新ウルトラマンレオ

別世界のウルトラマンレオの物語

第20話 V5から来た男

警戒衛星が非常警報を出していた。宇宙ステーションV5にはスクランブルがかけられた。

「さあ、いくぞ!」V5の隊長が命令した。ステーションホークが2機、宇宙船を追っていった。逃げながら宇宙船は光線で攻撃してきた。

「こいつ、やる気か。それなら攻撃するぞ!」V5の隊長が攻撃命令を出した。ステーションホークがビームで攻撃をかけるが宇宙船には当たらなかった。それどころか1機が光線に当たった。

「隊長、やられました。でもまだ飛べます。」

「無理するな。V5に戻っていろ。こいつは俺がやっつける!」

なおも追跡を続けて、ステーションホークと宇宙船は地上近くまで降りてきてしまった。ステーションホークは激戦で少しダメージを負っており、飛行が安定しなくなってきた。やがて警報を受けて出撃してきたマックホーク1号が近づいてきた。

「こちらマックホーク1号。聞こえますか。」クロダチーフが呼びかけた。

「こちらV5のステーションホークだ。正体不明の宇宙船と交戦中。ちょっと機がおかしいし、弾と燃料が少なくなったので後を頼む。」

「わかりました。」クロダチーフは横に乗っているゲンに合図をした。

1号機が宇宙船に攻撃した。宇宙船は反撃したが、1号機のビームを受けて煙を吐きながら山中に落ちていった。

「やはり、マックホークはこのポンコツとは違うな。じゃあ、少し基地にお邪魔するかな。」その状況を見ながらステーションホークに乗ったV5の隊長が笑いながら言った。フルハシ隊長だった。

 

司令部の自動ドアが開いた。ヘルメットのひもを肩越しにもって、ゆったりと入ってきた。

「よお、みなさん。ごくろう。」

「これはフルハシ隊長。」隊員たちが敬礼した。フルハシ隊長も顔を引き締めて敬礼した。しかしフルハシ隊長はモロボシ隊長を見つけると急に笑顔になって駆け寄った。ヘルメットを放り投げるとモロボシ隊長の肩をつかんで、、

「ダン、久しぶりだなあ。また会えてうれしいよ。」

いつも厳しい顔のモロボシ隊長も笑顔を見せていた。

「はい、フルハシさん。またここに戻ってきました。」

仲の良い様子に隊員たちが物珍しそうに見ていた。それに気づいた2人の隊長は元の冷静な様子に戻った。

「フルハシ隊長、あなたが追ってきた宇宙船は山中に墜落しました。これから調べに行くところです。」

「そうか。俺のステーションホークの修理はまだかかりそうだから、ひとつ俺も行ってみるかな。」フルハシ隊長が言うと、背後から声をかけられた。

「フルハシ、あまりでしゃばるな。ダンたちに任せろ。」

キリヤマ参謀だった。フルハシ隊長は一瞬、ビクッとしたようだった。

「はは、そうですね。それにしても人が悪い。いるならいるとおっしゃってください。」びっくりして振り返ったフルハシ隊長は、バツが悪そうに頭をかいて言った。

「はっはっは。フルハシもこっちに来ることが少ないから顔を見に来たのさ。またステーションに帰るのだろう。それまでここでゆっくりしたまえ。」

「お言葉に甘えます。はは。」勇猛果敢で知られるフルハシ隊長も、キリヤマ参謀の前ではタジタジだった。

 

上空をクロダチーフとゲンを乗せた1号機が旋回していた。墜落した宇宙船に特に動きはないようだった。モロボシ隊長たちを乗せた4号機が到着した。マックロディーに乗り換えて現場に向かった。

「隊長、見てください。」アカイシ隊員が叫んだ。

宇宙船はあまり損傷がないようだった。モロボシ隊長とアオシマ隊員とアカイシ隊員がマックロディーを降りた。カジタ隊員がマックロディーから宇宙船を監視していた。

マックガンを構えて進んでいく。すると宇宙船から強力な音波が発せられた。隊員たちは耳を抑えて倒れた。モロボシ隊長も苦しみながら隊員たちを助けようとしていた。

「カジタ、聞こえるか。応答しろ。」しかし応答はなかった。マックロディーのカジタ隊員もやられたようだった。

異変を察知した1号機が近づいてきた。妨害電波が出ているようで通信がつながらなかった。

「地上で何か起こったんだ。地上をスキャンしてくれ。」クロダチーフがゲンに言ったが、何かに妨害されているようだった。

 

宇宙船から星人が出てきた。倒れた隊員たちを連れて行こうとした。

「待て。おまえたちは何者だ。」モロボシ隊長は膝をついて苦しみながら言った。

「我々はクロス星人だ。地球の様子を見に来ただけだ。悪意はない。すぐに出て行きたいが、宇宙船が攻撃を受けてエネルギーが足りなくなった。必要なエネルギー物体の情報を送るから、それを持ってきてくれ。地球にある物だ。それをくれたら人質は返すし、ここからすぐ出て行く。それまで彼らは人質として預かっておく。大丈夫だ。人質の安全は保障する。」

「待て!」

「さあ、おまえは戻って準備をするんだ。」

星人たちはそう言うと、隊員たちを連れて宇宙船に戻っていった。

 

司令室では重い空気が流れていた。アオシマ隊員とアカイシ隊員とカジタ隊員の3名が人質になっていた。クロス星人と名乗ったが凶悪だという噂をモロボシ隊長は聞いたことがなかった。しかしただ見に来ただけと言ったが、何か策略を隠しているような気がしていた。

「クロス星人からデータが送られてきました。そちらに送ります。」オペレーターのシラカワ隊員が言った。モニターを覗き込むとクロダチーフが言った。

「このエネルギー物質は揃えられます。取引時間まであと3時間ですが、間に合うと思います。」

「すぐ、用意してくれ。」モロボシ隊長が言った。

「取引に応じるのですか。」ゲンが言った。

「今のところ、これしかない。」

「でも星人が信用できない気がします。」ゲンは言った。

「俺もそう思う。俺らが追跡したときに攻撃してきたんだ。ただ地球を見に来ただけと違う、悪意を感じたがね。」横から見ていたフルハシ隊長が言った。

「ええ。でも部下が人質になっています。何とかしてやらないと。星人が人質の安全を保障している以上、それを信じるだけです。」モロボシ隊長が言った。

「私もダンと同じ意見だ。しかし十分気をつけるんだ。」キリヤマ参謀が言った。

「はい。あの強力な音波の対策は一応できていますし、気をつけていきます。クロダチーフとゲンを連れて行きます。」

「俺も行くぞ。」

「いいえ。フルハシさんはここにいてください。あなたまで身を危険にさらすことはない。」

「危険だからこそ、すこしでも力になりたいんだ。」

「フルハシさん。ありがたいです。でもここは我々だけで対処したいんです。」

「フルハシ、ダンがそう言っているんだ。おまえにはV5の任務が待っている。もうすぐステーションホークの修理が終わる。すぐに戻ってもらいたいんだ。」キリヤマ参謀が言った。

「はあ。」フルハシ隊長はしぶしぶ承知した。

 

マックホーク4号でモロボシ隊長たちが現場に向かっていた。

(ゲン、いざというときは頼むぞ。)モロボシ隊長はテレパシーでゲンに伝えた。ゲンはうなずいた。

やがて現場に到着すると、4号機を着陸させた。

「隊長、着きました。ハッチを開けます。」4号機に残るクロダチーフが言った。

「よし、マックロディーで現場へ向かう。」モロボシ隊長とゲンを乗せたマックロディーが4号機から出て行った。

 

司令室ではフルハシ隊長が残されて、いらいらして歩き回っていた。オペレーター席でシラカワ隊員が通信をチェックしていた。フルハシ隊員ははっとして何か思いついたように足を止めた。気づかれない様に静かに司令室を出ようとしたとき、シラカワ隊員に声をかけられた。

「どこへいらっしゃるのですか。」

一瞬、ドキッとして答えた。

「いや、何でもない。ええと、トイレだよ、トイレ。じゃあ。」

あまりの慌てようにシラカワ隊員がクスッと笑ったが、フルハシ隊長は気にせず司令室を抜け出した。

「ふうっ。やっと抜け出せた。やっぱりダンが心配だ。俺も行くぞ。」マックホーク1号が駐機している地下の格納庫に行くため、エレベーターに乗り込んだ。

エレベーターのドアが開くと巨大な格納庫にマックホーク1号があった。そこへ向かおうとすると後ろから声がかけられた。

「フルハシ、どこへ行く?」

フルハシ隊長は驚いてゆっくりこわごわ振り向いた。そこにはキリヤマ参謀が立っていた、

「ええと。せっかく来たんだからマックホークでも見ておこうかと思いまして・・・」おどおど答えた。

「嘘をつきおって。マックホーク1号で現場に行こうとしていたんだろう。」

「いえ。そんなことはありません。」直立不動でフルハシ隊長が答えた。

「まあ、いい。フルハシ、一緒に来い。」キリヤマ参謀がマックホークに向かって歩き始めた。その後をフルハシ隊長が顔をあげられないままについていった。

「参謀、どこへ行くんですか。」

キリヤマ参謀は壁に掛けてあるヘルメットを1つとって、フルハシ隊長に渡した。

「参謀、これは?」フル入隊長が訊いた。

「フルハシ、頼むぞ。ダンを助けに行ってくれ。ハッチは俺が開けてやる。」キリヤマ参謀は言った。

「はっ、参謀!」フルハシ隊長は顔をあげて背筋を伸ばして敬礼した。その声は明るかった。

 

モロボシ隊長とゲンが2人で宇宙船の前に来て、大きな箱を下した。クロス星人が出てきた。

「隊員たちはどうした。」

「エネルギー物体が先だ。」

「いいや。隊員を返さないとエネルギー物体は渡さない!」モロボシ隊長は強く言った。

クロス星人はまた強力な音波を放った。しかしその対策がヘルメットになされていたので効果がなかった。ゲンはマックガンを引き抜いてエネルギー物体に向けた。

モロボシ隊長は言った。

「早くしないとこのエネルギー物体を破壊する。」

仕方なく音波を止めると、宇宙船から3人の隊員を連れて出てきた。クロス星人たちがゆっくりと近づいてきた。隊員たちをはなすと、エネルギー物体を持って慌てて宇宙船に戻っていった。4号機に戻ろうとすると、宇宙船から光線が発射された。

4号機、攻撃を受けて損傷しました。離陸できません。」クロダチーフから連絡が入った。

マックロディーも破壊され、走って逃げるしかなかった。

その時上空から近づいてきた。マックホーク1号だった。

「ダン、助けに来たぞ。」フルハシ隊長の声が通信機から聞こえた。

「助かりました。でもどうして?」モロボシ隊長が訊いた。

「じっとしていられなくてな。ダン、ここは任せて逃げろ。」

宇宙船に1号機が攻撃をかけた。ミサイルが降り注ぐ中、宇宙船の光線は止まった。2つに割れて破壊したと思った瞬間、中から怪獣が現れた。クロス星人はやはり地球を攻撃するために来ていたのだった。

1号機は怪獣をミサイル攻撃し始めた。怪獣は咆哮しながら光線で反撃した。1号機は旋回して避けながら、なおも攻撃を続行した。周囲が爆発で包まれたが、怪獣はひるまなかった。手足をばたつかせて、1号機を追っていた。

ゲンは隊員たちから離れると、誰にも見られていないことを確認してレオに変身した。

レオは怪獣に向かって行った。キックとパンチで打撃を与え、投げ飛ばそうと怪獣と組み合った。その背後で割れた宇宙船から、さらに小型の宇宙船が出てきて飛び立った。そしてレオの背後から光線を浴びせた。レオはダメージを受けて力が抜けてよろけると、怪獣に突き倒された。ダメージのためカラータイマーが点滅し始めた。小型宇宙船はさらに攻撃をかけようとしてレオに向かってきた。それを妨害しようと1号機が横から小型宇宙船にレーザー攻撃をかけた。小型宇宙船はひらりとレーザーを避けると、上空に向かって逃げていった。

「逃がすか!」フルハシ隊長が叫んだ。

レオは起き上がると怪獣に向かって行った。そして組み合うと勢いよく投げ飛ばした。怪獣は倒れたが、なんとか起き上がろうとしていた。その間にレオは素早く飛び上がると、上空からレオキックを見舞った。怪獣はさらにダメージを受けて起き上がれなくなった。最後にレオはエネルギーブレスレッドを光らせてエネルギー光球で怪獣を仕留めた。

1号機は小型宇宙船を追っていった。レーザーを発射して攻撃したが、小型宇宙船も後ろに光線を発射しながら飛んでいた。1号機はその光線を避けながらなおも追って行った。そしてよく狙ってレーザーを発射した。今度は小型宇宙船に当たって粉々になった。

「よし、やった!」フルハシ隊長は操縦桿を叩いて、喜んで叫んだ。

 

ステーションホークの前でフルハシ隊長との別れを惜しんでいた。

「フルハシ、元気でな。」キリヤマ参謀が言った。

「フルハシさん。助けられました。ありがとうございました。」モロボシ隊長は頭を下げて言った。フルハシ隊長は笑いながら手を横に振って、

「いや、どうってことないよ。時間があればもっと話がしたかったが、またの機会にしよう。」モロボシ隊長にそう言うと、横にいたゲンに近づいて、耳元に口を近づけて小声で言った。

「おまえさんの活躍を見せてもらったよ。がんばれよ。」

ゲンは驚いてモロボシ隊長の方を見た。モロボシ隊長はうなずいた。フルハシ隊長は何もかも知っているようだった。フルハシ隊長はステーションホークに乗り込み、笑顔で右手を大きく振って、

「じゃあ、みんな。しっかりやれよ。」隊員たちに声をかけた。

隊員たちが敬礼する中をステーションホークが宇宙に