新ウルトラマンレオ

別世界のウルトラマンレオの物語

第16話 凶悪4星人襲来

MAC基地の前は多くの車両が行きかっていた。そのゲートに向かって、一人の少年がふらふらと歩いてきていた。警備員が「おやっ」と見ていた。その少年はゲートの前まで来ると倒れこんだ。急いで警備員が助け起こした。

「た、隊長さんを呼んでください。」

かすれるような弱々しい声で言った。その少年はアストラだった。

 

医療室にゲンが駆け込んできた。

「アストラー!」

「静かにして。」アストラの横にいたドクターユリが言った。

「衰弱しているけど大丈夫よ。すぐによくなるわ。」

「アストラ、大丈夫か。」アストラのベッドの横からゲンがのぞきこんだ。

「ああ、兄さん。それより隊長さんを呼んで。」

後からモロボシ隊長が入ってきた。

「私を呼んでいると聞いたが。」

アストラはベッドから半身を起こした。

「大変なことが起こります。急いで飛んできました。」

アストラの慌てた様子にモロボシ隊長はただならぬものを感じた。

「アンヌ、すまないが外で待っていてくれないか。しばらく誰も入ってこないようにしてくれ。」

ドクターユリが出ていくと、モロボシ隊長は声を落として言った。

「さ、話してくれ。ゲンはいてもいいだろう。宇宙にどんなことが起こったんだ。」

アストラが話し始めた。

「仲間を探していた時に、マグマ星人を見ました。見つからないように後をつけていくと、ある小惑星にたどり着きました。そこにはメフィラス星人、ナックル星人、ヒッポリト星人が集まっていました。彼らは4人で地球を攻撃に来る相談をしていました。運悪くマグマ星人に見つかって追いかけられましたが、何とか脱出してここまで来ました。」

ダンとモロボシ隊長は顔を見合わせた。本当であれば危機的な状況だ。

「もっと詳しいことは聞いていないか。どんな小さいことでもいい。」

「いえ、あまり。でも奴らが来るのはもうすぐだと思います。」

「なんとか対応を考える。ゲンもしばらくしたら司令室に戻ってくれ。」

モロボシ隊長は急いで病室を出ていった。

それを見届けるとアストラは言った。

「兄さん。このままじゃだめだよ。奴らは4人もいるんだ。とてもじゃないけど敵わないよ。」

弱気なアストラだった。さらに

「いっしょに逃げよう。兄さんだけでも助かるようにって思って来たんだ。」

「それはできない。」ゲンはきっぱりと言った。

「もうここは俺にとって故郷なんだ。守らなければならないものがある。かけがいのないものなんだ。ここを捨てることはどうしてもできない。」

ゲンの決心にアストラも心を決めた。

「わかったよ。兄さんが逃げずに戦うのなら僕も戦う。」

「ありがとう。でも2人だけじゃない。モロボシ隊長が何とかしてくれる。頼むぞ!」

アストラはうなずいた。

 

司令室ではモロボシ隊長が命令を矢継ぎ早に出していた。宇宙ステーションのよるパトロールの強化、マックホークの武装の強化、凖緊急体制、人員配備の強化など今にも大きなことが起こりそうな雰囲気であった。不思議に思ってクロダチーフが訊いた。

「隊長、いったい何が起こるというのですか。今のところ何の異常もありませんが。」

「ある情報筋から危機のことが伝えられた。星人が襲ってくると。」

「本当ですか。それはどこから。」

「それは言えないが、とにかく凶悪な星人が、それも4人やってくる。」

隊員たちも聞いていたが、やはりまだ信じていないようだった。しかし準備は整えていった。

 

数時間が過ぎた。いきなり宇宙ステーションからの警報だった。オペレーターのシラカワ隊員が報告した。

V3から報告。星人に襲われているとのことです。ステーションホークで応戦中。」

MAC司令部に緊張が走った。

「連絡が急に途絶えました。呼びかけていますが応答ありません。」

「警戒衛星にひっかからず、いきなりか。」クロダチーフが言った。

V1V2V4からも星人に襲われているとの連絡が入りました。」シラカワ隊員が報告した。

「星人が多数いるんだ。はやく迎撃しましょう。」アカイシ隊員が言った。

「いや、まだはっきりした状況がわからない。」クロダチーフが言った。モロボシ隊長は腕組みをしてモニターをじっと見ていた。ゲンもその様子を見ているだけだった。

「今、宇宙ステーションへ向かっても間に合わない。奴ら次はどこに行くんだ。」アオシマ隊員が言った。

V1V2V4からの連絡も途絶えました。最後の連絡では地球に向かっているとのことでした。データが送られてきていますのでモニターに出します。」

モニター上では地球の東京あたりを示していた。

「宇宙ステーションのデータを基にすると、それぞれが東京を目指しているようです。」分析したカジタ隊員が言った。

MAC出動!」モロボシ隊長が命令した。

 

マックホークが飛び立っていく。1号機はアオシマ隊員とカジタ隊員、2号機はクロダチーフ、3号機はアカイシ隊員が乗っていた。モロボシ隊長はマックロディーを積み込んだ4号機で出発することになった。ゲンも同行した。アストラを連れていくためだった。

マックホークが待ち受ける中、4人の星人が同時に地上に降りてきた。まず全員で東京を破壊するつもりらしい。

「攻撃!」クロダチーフが命令した。3機は向かって行ってミサイルを発射した。星人たちには効果は少なく、反撃のビームが飛んでいた。

マックロディーが到着した。戦いが始まっている様子を見て車を止めた。

「よし、行け。」モロボシ隊長が言った。

「はい。」ダンとアストラは勢いよく下車すると走っていった。それをマックロディーからレーザーを発射しながら援護した。星人に近づくと2人は変身した。

今回のモロボシ隊長の作戦は、レオとアストラと一緒に戦うことが前提であった。MACだけでもレオ兄弟だけでも勝ち目がなかった。

レオはメフィラス星人に、アストラはナックル星人に挑んでいった。マグマ星人とヒッポリト星人はマックホークとマックロディーが攻撃して足止めしていた。メフィラス星人とレオは組み合ったがほぼ互角のようで動かない。アストラはナックル星人にパンチとキックで攻撃していた。ナックル星人は巧みに受け流しながらアストラに反撃していた。マックホークはマグマ星人とヒッポリト星人にダメージをあまり与えられないでいたが、他の2人の星人に加勢できないように途切れなく攻撃を繰り返した。しばらく平衡状態が続いていた。

しかし豊富な光線技をもつヒッポリト星人の攻撃は、マックホークをとらえ始めていた。まず3号機が被弾した。アカイシ隊員が脱出していく。パワーバランスが崩れた。1号機が分離してカジタ隊員がベータ号に移って攻撃したが、少しずつMACが押されているようだった。

「これはいかん。」モロボシ隊長は切り札を使うことにした。

2号機、大型レーザー砲を準備しろ。」

「了解。」アオシマ隊員が2号機を旋回して少し距離をとった。武器倉から大型レーザー砲が引き出された。エネルギー充填までまだ時間が必要だった。援護するため1号機とベータ号と地上のマックロディーが攻撃を続けた。

だが敵の方が1枚上手だった。攻撃を受けているヒッポリト星人の影からマグマ星人がサーベルから光線を放った。2号機に当たり、大型レーザーを発射する前に煙をはいて不時着していった。

「あっ。」カジタ隊員は一瞬、動揺した。それでベータ号の回避が遅れて、ヒッポリト星人の光線が当たった。カジタ隊員は脱出してベータ号は墜落した。1号機もヒッポリト星人の多量の光線の前に被弾して不時着していった。

「・・・」モロボシ隊長は絶句した。作戦は崩壊した。レオとアストラが危なかった。

ヒッポリト星人は背後からレオに光線を放った。メフィラス星人との戦いに集中していたレオは倒れた。近くでマグマ星人がアストラを背後からサーベルで打ち付けた。アストラも倒れた。立ち上がる2人を4人の星人が交互に攻撃した。ふらふらして立っているが、一方的に攻撃を受けていた。カラータイマーはとうに点滅していた。

「レオ、アストラ。」思わず声が出た。あまりの惨状にモロボシ隊長は最後の手を決心した。危険を伴うが今回ばかりは仕方がない。マックロディーを降りて、テレパシーでレオとアストラに話しかける。

「レオ、アストラ。私はサイコキネシス4人の星人の動きを止める。その間に2人で協力してエネルギーブレスレッドにエネルギーをためて、ウルトラクラッシャーを撃て。だが長くは動きを止められない。失敗したら何もかも終わりだ。いいか、いくぞ!」

モロボシ隊長は体の前で拳を握った腕を交差させた。そして力を込めた。4人の星人は抵抗しながらも動きが止まっていた。レオとアストラは少し後ろに下がって手をつないだ。エネルギーブレスレッドが輝き始めた。ウルトラクラッシャーを撃つにはまだ少し時間がかかる。モロボシ隊長は4人の星人を止めているので、使うエネルギーは相当のものだった。消耗しながらもなんとかサイコキネシスを続けていた。

「まだか。もう長くはもたない。」限界が近づきつつあった。そのときやっとエネルギーがたまり、4人の星人にむけてウルトラクラッシャーを撃った。

4人の星人に当たり、爆発すると後ろに跳ねとんだ。相当のダメージを与えたが、4人に当たるように広く打ったため致命傷にはなっていなかった。よろよろと4人の星人が立ち上がる。

もうレオ兄弟には力は残っていなかったが、最後の力で構えをして再び光線を放つように見せかけた。ダメージを受けた4人の星人は反撃をあきらめて上空に後退していった。

「なんとかなったか。」モロボシ隊長は衰弱していた。

レオとアストラは変身を解いた。ゲンはダメージを受けながらもなんとか立てていた。しかし背後で倒れる音がした。振り返るとアストラが頭から血を流して倒れていた。

「アストラ!」ゲンは叫んで抱き起した。もう意識はなかった。戦いの中で重傷を負っていたのだった。

「ゲン・・・」モロボシ隊長もそれ以上、言うことができなかった。意識を失いつつあった。最後の力で右手を上げたが、そのまま地面に倒れた。

4人の星人は一旦、後退したものの、ダメージが癒えるとまた攻撃してくるのに違いなかった。モロボシ隊長とアストラが倒れた今、地球はどうなってしまうのだろうか。戦いの終わった街は、夕日に照らされて不気味に赤くなっていた。