新ウルトラマンレオ

別世界のウルトラマンレオの物語

第30話 対決!ウルトラ兄弟VSレオ兄弟

静まり返ったある星に一つの人影が現れた。その人影は物音を立てないように建物の中に入っていった。内部には明るく中央の装置には輝く物体がはめ込まれていた。その人影は周りのパネルを操作した。しばらくして急に重力がかかった。星が動き出しているようだった。それを感じた人影は輝く物体を取り外した。建物内は急に暗くなった。物体のみが光ってあたりを照らしていた。その明かりでその人影の顔が浮かび上がった。アストラだった。

 

異常を感じたウルトラ兄弟が飛び出した。警報が鳴る中、制御塔の建物に入ったゾフィーはウルトラキーが盗まれているのに気付いた。ウルトラの星を制御するそのキーは、その星の軌道をコントロールする。しかし今やウルトラキーを失い、ウルトラの星は暴走しているのだ。ゾフィーはテレパシーで

「ウルトラキーを取り戻せ。まだ遠くに行っていないはずだ。」

外を捜索していたウルトラマンジャックがウルトラキーをもって逃げていく人影を見つけた。

「待て。それをどうするつもりだ。」

ジャックは振り返った人影を見て驚いた。

「アストラ!」

「こうするんだ!」

アストラはウルトラキーを発光させた。エネルギー波がジャックを襲い、ジャックは後方に弾き飛ばされた。それをみてアストラは飛んで宇宙のかなたに飛んで行った。通りかかったウルトラマンエースがジャックを助け起こした。

「大丈夫か?」

「大丈夫だ。それよりアストラだ。奴がウルトラキーを盗んで飛んで行ってしまった。」

ゾフィーはテレパシーで事態を把握して、ウルトラ兄弟に伝えた。

ウルトラマン、ジャック、エースはアストラを追え。私もすぐに追いかける。急がねば。ウルトラの星は暴走している。これではどこかの惑星に衝突してしまう。もしかするとこの方向は地球かもしれない。」

 

地球防衛軍の天文班はこの異常な星の動きをつかんでいた。すぐさまMACに報告された。

司令室ではモロボシ隊長が調査結果を待っていた。カジタ隊員があわてて入ってきた。書類をデスクに広げて説明した。隊長と他の隊員が書類に目を通す。

「天文班の情報では、M’78星雲の星の1つがこちらに向かっています。このままでは地球に衝突します。確率は99パーセントです。」

「あとどれくらいだ。」

「あと1週間です。」

「今までどうして気づかなかったんだ!」クロダチーフが言った。

「どういうわけか、星の動きが急に変わったようです。かなりの速度でこちらに向かっています。星が暴走しているんです。」

「何か対策を立てないとな。」クロダチーフはうなった。

モロボシ隊長は書類を見て、ただ黙って考え込んでいた。

「衝突する前にUN-105X爆弾で破壊するしかないか。アオシマ隊員は言った。

「それではあまりにやりすぎです。」ゲンははげしく言った。

「そんなことを言っていたら地球は終わりになってしまうぞ。」アオシマ隊員はゲンを軽く小突いた。アカイシ隊員は横から言った。

「いやいや、その星に生物がいたらどうするんだ。簡単にそれは使えないぞ。」

クロダチーフは、

「そうかもしれないが、調査している時間もないぞ。あとどれくらい猶予があるかだ。」

モロボシ隊長は静かに言った。

「様々な状況に対応して今後の対応を含め、多くのことを検討する必要がある。カジタ、上層部にこのデータを報告してくれ。」モロボシ隊長の顔はやや沈んでいるように見えた。

隊員たちがそれぞれの仕事のため立ち上がった。ゲンも司令室を出ようとしたところを、モロボシ隊長に腕をつかまれた。誰にも聞かれないようにテレパシーで

「ちょっと、隊長室へ来てくれ。」と言われた。

 

宇宙ではアストラがウルトラ兄弟に追われていた。輝くウルトラキーを持っているため逃げ道は明らかだった。追いついてつかみかかってくるが、キックやパンチをして振り払った。どうしてもアストラをとらえることはできなかった。アストラが向かっている先は、奇妙なことにウルトラの星が暴走している方向と同じだった。地球に向かっていた。

 

隊長室でモロボシ隊長はゲンに重苦しい口調で言った。

「さっき、ウルトラ兄弟から連絡があった。ウルトラの星を制御するウルトラキーが盗まれた。そのため星が暴走しているのだ。」さらに言葉を続けた。

「今、その犯人を追ってウルトラ兄弟は地球に来ようとしている。そいつは」モロボシ隊長はゲンを見た。

「アストラだ。」

 

地球では警戒衛星でアストラとウルトラ兄弟の動きもつかんでいた。

司令室でオペレーターのシラカワ隊員が、

ウルトラ兄弟たちは地上に降りてくるようです。場所は東京郊外です。」

「マックホーク4号で現地に行く。アオシマとカジタ、ゲンは来てくれ。後のものは待機してくれ。」モロボシ隊長は命令した。

 

モロボシ隊長とゲンが、マックホーク4号からから降ろしたマックカーで降下地点に向かっていた。アオシマ隊員とカジタ隊員はマックホーク4号で空から監視体制に入っていた。マックカーを止めると、モロボシ隊長とゲンがドアをあけて出てきた。双眼鏡で上空を見ていた。

一つの明るい点が見えると、アストラが地球に降り立った。右手には何かキラキラしたものを持っているようだ。そのあとに4人のウルトラ兄弟が降りてきて、アストラに対して構えた。ゾフィーが言う。

「ウルトラキーを返せ!返さないと力ずくでも取りかえすぞ!」

アストラは答えない。しびれをきらしたようにウルトラマンがウルトラキーをもぎ取りに行った。もみあいになりながらもアストラはウルトラマンを突き飛ばした。それを合図に他の兄弟もアストラに向かっていった。

 

双眼鏡から目を離したモロボシ隊長は言った。

「あれはウルトラキー!なぜアストラが持っているんだ!」

「アストラー!」ゲンは駆けて行って何度も呼び続けるが、アストラはゲンを見ようとしなかった。

ゲンはモロボシ隊長に向かって叫ぶ。

「このままではアストラがやられてしまいます。争いを止めてきます。」

「待て、お前まで巻き込まれてしまうぞ。私がテレパシーでウルトラ兄弟と話してみる。」

モロボシ隊長は大声で言ったが、ゲンはそれを聞かずにレオに変身した。

 

レオはウルトラ兄弟とアストラの間に入り、両者を引き離そうとした。レオの出現にウルトラ兄弟は引き下がった。レオは言う。

「一体どうしたというのですか?」

「アストラがウルトラキーを盗んだのだ。いまやウルトラの星は暴走して地球に衝突しようとしている。はやく取り戻さねば。」

ゾフィーはそう言うとレオとアストラに向かって来ようとした。

「少し待ってくれ!」レオは言うとアストラの方に向き直った。

「ウルトラキーを盗んだのは本当か?どうしてそんなことをしたんだ?」

アストラは答えない。右手に持ったウルトラキーを後ろに隠した。

「やはり力ずくでいくしかないようだな。行くぞ!」

ゾフィーが言うと、ウルトラ兄弟が向かってきた。ウルトラ兄弟とレオ兄弟の間で乱戦が続いた。空中で警戒しているマックホーク4号の隊員たちもどうなっているかわからず、その様子を見守っているだけだった。モロボシ隊長はテレパシーで兄弟たちに、

「戦いをやめるんだ。」と伝えたが返答はない。

らちがあかないと思ったのか、ゾフィーは兄弟たちに合図を送った。ウルトラ兄弟はいったん距離をおくとそれぞれの光線をアストラに発射した。反射的にレオは前に出て、アストラをかばった。光線を一身にレオがあびた。

「うううっ」

光線をあびてレオは倒れた。レオの体は飛び散る羽のように光りながら分散した。そして地面には人間体のゲンが倒れていた。

「ゲン!」モロボシ隊長は駆け寄ってゲンを抱き起す。息はあるようだがかなりのダメージを負っているようだ。

今度はアストラがウルトラキーを突き出した。光り輝いてエネルギー波が兄弟を襲った。4人のウルトラ兄弟はダメージを受けたが、まだ何とか立てていた。さらにアストラがエネルギー波をあびせようとしたとき、空から一筋の光線が放たれた。それはアストラの右手に当たり、ウルトラキーをたたき落とした。

ウルトラキーは地面で壊れた。中のエネルギーは空に向かって飛んで行き、地球上空に散らばった。

「あっ」ウルトラ兄弟たちは思わず手をのばしたが、どうにもならなかった。

右手をおさえたアストラが上空を見渡すと、今まで見たことがないウルトラ戦士が浮かんでいた。光り輝いたそのウルトラ戦士はマントを羽織って、腕を組んで傲然と見下ろしていた。

「私はウルトラキングだ。」伝説になっているウルトラ戦士が現れた。その存在は知られていたものの、今までウルトラ兄弟でも見たものはなかった。常に全宇宙を見守り、強力な力をもって宇宙の正義と秩序を維持しているといわれているが、宇宙のどこにいるのかわからない謎の多いウルトラ戦士である。

さらにウルトラキングはアストラに光をあびせた。するとアストラの中から星人が引き出された。ババルウ星人であった。寄生宇宙人がアストラに乗りうつっていたのだった。アストラは意識のないままに倒れ、やはりレオの時と同じように体が分散して、地面には人間体のアストラが残された。

すぐにババルウ星人は上空に飛んで逃げていった。

「待て!」ウルトラ兄弟が叫んだがすぐに姿は見えなくなった。すぐに追おうとしたがウルトラキングに手で制止された。

ウルトラ兄弟よ。ババルウ星人にだまされたとはいえ、争い続けるとはどういうことだ。おまえたちが正しくなければ、この宇宙の秩序は保つことはできない。」

諭すようにウルトラキングは言った。ウルトラ兄弟たちは頭を下げて聞いていた。

「今、必要なのはババルウ星人を倒すことではない。ウルトラの星を元に戻すことだ。もはやウルトラキーのエネルギーは分散してしまった。こうなったら、ウルトラ兄弟が力を合わせてエネルギーを作り出し、それでウルトラの星を制御するしかない。もう、時間はないさあ、行け!」

ウルトラ兄弟たちはエネルギーのなくなったウルトラキーをもって、いっせいに飛び立っていった。

ウルトラキングは地上にいるモロボシ隊長にも話しかけた。

「セブンよ。ウルトラの星では君の助けを必要としている。もうそろそろ戻る時期ではないのか?」

「いえ、ウルトラキング。まだ地球は危機に見舞われています。私はまだここにいます。」

「そうか。では君にはウルトラアイを渡しておく。」

ウルトラキングが手を挙げると、モロボシ隊長の右手にはウルトラアイが現れた。

「ただしこのウルトラアイは1回しか使えない。これを使ったらもう地球には戻れない。わかるな。」

モロボシ隊長はうなずいた。

「それから負傷したレオとアストラをみてやりなさい。彼らの若い力は宇宙の平和に必要だ。」

それだけ言うとウルトラキングは上空に消えていった。モロボシ隊長はそれを眺めていた。

ようやく地上に静穏が訪れたが、その間にもウルトラの星は刻々と地球に近づいていた。