐさま、

「救出作戦を行う。1号機ですぐに出動!」

マックホーク1号が発進した。急スピードで現場に向かった。モロボシ隊長の顔に緊張が走っていた。

(無事に助け出さねば・・・)

やがて現場近くで着陸した。モロボシ隊長を先頭に、クロダチーフ、アカイシ隊員、カジタ隊員が走って建物に近づいていった。途中で星人が待ち受けて光線銃を撃ってきたが、すべてマックガンで倒した。建物にたどり着くと、4人は中に入っていった。

中央に計器盤がある机があり、カジタ隊員が調べながら操作して言った。

「隊長、参謀たちはここに監禁されています。ドアを開けます。」

 

キリヤマ参謀とゲンは急に部屋の一角が明るくなるのを感じた。ゲンはキリヤマ参謀の前に立ち、マックガンを構えた。その一角は出入り口に変わっていった。外に4人の人影が見えた。

「隊長!」ゲンが叫んでマックガンを下ろした。4人は駆け寄ってきた。

「参謀、ご無事でしたか。」モロボシ隊長が声をかけた。

「ダン、みんな。よく助けに来てくれた。私たちは無事だ。」キリヤマ参謀が答えた。

「ゲン、無事でよかった。心配させやがって。」アカイシ隊員がゲンに言った。

「みなさん、すいません。誘拐したのはべベロ星人です。地球の侵略のため、キリヤマ参謀から機密情報を手に入れようとしたようです。まだこの周囲に大勢いると思います。」

「そうか。みんなは気をつけてこの周囲を捜索してくれ。私は参謀を1号機までお連れする。ゲンも一緒だ。」

「隊長、僕も捜索に加わらせてください。体は大丈夫です。」

「よし、ゲンも捜索に加われ。チーフ、指揮を頼む。」モロボシ隊長言った。

 

モロボシ隊長とキリヤマ参謀は何とか1号機にたどり着いた。上空では2号機が軽快にため旋回していた。

「ダン。君はよくやってくれている。君の指揮でMACは大いに活躍して、地球は日々、守られている。君がいてくれてよかった。」キリヤマ参謀はしみじみ言った。

「私は自分のできるだけのことを精一杯しているだけです。あなたが私を信じてくれているからです。」モロボシ隊長は笑顔で答えた。

その時、上空で大きな音がした。宇宙船が突如、現れて光線で2号機を攻撃していた。それは2号機の後部に当たりよろよろと山の中に不時着していった。

「参謀、急いでください。星人の宇宙船のようです。1号機ですぐに離陸して安全なとこまで行きます。」

「よし。」隊長と参謀は急いで乗り込んだ。

1号機は急発進して上空に向かった。その後を宇宙船が追って行った。

 

4人の隊員が集落を捜索していると、あたりで電子音が聞こえた。あたりを見渡すと3つの建物が動き出していた。そして少しずつ上昇していった。

「動いているぞ!」

その建物の外壁が外れていった。べベロ星人の飛行物体であった。

「攻撃!」クロダチーフが叫んだ。4人がマックガンで攻撃した。

飛行物体はゆっくりと上昇してそれぞれが変形して上下に連なった。合体したロボットであった。マックガンははね返されていた。

ロボットは合体が終わると両腕を上げた。すると体から光線を発射した。隊員たちの近くに当たって大きな爆発が起こって、彼らは吹き飛ばされた。ゲンは急いで地面のくぼみに隠れると、レオに変身した。

ロボットは立ったままレオの方を向いていた。レオは構えて間合いを詰めていった。

 

一方、モロボシ隊長とキリヤマ参謀を載せたマックホーク1号が宇宙船に追われていた。光線が1号機をかすめていった。気が付くと宇宙船は2隻に増えていた。

後部席からキリヤマ参謀が言う。

「ダン、敵は2隻だ。このままでは危険だ。分離して戦おう。」

「参謀、大丈夫ですか。しばらく操縦桿を握っていないのに。」

「馬鹿にするな。腕は鈍ってないぞ。私はベータ号へ行く。」

そう言うと参謀は席を立って行った。後ろからは2隻の宇宙船が近づいてきていた。

「ベータ号分離。」掛け声ともにキリヤマ参謀を乗せたベータ号が離れていった。1号機は旋回した。そして2機で編隊を組んだ。

「これから、攻撃をかけます。」

「ようし、ダン。遅れるな!」

若返ったような生き生きしたキリヤマ参謀の声だった。

「はい、隊長、いえ参謀。」

2隻の宇宙船に向かってレーザー攻撃を始めた。当たらないまますれ違って、2機で息の合った旋回して向き直った。そして攻撃を重ねた。1隻、もう1隻とレーザーが当たり、宇宙船は墜落していった。

「やったぞ。」通信機からキリヤマ参謀の興奮した声が聞こえた。

 

レオはロボットに向かって行き、キックとパンチで攻撃した。しかしロボットはびくともしなかった。ゆっくりとロボットは腕を振り回してレオを攻撃した。レオは簡単に吹っ飛ばされた。ロボットはかなりのパワーだった。レオは起き上がり再び向かって行くが、やはりすぐに跳ね飛ばされた。ロボットはその場から動かず、じっとレオの方を見ていた。レオは何とか立ち上がることができた。

レオはエネルギーブレスレッドを光らせハンドビームを撃った。しかしはね返されてしまった。正面からでは光線技も通用しないようだった。それなら投げ技とばかりにロボットに組み付くが、投げる前に重さで押し倒されてしまった。ロボットは上からレオを殴り続けた。ダメージのためカラータイマーが点滅し始めた。

そのとき1号機とベータ号が上空から現れた。

「赤い巨人がやられています。攻撃しましょう。」モロボシ隊長が言った。

「わかった。ダン。」キリヤマ参謀が答えた。

2機がロボットにレーザー攻撃をかけた。ロボットは背部からの不意の攻撃にレオから離れてた。そして上空のマックホークを顔で追っていた。その隙に、レオはロボットの両足をつかむと渾身の力で上空に投げ飛ばした。そしてエネルギー光球を放った。大きな爆発音とともにロボットは粉々になった。

1号機が着陸して、モロボシ隊長とキリヤマ参謀が降りてきた。そこへ隊員たちが集まってきた。みんな無事だった。ゲンも手を振りながら走ってきた。

MACは素晴らしいチームだ。これからも頼むぞ!」キリヤマ参謀が言った。モロボシ隊長をはじめ隊員たちは

「はっ」大きな声で答えた。