新ウルトラマンレオ

別世界のウルトラマンレオの物語

第29話 ブルーメ星人襲来!

司令室で警報が鳴った。当直のカジタ隊員がモニターに飛びついた。

「宇宙船だ。こんな近くまで来ていた。」

宇宙船は発見されずにMAC基地に接近していた。肉眼でも見える距離だった。

「防御システム起動。」そして宇宙船に通信を試みた。

「こちらMAC基地。そこの宇宙船、停船して応答せよ。聞こえるか。応答しなければ敵とみなして攻撃する。」

呼びかけてみたが、応答はなかった。

「どうした。」モロボシ隊長をはじめ、隊員たちが司令室に集まってきた。モニターには宇宙船が映っていた。

(これはブルーメ星人の宇宙船。奴らが地球をねらってきたのか。)モロボシ隊長は思った。

「異星人の宇宙船です。通信していますが連絡ありません。」

カジタ隊員が言い終わらないうちに宇宙船から光線が発射された。

「光線を発射してきました。」カジタ隊員が叫んだ。ただし何のダメージもなかった。

「攻撃!」モロボシ隊長が命令した。

「はいっ。」カジタ隊員がボタンを押した。

基地からは数門のレーザー砲が放たれた。そのうちの1本が宇宙船に当たった。しかし爆発せず、宇宙船はふっと空中に消えた。

隊員たちはキツネにつままれたような顔をしていた。レーザーが当たったはずの宇宙船は消え、また宇宙船が放った光線の跡もなかった。すべて幻のようだった。

 

基地周囲の調査がモロボシ隊長とアオシマ隊員、カジタ隊員、ゲンの4名で行われた。しかし宇宙船の破壊された形跡はなかった。

「隊長、これを見てください。」ふいにカジタ隊員が呼んだ。壊れた小さな機器の塊のようだった。

「妙ですが、これしか見つかりません。星人はおろか、あの大きな宇宙船の残骸も見当たりません。」

「狙いはMAC基地の破壊だったのかな。それにしてはあっけなかった。」アオシマ隊員が言った。

(確かにそうだ。しかしこれではあまりにもお粗末な攻撃だ。ブルーメ星人はずるがしこい。何か目的があるのか。)モロボシ隊長は思った。

 

基地に戻ると、すぐに警報が鳴った。

「宇宙船です。昨夜のものと同じものです。今度はここから20キロの地点です。」シラカワ隊員が言った。

「マックホーク1号出動。チーフとアカイシが行ってくれ。」モロボシ隊長が言った。宇宙船を迎撃するためにマックホーク1号が発進した。

「こちら1号機、宇宙船を発見。接近します。」クロダチーフから連絡が入った。宇宙船は1号機を見ると基地から離れた方向に逃げ出した。

「宇宙船は逃走しています。追跡します。」1号機は離れていった。

また警報が鳴った。

「もう一隻、宇宙船です。同じタイプです。約20キロ、接近中。」シラカワ隊員が言った。「またか。マックホーク2号出動。アオシマが行ってくれ。」モロボシ隊長が言った。2号機は発進して宇宙船に向かった。しかしまた宇宙船は逃げていった。

アオシマ、無理するな。」

「大丈夫です。このまま追跡して奴の基地を探り当てます。」

2号機も離れていった。

(おかしい。何か目的があるのか。)モロボシ隊長は思った。

「カジタ、宇宙船について分析は?何かわかっていることがあるか。」

「今のところ何もわかりません。」

また警報が鳴った。

「また宇宙船です。約20キロ。場所は違いますが。」シラカワ隊員が言った。

「私に行かせてください。4号機なら分析機器を多く積んでいますので、何かわかるかもしれません。」カジタ隊員が言った。

「それでは頼む。マックホーク4号出動。」モロボシ隊長が言った。

4号機も宇宙船を追った。カジタ隊員が機器を操作してデータを集めた。分析結果が返ってきた。

「やはり、何かおかしい。もう少し追跡を続けます。データの収集も続けます。」4号機も離れていった。

3機とも基地から離れました。あっ。また警報です。宇宙船です。また別の方角に出現しました。」シラカワ隊員がモニターを見ながら言った。

「ゲン。3号機で行ってくれ。それからシラカワ君。全機と連絡はついているな。」

「はい。依然として全機、追跡中です。」

「よし、マックホーク3号出動。」そしてゲンの肩を叩いた。

モロボシ隊長はテレパシーでゲンに伝えた。

(あれはブルーメ星人の宇宙船だ。彼らは策を弄して攻めてくる狡猾な奴だ。何か罠があるかもしれない。注意しろ。)

ゲンはうなずくと司令部を出て行った。

(これですべてのマックホークが出撃した。次にまた宇宙船が現れた時は、誰かを戻さないといけない。)と考えていた。しばらくしてカジタ隊員から連絡が入った。

「こちら4号機。あの宇宙船は実態がありません。3次元映像のようです。」

「なにっ。」モロボシ隊長は叫んだ。

「基地の近くで見つけたあの機器は小型の飛行装置と3次元映像装置だったのかもしれません。かなり進んだテクノロジーで探知機器では実物としか見えないようです。したがって攻撃もフェイクで映像だけと思われます。」

カジタ隊員からの通信を聞くとモロボシ隊長はすぐに命令した。

「マックホークをすべて呼び戻せ!すぐに!」

「はいっ。」あわててシラカワ隊員は通信した。しかしどのマックホークも遠くに行っており、戻ってくるまで時間がかかりそうだった。

「隊長。基地近くに宇宙船。こちらに向かってきます。」シラカワ隊員がモニターを見て叫んだ。

「こっちが本物か。防御システム起動。あわてるな。ここで迎撃する。」モロボシ隊長は命令した。宇宙船が近づいてきた。

「発射!」数門のレーザー砲が撃たれた。宇宙船はかわしていった。

「大型レーザー砲準備。よく狙え!」レーザーが宇宙船を追いまわしている間、大型レーザー砲が引き出されセットされた。宇宙船に照準をつけていた。宇宙船をギリギリまで引き付けた。

「発射!」大型レーザー砲が発射された。見事に宇宙船を直撃した、と見えたが、爆発もなく宇宙船は消えていた。

「これもダミーか。」モロボシ隊長はつぶやいたが、その耳には新たに宇宙船が接近してくる音をとらえていた。

(いや、また来る。近いぞ。今度こそ実物か、それともまたダミーか。)と考えていた。

「基地の正面に宇宙船。接近してきます。すぐ前です。」シラカワ隊員が言った。

「レーザー砲発射。大型レーザー砲は発射準備。」モロボシ隊長が言った。しかし前のダミーの宇宙船の陰に隠れていたので、宇宙船はかなり基地に接近していた。基地の迎撃準備が整う前に宇宙船は光線を放った。今度は本当に光線が放たれていた。大型レーザー砲は爆発して吹っ飛んだ。そして次々に基地のレーザー砲を光線で破壊した。

「これはまずい。私はマックロディーで出る。シラカワ君。マックホークはまだか。」

3号機のオオトリ隊員が近くですが、まだ10分以上かかります。」

「なんとか時間を稼ぐ。」モロボシ隊長は司令室を出て行った。

 

3号機のゲンは焦りながら基地に向かっていた。

(やはり罠か。基地を破壊するためマックホークを引き離したのか。用意周到な作戦だ。なんとか早く戻らないと。)

 

宇宙船は基地の周囲を飛び回りながら、邪魔になるレーザー砲を光線で破壊すると、基地施設を攻撃し始めた。司令室では大混乱だった。機器から火花が出てショートして、電源が落ちて非常電源に変わった。天井から落下していて崩壊しようとしていた。その中でもシラカワ隊員はマックホークに呼びかけていた。

マックロディーは基地の外へ出ると、宇宙船をレーザーで攻撃し始めた。宇宙船はそれを避けながら光線を放ってきた。マックロディーの周りは爆発して土煙に包まれた。なおも宇宙船は光線を激しく撃ってきており、モロボシ隊長はスピードを出してかわしていった。

しかしついにマックロディーの近くに光線があたり、爆発とともに横転した。モロボシ隊長は車から這い出てきた。そしてなんとかトランクからロケットランチャーを引っ張り出した。

「これで、なんとか食い止めないと。」

宇宙船は容赦なく光線を発射して基地のあちらこちらを破壊していた。物陰に隠れたモロボシ隊長は機会をうかがった。そして宇宙船が向きを変えて正面にまっすぐ近づいてきた。とっさにロケットランチャーをもって飛び出すと、狙いをつけて発射した。

「バーン。」という音とともに弾は宇宙船に吸い込まれるように命中した。宇宙船は衝撃をうけて飛行が安定しなくなった。後部から煙を吐いていた。

「よし、やった。」次を撃とうとしたが、宇宙船は射程外に離れていった。そして地上に何かを落とすと上空に消えていった。

その物体は落下の途中で急に大きくなり、怪獣ドンコになった。大きく咆哮すると基地に向かってきた。ロケットランチャーを発射したが、怪獣はその爆発にひるまず基地に向かってきた。

(このままでは危ない!)

とっさにモロボシ隊長は胸ポケットに手を入れて小箱を取り出した。中のカプセルをつかむと

「行け、アギラ!」と怪獣めがけて投げた。

怪獣の前にアギラが現れた。アギラは怪獣に体当たりしていった。体は怪獣の方が大きいのですぐにはね飛ばされてしまった。アギラは起き上がると、左右に動き回り、怪獣の隙を伺った。そしてまたアギラがとびかかった。今度は組みつき、怪獣にかみついた。怪獣は体を振り回しアギラを引き離そうとしたが離れなかった。怪獣は一瞬止まり、体を一瞬光らせた。するとつかまっているはずのアギラは手を離して急に地面に倒れた。怪獣が倒れたままのアギラを足蹴にした。アギラが転がっていった。モロボシ隊長がアギラを戻した時に、通信が入った。

「隊長、遅くなりました。怪獣を攻撃します。」ようやくゲンの乗る3号機が戻ってきた。

3号機は急降下してきてレーザーで怪獣を攻撃した。しかし爆発は怒ったが、効果は少なかった。怪獣はなおも基地に向かって進んでいた。

「ゲン、基地に近づけさせるな。1号機と2号機が戻ってくるまで持たせるんだ。」

3号機はさらにレーザー攻撃を続けた。怪獣はいらだってきて咆哮した。なおも接近して攻撃しようとすると、怪獣は体から放電した。3号機はそれに巻き込まれ、電源がショートして操縦不能になっってしまった。ゲンはかろうじて3号機から脱出すると、空中でレオに変身した。

レオは地上に降りて、怪獣の前に立ちはだかった。

「レオ、近寄ると危険だ。ブルーメ星人の怪獣には何かある。気をつけろ。」モロボシ隊長はテレパシーで伝えた。

「このままでは基地がやられてしまいます。大丈夫です。注意して戦います。」

「あの怪獣と組み合うな。離れて戦え。」モロボシ隊長はレオに指示した。

怪獣は咆哮してレオに向かってきた。レオはハンドビームを撃った。怪獣に当たって爆発が起こり、怪獣の足が止まった。レオはなおも怪獣を近づけさせないように攻撃した。

そうこうしているうちにマックホーク1号が戻ってきた。背後から怪獣を狙い撃ちしていった。怪獣がふらついたところをレオは飛び上がると、渾身のレオキックを放った。しかしそれを怪獣が体でうけとめてレオに組み付いた。レオは離れられなくなってしまった。すると怪獣の体が光った。レオの体に激しい電撃が走った。レオは逃れようとしたが怪獣は離さなかった。続けざまの電撃のダメージのため、カラータイマーが点滅し始めた。レオが近くにいるため1号機は攻撃することができなかった。

(しまった。レオがピンチだ。)モロボシ隊長は思った。その間にもレオは電撃にさらされていた。

モロボシ隊長は急いで怪獣のそばによると、再びロケットランチャーを構えた。怪獣の目に慎重に狙いをつけて放った。怪獣の目に当たり、怪獣は吠えて手足をばたつかせてレオを離した。  

やっとレオは怪獣から離れて自由になった。ふらふらになりながらもレオはエネルギーブレスレッドを光らせてエネルギーソードを出した。それで怪獣を突き刺した。レオがエネルギーソードを抜くと怪獣は後ろ向きに倒れて動かなくなった。ようやく怪獣を倒したレオは変身を解いた。

体力を使い果たして片膝をついているゲンに、モロボシ隊長がすぐに駆け寄った。

「大丈夫か?」モロボシ隊長がゲンに訊くと、息を切らしたゲンはうなずいた。

「ゲン、ブルーメ星人は狡猾で何を考えているかわからない危険な奴らだ。これからはMACの戦力と緊密な連携をとって戦っていくしかない。」

ゲンはまたうなずいた。新たなる脅威に緊張する2人だった。