新ウルトラマンレオ

別世界のウルトラマンレオの物語

第22話 異次元空間からの脱出

宇宙船をマックホーク1号と2号が追跡していた。宇宙船は後から近づくマックホークに気付いて光線を発射していた。1号機、2号機ともにそれを避けながら、さらに宇宙船に接近していた。

「もうすぐ追いつきます。レーザーをお見舞いしてやります。」1号機のアオシマ隊員が言った。

「よし。2号機、攻撃準備。」横のクロダチーフが2号機に通信した。

「了解。」2号機のアカイシ隊員が応答して、横にいるゲンもうなずいた。2機が宇宙船にレーザーを発射しようとした時、宇宙船は急に光線の攻撃をやめた。そして周囲に強い光を放った。

「なんだ、これは?」クロダチーフが思わず言った。周囲の空間がゆがみ、別空間の入り口がぽっかりと開いた。そこに宇宙船は入っていった。

「避け切れない!」アオシマ隊員が叫んだ。後の1号機、2号機ともその空間に吸い込まれていった。そしてその入り口は消えていった

 

1号機、2号機ともに消えました。」オペレーターのシラカワ隊員が振り返って言った。

「なに!やられたのか?」モロボシ隊長が言った。

「いいえ。その形跡はありません。急に姿を消しました。追跡していた宇宙船も同様です。」シラカワ隊員が言った。

「カジタ。1号機と2号機から送られてきたデータをすぐに解析してくれ。何らかの異常、兆候をとらえていないかどうか、特に次元のゆがみについて、だ。」モロボシ隊長は横にいるカジタ隊員に言った。

「次元ですか?」カジタ隊員が訊いた。

「そうだ。もしかすると次元がゆがめられて、その空間に引き込まれたのかもしれない。頼むぞ。」モロボシ隊長が言った。

 

1号機、2号機ともに不思議な空間の中をさまよっていた。なんとか飛んではいるが、スピードはゆっくりで漂っているようだった。薄暗く広がる空間が無限に広がり、大きな岩石が多数浮かんでいた。

「どうだ?」クロダチーフがアオシマ隊員に訊いた。

「なんとか操縦はできます。しかし出口がわかりません。レーダーなど主要機器は動きません。」アオシマ隊員が答えた。

2号機でもアカイシ隊員とゲンが悪戦苦闘していた。

「計器はすべて駄目です。方向もわかりません。」ゲンが言った。

「そのようだな。これが異次元空間というものか。」アカイシ隊員は1号機から離れないようになんとか操縦していた。

「とにかく、通信して呼びかけてみます。どれかのチャンネルで外と通信できるかもしれません。」ゲンは言った。

 

2号機からの通信をとらえました。しかしかなり弱いです。」シラカワ隊員がモロボシ隊長に言った。モロボシ隊長は急いで駆け寄って送信機を手に取ると、2号機に呼びかけた。

「こちらMAC基地。モロボシだ。そちらの状況はどうだ?」

2号機のゲンは、かすかに聞こえてきたモロボシ隊長の声に喜んだ。

「アカイシさん、隊長です。通信できそうです。」

「そうか、よくやった。通信を続けてくれ。」操縦に四苦八苦しているアカイシ隊員は言った。

「隊長、2号機のゲンです。不思議な空間に引き込まれました。計器は駄目です。何とか飛んでいる状態です。1号機もいます。」ゲンは通信した。

「よく聞くんだ、ゲン。多分そこは異次元空間だ。しかし通信できるということはどこかにまだこちらと通じている穴があるはずだ。そのまま通信機を切らずにそのままにしてくれ。こちらで解析して助けに行く。」モロボシ隊長は言った。その言葉はかすかで途切れがちであったが、何とか2号機に届けられて、ゲンたちは少し、不安を取り除くことができた。

 

「隊長、おっしゃった通り異次元空間だと思われます。なんとか飛べるようなので、もし出口まで誘導することができれば、脱出は可能と思われます。」カジタ隊員が報告した。

「それはできそうか?」モロボシ隊長が訊いた。

「出口はある可能性があるのでいいとして、その誘導をどうするかということが肝心です。異次元空間はレーダーなどが使えませんが、開発中の異次元捜索装置ならうまくいくかもしれません。それには4号機にその装置を積み込んで、異次元空間の中に入って1号機と2号機を探すことになります。しかし・・・」

カジタ隊員が言葉を濁らせた。

「どうした?」モロボシ隊長が訊いた。

「その装置は複雑で、しかも空間を常にチェックして飛ぶ必要があります。ただでさえ、異次元空間を操縦するのは困難なうえに、その装置を使って誘導できるのかどうか・・・。非常に難しいと思います。」

2人でやればどうだ?」

「いえ、駄目です。直接パイロットの頭に送信するシステムで、空間を頭の中で再構築して認識するシステムですから。」カジタ隊員が言った。

「空間認識か・・・」モロボシ隊長の目が光った。

「宇宙船が出現しました。多分異次元空間から出てきたものと思われます。」

「そうか。その位置を確認。4号機に異次元捜索装置を積み込んで発信準備をしてくれ。」モロボシ隊長が言った。

「わかりました。でも誰が?隊長が乗るのですか?」カジタ隊員が言った。

「いや、乗るのはシラカワ君だ。準備を頼む。」モロボシ隊長が言った。

「え、私が?」シラカワ隊員は驚いて言った。

「そうだ。君だ。君しかいない。」モロボシ隊長はシラカワ隊員を見て言った。

 

3号機発進。宇宙船の迎撃に行く。後は頼むぞ。」モロボシ隊長は3号機で発信していった。それを見ながらシラカワ隊員は4号機に乗り込んだ。

「使用法は伝えます。空間に入るまでこちらでサポートします。」司令室のカジタ隊員が4号機に乗ったシラカワ隊員に伝えた。

シラカワ隊員は4号機の座席に座り、ヘルメットを手に取った。そうすると過去の出来事が脳裏によみがえってきた。

 

シラカワ隊員は元々、優れたパイロットでMACにすぐに入隊した。しかし1回目の戦闘で撃墜され、かなりの重傷を負った。しかも右足を失ってしまった。義足を使って普通のことには不自由はなかったが、MACの激しい任務につけないことは、シラカワ隊員自身が一番わかっていた。失意のまま、メディカルセンターのベッドで過ごし、やがて退院となった。

シラカワ隊員は退職の意志を固め、MAC基地に私物を取りに行った。そして何気なく司令室をのぞいた。もう吹っ切れたと思っていたが、未練が残っていたのかもしれなかった。前の隊長が殉職し、隊員の多くを失っていたMACは休止状態であったが、中には作業員姿の男が数人、機器を調整していた。その中の一人がシラカワ隊員に声をかけた。

「あなたは?」

「シラカワです。ここの隊員でしたが、やめることになりました。」シラカワ隊員が答えた。それを聞いてその男の目が光った。

「そうですか。でも最後に手伝ってくれませんか。空間レーダーや通信装置の調整をしていて。」その男は言った。

「ええ、いいですよ。」シラカワ隊員は言った。機器の調整はあまりしたことはなかったが、空間認識能力はずば抜けたものがあり、通信機器の扱いも慣れていたため、すぐに作業は終わった。

「あなたはこれほどの技術があるのにここをやめるとは。」男が言った。

「元々パイロットでしたが撃墜されて右足を失いました。ここでできることはなくなりました。」シラカワ隊員が言った。

「いや、あなたにはまだできることがある。MACはあなたを必要としている。」男は言った。

「私に何ができるというのですか?」シラカワ隊員が訊いた。

パイロットの経歴と通信機器などの扱い、空間を認識する能力など、このMACのオペレーターとして申し分ない。あなたなら優秀な隊員として活躍できるはずだ。ぜひともここで働いてほしい。」男は言った。今の自分を認めてくれるうれしさはあったが、作業員があまりに大きなことを言うので、シラカワ隊員はいぶかしがって強い口調で尋ねた。

「からかわないでください。そんなことを言って・・・。一体、あなたは誰なのです?」

作業員姿の男は帽子をとって、微笑みながら言った。

「新隊長のモロボシだ。よろしく頼む。」そして右手を差し出した。シラカワ隊員は驚いて気が動転していたが、こみ上げるうれしさに押されてゆっくりと右手で握手した。

 

4号機が異次元空間に入っていった。空間捜索装置のおかげで現在位置は把握することはできたが、操縦は困難を極めた。それでも通信機からの電波に向かって1号機と2号機の捜索に向かった。

 

一方、宇宙船を撃墜するため、モロボシ隊長の乗ったマックホーク3号が出撃していた。宇宙船は逃げ回っていたが、3号機のレーザー攻撃を受けた。そして地上に落ちていった。

「やったか!」モロボシ隊長は叫んだが、宇宙船の墜落した場所から怪獣が現れた。

「怪獣か。1号機と2号機が来るまで持たせなければ。」モロボシ隊長はそう言うと、レーザー攻撃を開始した。

 

1号機、2号機、聞こえますか?4号機のシラカワです。救援に来ました。」

通信を受けて、クロダチーフが驚いて応答した。

「シラカワ君か?本当に?」

「ええ、そうです。誘導しますのでついてきてください。」シラカワ隊員は通信した。4号機に続いて、1号機、2号機が出口に向かって進んでいった。シラカワ隊員は装置からの微細な信号を受けながら、慎重に4号機を操縦していた。緊張のあまり、額には汗を下らせていた。そしてやっと出口にたどり着くと、3機のマックホークは空中に姿を現した。

「やった。」2号機のアカイシ隊員が叫んだ。横のゲンも飛び上がって喜んだ。

「ようし、仕返しだ。怪獣を倒しに行くぞ。」1号機のクロダチーフが言った。

「了解、全速力で向かいます。」アオシマ隊員が勢いよく言った。1号機と2号機は全速力で飛んで行った。

 

怪獣は3号機のレーザー攻撃を苦にしなかった。光線を放って追い払っていた。そこへ1号機と2号機が到着した。

「隊長、ご心配おかけしました。脱出できました。怪獣を攻撃します。」クロダチーフが通信した。

「よし、全機、攻撃!」モロボシ隊長が命令した。1号機、2号機からミサイルが怪獣に放たれた。その周囲に爆発が次々に起こり、怪獣は苦しそうに咆哮した。

「よし、もう一度だ。」アオシマ隊員が言った。その時、怪獣が周囲に光を発した。それは宇宙船が異次元空間の入り口を作ったときの光に似ていた。怪獣周囲の空間はゆがみ、3機のマックホークの動きが急に鈍くなった。

「い、いかん。」モロボシ隊長が叫んだ。怪獣は光線でマックホークにダメージを与えた。そして空間のゆがみは収まり、マックホークは操縦不能になり、3機とも落ちていった。中の隊員たちは急いでパラシュートで脱出していった。そこへなおも怪獣は光線を放とうとしていた。

「あ、危ない。」ゲンは叫ぶと、空中でレオに変身した。

レオは空中から怪獣にキックした。怪獣はどおっと倒れた。そこへレオは怪獣をチョップで打撃を加えた。怪獣は手足をばたつかせていたが、またあの光を周囲にはなった。すると空間がゆがんで、レオの動きもゆっくりになった。そこを怪獣は体当たりしてレオを倒した。そして馬なりになってレオを殴り始めた。ダメージのためカラータイマーが点滅し始めた。

そこへシラカワ隊員の乗る4号機が到着した。レオのピンチを見て、上空からレーザーで攻撃した。怪獣は咆哮して4号機に光線を放った。4号機はそれを避けて、なおもレーザー攻撃を続けた。怪獣は怒って、再びあの光を放った。再び周囲の空間がゆがんでいった。

しかしシラカワ隊員は冷静だった。異次元空間捜索装置からの信号でゆがんだ空間を避けて飛んで行くと、今度は怪獣の背後からギリギリまで接近してレーザーを放った。怪獣は思いもよらなかった攻撃に驚いて、レオから離れて前に倒れた。自由になったレオはエネルギーソードを出した。そして怪獣に向かって行って、すれ違いざま、斬りつけた。怪獣は真っ二つに斬られて倒れると、そのまま動かなくなった。

 

司令室にモロボシ隊長をはじめ隊員たちが帰ってきた。オペレーター席のカジタ隊員は振り返って、

「みなさん、ご苦労様。」と声をかけた。そして後ろにいたシラカワ隊員に気付いて、

「シラカワさん。素晴らしい活躍でした。これなら僕の代わりに出撃してくれた方がいいですね。僕はここでもいいですから。」と笑いながら言った。シラカワ隊員はカジタ隊員の腕をとってオペレーター席から立たせると、自らが座った。

「やはり、私はここが落ち着きます。これからも皆さんをサポートしますので、よろしくお願いします。」と笑顔で言った。