新ウルトラマンレオ

別世界のウルトラマンレオの物語

第8話 激闘!ツルク星人

ツルク成人に敗れたレオ。モロボシ隊長の必死の体当たりに何とか撃退できたが、再び襲ってくることは確実だった。今のレオでは到底勝てないと思ったモロボシ隊長は、ゲンに特訓を行った。それは滝から落ちてくる流木を叩き割るという過酷なものだった。しかしうまくできず、それどころかゲンに大きな流木が直撃した。傷を負ったゲンは意識を失ってしまった。

 

メディカルセンターにゲンは運ばれていた。傷を負ったゲンはモニターをつけたベッドで寝かされていた。ドクターユリとモロボシ隊長が観察室から様子を見ていた。

「危なかったわよ。打ち所が悪かったらいくらオオトリ君でも。」

「すぐに処置してくれて助かったよ。で、どれくらいで動ける?」

「ちょっと待って。しばらく入院よ。」

「それはできない。目を覚ましたらすぐにやることがある。」

「それは無理よ。」ドクターユリが驚いたようにモロボシ隊長に言った。

 

マックホーク1号がツルク星人の捜索をしていた。深い傷を負ってはいるが、傷が癒えたらまだ襲ってくることは十分に考えられた。弱っている間に発見して攻撃したいが、いまだに何の手がかりもなかった。クロダチーフはじめ隊員に焦りの色が見えてきた。

 

ゲンは夢を見ていた。明るい楽園のような場所、生まれ故郷のL77星みたいだった。霞がかったぼんやりとしたその世界で笑って歩いていた。突然、雲が現れると空が真っ暗になり、稲妻がなり嵐となった。立っているのもやっとの状態で、あたりは壊れ始めていた。ここが、故郷がなくなってしまうと思いながら、必死にもがいていた。

「ううっ」大きな声を出していた。はっとゲンは目を覚ました。後味の悪い夢に茫然としていた。そしてツルク星人や川での特訓のことを思い出した。

ゲンの体が震えていた。底知れない恐怖がゲンを襲っていた。ゲンは両手で顔を覆っていた。

 

モロボシ隊長が病室に早足で近づいてきた。近くにいるドクターユリに

「ゲンが意識を取り戻したと聞いた。すぐに連れて行く。」モロボシ隊長は言った。

「ダン、やめて。まだ無理よ。」

ドクターユリは止めていたが、振り切って病室に入ってきた。

「ゲン、起きたか。続きの特訓を行う。すぐ準備しろ。」

「隊長・・・」ゲンは元気がなかった。

「何をぐずぐずしている。さあ、来るんだ。」モロボシ隊長はゲンの腕を乱暴につかんだ。

ゲンはその手を振り払った。モロボシ隊長に背を向けてベッドで丸くなって横になった。

「隊長、僕にはできません。」

「なにっ!」

「僕にできるはずがありません。いくらやってもできないんだ。」

「おまえがやらなくてどうする!ツルク星人はまた出てくるんだぞ!」

「僕には無理です。ツルク星人には勝てない。もう放っておいてください。」

「いやなら無理にでも引きずっていく。」モロボシ隊長はゲンの腕をつかんで引っ張っていこうとした。

「やめてよ。ダン。」ドクターユリがその手をひっぱり、やめさせようとした。

「離してくれ、アンヌ。こいつにはこれが必要なんだ。」

「いい加減にしてよ。ダン。あなた変よ。」ドクターユリは信じられないような力でモロボシ隊長を引き離した。モロボシ隊長は少し冷静になったようだった。

「ちょっと、こっちへ来て。」ドクターユリはモロボシ隊長を観察室に引っ張っていった。

観察室に入るとモロボシ隊長は机に手をついて、悔しそうに右手の拳で机を叩いていた。背後からドクターユリが言った。

「どうしたの。ダン。ひどすぎるわ。」

「はやく特訓を成功させないと。ゲンならできるはずだ。」

「ゲンはあなたとは違うのよ!あなたのようなウルト・・・」ドクターユリは最初は激しく叫んだが、後半の言葉を言いかけてあわてて口をつぐんだ。言おうとしたことに後悔さえしていた。

モロボシ隊長はドクターユリの方に向き直った。

「それはわかっているさ、アンヌ。でもゲンなら必ずできる。きっと乗り超えられる。彼ならこの地球を救えるはずだ。そう信じている。」

「・・・」

モロボシ隊長は続けた。

「ゲンは以前、戦いに敗れて故郷を失った。そして戦う勇気さえも失った。しかし地球がピンチになり再び勇気を取り戻した。しかしまたツルク星人に敗れて自信を失ってしまっているんだ。」

モロボシ隊長はドクターユリの顔を見ながらしっかり言った。

「いいかい。アンヌ。何も憎くてこんなことをしているんじゃない。ゲンの中には敗れた恐怖と地球を守りたいという意思が戦っているんだ。ゲンは心の底では勇気を出して戦いたいと思っているはずだ。憎まれようがそれを後押ししてやる、そして戦って勝てるように特訓してやるのが私の仕事だ。ここで逃げればゲンは絶対後悔する。」

「ダン・・・」ドクターユリは何も言えなかった。

ふいに観察室のドアが開いた。ゲンが立っていた。モロボシ隊長とドクターユリは観察室で話していたが、聴力の鋭いゲンにはすべてが聞こえていた。

「隊長、いきます。決心がつきました。」

「よし、特訓に戻るぞ!」モロボシ隊長の厳しい表情にやや明るさがあった。

 

再び、滝の前に来た。落ちてくる水の塊に流木が勢いよく落ちてくる。ゲンは手刀で水や流木を打っていった。しかし流木はゲンの体を打ち付けてきた。

「ゲン、よく見ろ!的確に当てるんだ。それも力をこめて。この滝の水を切るように。」

モロボシ隊長は叫んでいた。ゲンは必死の形相で滝に挑んでいった。

鋭い動体視力で水と流木をみて、優れた運動神経と並外れた力で流木を打ち付けた。

「バシッ」と流木が砕けた。それから何本も流木が落ちてきたがそれもゲンが砕いた。大きな丸太のような流木も真っ二つにした。

「よくやった、ゲン。」モロボシ隊長は言った。ゲンは息が上がって声を出せなかったが、うなずいて返事をした。

「これでツルク星人と戦える。」

 

モロボシ隊長とゲンが司令室に戻ると、1号機から急に通信が入った。

「ツルク星人が現れました。位置を送ります。」

「よし、わかった。2号機をそちらに向かわせる。合流して攻撃。」モロボシ隊長が通信機で命令した。

「私とゲンはマックロディーで向かう。」

モロボシ隊長とゲンが司令室を勢いよく出ていった。

 

ツルク星人が街で暴れていた。ビルを両手の刃で破壊していた。マックホーク1号と2号が到着した。

「攻撃!」クロダチーフが命令した。

2機が一斉にレーザーを撃った。しかしツルク星人の動きは素早かった。連射したものの当てることができなかった。

「くそっ、当たらない。」アカイシ隊員が叫んだ。

「やはり、奴が速すぎるんだ。このスピードでは避けられてしまう。」アオシマ隊員が言った。カジタ隊員も計器を見ながら言った。

「コンピューターでも動きの予測は困難です。」

ツルク星人はあざ笑うように、両手の刃を叩いて打ち鳴らしていた。そして両腕からの衝撃波でマックホークを攻撃し始めた。

「危ない、避けろ。」1号機と2号機は旋回して逃れようとしたが、間に合わず当たってしまった。両機は不時着していった。

そのとき、マックロディーがようやく到着した。2人は車を降りた。モロボシ隊長がゲンを見てうなずいた。ゲンもうなずいた。そして右手を上げてレオに変身した。

ツルク星人はレオを見下ろしていた。以前の戦いで簡単に勝てると思っているようだった。レオはエネルギーソードを出して、じりじりと間合いを詰めていった。ツルク星人はゆっくりと刃を構えた。

急にツルク星人が動いた。ものすごいスピードで接近してレオに刃で攻撃してきた。やられると思った瞬間、間一髪でなんとかその攻撃を避けた。そしてやや距離をとって構えた。ツルク星人は次の攻撃のタイミングを探っているようだった。レオにはツルク星人の攻撃が見えていたが、まだ油断できなかった。その速い攻撃をさけて、その刃を砕けるかどうかにかかっていた。間合いを確かめながら、次のツルク星人の攻撃に備えていた。

ツルク星人の攻撃が再び来た。レオは避けたが、今度はツルク星人がスピードを上げていたので、刃の打撃を少し受けた。それを見てツルク星人はレオに立て続けに攻撃を加えた。少しずつレオは傷ついていった。ダメージでカラータイマーが点滅し始めた。

(がんばれ!レオ。)モロボシ隊長は心の中で叫んでいた。レオは劣勢であり、反撃の機会をなんとか探していた。モロボシ隊長がレオにテレパシーで伝えた。

(滝の特訓を思い出せ。星人を滝、刃を流木と思え。おまえは流木を砕くことだけを考えろ。)

レオはあらためて構えると、ツルク星人の刃に集中した。ツルク星人と刃が、滝と流木に重なった。

ツルク星人が攻撃してきた。右手の刃を打ち下ろそうとした瞬間、レオはエネルギーソードを跳ね上げて右手の刃を打った。刃は折れて飛んで行った。あわてて左手の刃を振り下ろしたが、これもエネルギーソードで叩き折った。

ツルク星人は叫び声をあげた。折れた刃を振り回すが、むなしく空を切っていた。レオはエネルギーソードをしまうと、キックとパンチで打撃を加えて、最後は渾身の回し蹴りをツルク星人に放った。ツルク星人はよろよろと後ろに下がった。かなりのダメージがあるようだった。そして動きが鈍くなったツルク星人に向かってエネルギー光球を放った。ツルク星人は爆発して四散した。

強敵のツルク星人を倒すことができてレオは誇らしげに立っていた。空は晴れ渡っていた。レオはゆっくりと上を向くと空に飛んで行った。モロボシ隊長は満足そうにそれを見ていた。