新ウルトラマンレオ

別世界のウルトラマンレオの物語

第28話 2つの星

宇宙船がふらふらしながら地球に接近していた。故障らしく飛行が安定しないようだった。ステーションホークが接近して呼びかけた。

「こちら地球防衛軍。地球に接近している。直ちに止まれ。」

「こちらイーブル星の宇宙船。故障のためパワーが出ない。地球の引力に引っ張られている。不時着を希望する。」

「わかった。誘導する。」

宇宙船は何とか人気のない林の中に着陸した。上空にはマックホーク1号が旋回して見守っていた。地上ではモロボシ隊長とアカイシ隊員とゲンが宇宙船に近づいていた。宇宙船の扉がゆっくり開いて階段が伸びてきた。モロボシ隊長とゲンが緊張しながら見守っていた。警戒のためにマックガンを構えていた。やがて中から2人の緑色をした男女の異星人が降りてきた。不安そうに辺りを見回していた。

 

異星人はモロボシ隊長とゲンの警戒している様子を見て言った。

「僕たちはイーブル星人です。地球に危害を及ぼす気はありません。宇宙船が不調のためにここに来てしまいました。」

おとなしい異星人の様子にやや安心して、2人はマックガンをしまった。

MAC隊長のモロボシです。こっちはアカイシとオオトリです。」

「僕はロット、こっちは妻にイリオです。ここでしばらく宇宙線の修理をさせてください。修理ができたら出て行きます。」

「わかりました。でも詳しい話を聞きたいので、ひとまずMAC基地にお越しください。修理について何か手伝えるかもしれません。」モロボシ隊長は言うと、2人の異星人はうなずいた。

 

それからすぐに別の宇宙船が地球に接近してきた。地球に向けて通信を送ってきた。

「こちらイーブル星の宇宙船。こちらの宇宙船が地球に不時着したとの知らせがあった。直ちに乗員の身柄を引き渡していただきたい。」

しかし同時にもう1隻の宇宙船も現れて、通信してきた。

「こちらナガース星の宇宙船です。イーブル星からと偽って地球に着陸した宇宙船があるはずです。即刻、乗員を引き渡していただきたい。」

地球防衛軍は、2隻の宇宙船に

「乗員は無事であり、宇宙船が修理でき次第、出発させる。」と返答したが、すぐに乗員を引き渡せに一点張りで、断るなら実力行使も辞さない構えだった。

地球防衛軍では2隻の宇宙船のあまりに強硬な態度に困惑して、対応に苦慮していた。一つ間違うと地球が紛争の危機に見舞われる可能性があった。とりあえず2隻の宇宙船を使われなくなったステーション衛星に停泊させた。

キリヤマ参謀とMACの隊員、ドクターユリが2人の異星人を作戦室に呼び出して事情を尋ねた。なかなか答えようとしなかったが、問い詰めるとやっと口を開いた。

「実は僕たちは駆け落ちしてきたんです。逃げてきたんです。」ロットが言った。

「そんなことでこんな大げさなことになるのかね。」キリヤマ参謀が言った。

「宇宙船がものすごい剣幕で怒鳴り込んできたんですよ。それも2隻。別々で。ただの駆け落ちでここまでするかな。」アオシマ隊員が言った。

これ以上隠し切れないと思ってイリオは言った。

「実は私はイーブル星の第3王女です。だから追ってきたのでしょう。」

「じゃあ、ナガース星は?」キリヤマ参謀が聞いた。

「僕はナガース星の第2王子です。僕の星の者も探しに来たのでしょう。」ロットが答えた。

「それだけではないだろう。すべて話したまえ。」

「ナガース星とイーブル星は昔から仲が悪いのです。でもこの2つの星は兄弟星で、そこに住む人も元々同じ人種でした。」ロットはハンカチのようなものを取り出して顔を拭いた。

その顔は元の緑色よりすこし薄い色だった。

「私はイーブル星に興味があったので、肌の色を操作して潜り込みました。イーブル星ではナガース星人は非常な差別を受けるからです。肌の色が違うからです。」

キリヤマ参謀や隊員たちにはその色の違いははっきり判らなかった。

「そこでイリオと出会った。彼女はナガース星人の僕を受け入れてくれた。しかし周囲は決して許さないだろう。だから2人で逃げてきたんだ。」

「事情は分かった。しかし、こうなった以上簡単には行かない。とりあえず宇宙船の修理を急ぎたまえ。何とか考える。」キリヤマ参謀が言った。

異星人たちが出て行ったあと、ドクターユリがつぶやいた。

「ロマンチックな話ね。ロミオとジュリエットだわ。」

「アンヌ、そう簡単な問題じゃないんだ。星と星との問題がかかっている。」モロボシ隊長が言った。

「いいえ、2人にとっては死ぬほど重要なことなのよ。星と星の関係を乗り越えてなのよ。」

それを聞いてモロボシ隊長は腕を組んで考え込んでいた。

 

ロットとイリオは宇宙船に戻って修理を続けた。ゲンも作業を手伝った。宇宙船の修理はもうすぐ終わりそうだった。

「宇宙船が治ったらどうするんですか?」ゲンが訊いた。

「すぐに宇宙に行く。イーブル星やナガース星も関係のないところに行く。」ロットが言った。

「それではいつまでも逃げ回らなくちゃいけない。お二人にはみんなに祝福されて結婚してほしいのです。両星の代表と話し合ったらどうですか?」ゲンは言った。

「無駄よ。お互いに憎しみあっているから。」イリオが言うとロットもうなずいた。

 

ステーション衛星にキリヤマ参謀とモロボシ隊長が向かった。両者と話し合って何とか平和的に解決するためだった。ステーションの衛星の会議室で、2つの星の代表者の会談が行われることになった。キリヤマ参謀はなんとか調停したいと考えていたが、不安の方が多かった。唯一の助けはモロボシ隊長が随行してくれたことだった。

ステーション衛星の会議室にイーブル星の代表とナガース星の代表が入ってきた。お互い相手をにらんで険悪な雰囲気だった。思った通り、会談は最初から非難の応酬で、互いに罵り合っていた。キリヤマ参謀は何とかなだめようとしていた。

「どうしてそんなにいがみ合うのです。隣同士の星で、しかもそれぞれのルーツは同じじゃないのですか。いわば兄弟なのですよ。」キリヤマ参謀が間に入って言った。

「いや、この星の連中と同じにされては困る。こんな野蛮な奴らと。」ナガースの代表が言った。

「それはこっちも同じだ。なにせナガース星の奴らは我々を支配して虐げてきたのだ。」イーブル星の代表が言った。

「それは100年以上前の話だ。それは解決したはずだ。それなのにいつもそれを持ち出して、いや何かにつけて我々を非難してきた。肌の緑色が少し濃いだけで。」ナガース星の代表は声を大きくしていった。

「何を!まだ十分な謝罪や償いをしていないくせに!」

「十分なことをしてもお前たちは非難する。我々はお前たちを信用できない。」

もはや収拾がつかなかった。戦争だ、という声も上がってきた。その時、

「ちょっと待ってください!あなたたちはそれでいいんですか!」後ろから強く鋭い声が響いた。付き添っていたモロボシ隊長だった。両星の代表の自分勝手な言い分に我慢ができなくなっていた。両星の代表をにらみながら立ち上がった。

「ダン、やめろ。」キリヤマ参謀が止めた。

「いいえ。参謀。すみません。これだけは言わせてください。」モロボシ隊長は前に出て行った。その目は真剣で鋭かった。

「無礼な。下がれ。」両者の代表がテーブルを叩いて叫んだ。モロボシ隊長はそれにひるまなかった。

「あなたたちはお互いに非難してばかりしているが、それでどうなるというのですか。2つの星が憎みあっているというのに、王子と王女はお互いを信頼して、そして愛しあってここまで来たのです。なぜあなたたちにそれができないというのですか。過去に何かあったかもしれません。でもお互いを許し、信頼し、未来に向けて仲良くすることをなぜしないのですか!」モロボシ隊長が訴えた。

「これは我々の問題だ。」ナガース星の代表がにらみつけて大声で言った。

「そうだ。お前のような野蛮な地球人が出る幕ではない。」イーブル星の代表は叫んだ。

「私をよく見てください。私だから言うのです!」モロボシ隊長は顔を上げて言った。

両星の代表は不思議そうにモロボシ隊長を見た。そして驚いて口々につぶやいた。

「ウ、ウルトラセブン。」

「そうです。私はウルトラセブンです。私は宇宙の平和と正義のために戦ってきた。しかしあなたたちには平和はない、正義はない。あなたたちのつまらない争いのために若い2人が引き離されることは決して許されない。」モロボシ隊長は両星の代表に訴えた。両星の代表は何も言えなかった。

後ろに控えていたイーブル星の副代表はそれを忌々しく思っていた。

(セブンめ。余計なことをしよって。2つの星の争いが起こる方が何かと都合がいいのだ。これで我々の仲間はこれで得をしているからな。)

会談が次第にまとまる方に動いていた。

(こうなったら王女も王子も消してしまおう。そうすればまた争いが続く。王子たちの場所は発信機でわかるからな。)と考えると、ひそかに通信した。

 

宇宙船の近くで大きな音がした。そして何か大きなものが近づいてくるようだった。そして遠くにその一部が見えた。ロットとイリオの顔色が恐怖に変わった。

「ガブトよ。イーブル星やナガース星にいる凶暴な怪獣よ。どうしてここに。」

「とにかく逃げよう。でも宇宙船が動くまで時間がかかる。」ロットが言った。

「僕が食い止めます。」ゲンが言った。

「あなたが?どうやって?」イリオが言った。

「地球人では無理だ。非常に凶暴な怪獣なんだ。いっしょにどこかに隠れよう。」ロットが言った。

「お二人は安全なところに隠れてください。でも怪獣が来たらそれでも危ない。僕が戦います。」ゲンは言った。ロットとイリオは、無茶だ、という顔をしていた。

「秘密にしていますが僕は獅子座L77星人です。僕の星は凶悪な星人や怪獣に破壊され、みんなバラバラになってしまった。僕はここにたどり着いて地球人として生きています。でもあなたたちには自分の星がある。仲間も大勢いる。お二人にはそこで幸せになってほしいのです。2つの星にはそれを望んでいる人も大勢いるはずだ。困難から逃げていちゃいけない。」と言って振り向くと、レオに変身した。ロットとイリオは驚いて、お互いに身を寄せて上を見上げていた。

レオは怪獣に向かって行った。組み合ってなんとかその場から引き離そうとしていた。

それを巡回に出ていたマックホーク1号が発見した。すぐに会談に出席しているモロボシ隊長に報告した。

「こちらマックホーク1号、アオシマ。怪獣出現。赤い巨人と戦っています。位置は宇宙船の近くです。」

アオシマ、映像をこちらに送れ。怪獣を映すんだ。」

 

会談場で、代表の前に立っているモロボシ隊長がモニターを指示した。

「みなさん。これを見てください。」1号機からの映像をモニターに映した。

「これはガブト。どうして。」両星の代表が立ち上がって叫んだ。信じられないという風だった。怪獣は牙をむいてレオに襲い掛かっていた。

「だれかが王子や王女の殺害を企てたのかもしれません。あなたたちの中に両星が仲良くするのを快く思っていない人がいるのです。たぶんそれに乗せられて2つの星は長い間、争いを続けてきたのでしょう。目を覚ましてください。あなたたちの争いはまるであの凶暴な怪獣だ。あれが今のあなたたちの姿なのです。」モロボシ隊長は訴えた。

 

レオは暴れる怪獣を抑えつけた。しかし力が強く吹っ飛ばされた。そして体当たりを食らわせてきた。さらに飛ばされて倒れた。ダメージのためカラータイマーが点滅し始めた。レオは起き上がると今度はパンチとキックを怪獣に放った。怪獣は後ろによろけた。そこを飛び上がってレオキックを放った。怪獣は倒れた。レオはエネルギーブレスレッドを光らせてエネルギー光球を放って怪獣に止めを刺した。

 

会談はなんとかまとまった。王子と王女をこれ以上追わないということだった。両星の代表は帰っていった。

キリヤマ参謀が後ろから近づき、モロボシ隊長の肩を叩いた。振り返ったモロボシ隊長が言った。

「参謀。すみません。どうしても言わなければならないと思ったものですから。」

「いや、ダン。ご苦労だった。君が言ってくれなければどうにもならなかった。君のおかげだ。」

「いいえ。まだまだです。あの2つの星の憎しみは深い。」

「いや、あの王子と王女が必ずや、将来2つの星が仲良くするように導いてくれるはずだ。私はそう信じている。」キリヤマ参謀は言った。

 

宇宙船ではロットとイリオが出発の準備をしていた。

「もう行くのかい。会談はまとまって、もう誰も邪魔はしないというのに。」ゲンが言った。

「いや、思い直したんだ。僕たちには自分の星があり、仲間もいるんだ。逃げてちゃいけないって。君の言葉が胸に刺さったよ。僕たちはそれぞれの星に戻る。そして2つの星の人々が仲良くするように訴えていくんだ。そして晴れて結婚するんだ。」ロットは言った。イリオもうなずいて言った。

「必ず、2つの星の人たちに私たちの結婚を祝福してもらいます。私たちが2つの星の懸け橋になります。」

2人ともにっこり笑って宇宙船に乗っていった。

やがて宇宙船は浮かび上がって飛んで行った。

「おーい。2人とも負けるなよ。がんばれよ。

ゲンは手を振って見送っていた。